エイリアン・プレデター
<ALIEN PREDATOR>
86年 アメリカ映画 94分

監督・脚本・製作:デラン・サラフィアン
出演:デニス・クリストファー(デイモン)
   マーティン・ヒューイット(マイケル)
   リン=ホリー・ジョンソン(サマンサ)
   ルイス・プレンデス(トレーサー博士)
   J・O・ボォッソ(ウェルズ)

(あらすじ)
キャンピングカーで旅行を楽しんでいる若者3人組、デイモンとマイケル、サマンサは、スペインのドゥアルテという町にたどり着いた。だが、町には異様なまでに人の姿がなく、たまに見かけても、態度がどこかおかしいのだ。
実は、この町の住民は全員、人間を狂わせてしまう寄生生物に冒されているのだ。この謎の生物がこの地に発生した原因は、NASAが打ち上げた人工衛星がこの付近に墜落した事だった。こいつは宇宙から来た生物なのだ!
この事を、現地に調査に訪れたNASAの細菌学者、トレーサーから聞いた3人は、力を合わせてこの窮地を乗り切ろうと誓うのだった。

(感想)
もう、タイトルからしてダメダメな雰囲気が伝わってくる映画ですが、意外や意外。なかなかに見せてくれる映画でした。そもそも、一見、『エイリアン』と『プレデター』を混ぜ合わせただけという捻りの無いタイトルですが、製作が86年なんですよね。なんと、『プレデター』より早いんです(ちなみに、原題も『ALIEN PREDATOR』です)。

スペインの田舎町を舞台に、宇宙人の侵略に巻き込まれた若者達の恐怖を描くSFホラー映画ですが、まず、敵となるエイリアンは、姿を堂々と見せてモンスターのように襲ってくる、という事はしません。そもそも、このエイリアンはおよそ知能と呼べるようなものはなく、ただ人間に寄生し、頭をおかしくさせて出て行くという、仕事的にはウイルスと変わらないような連中なんです。
そして、この事件に巻き込まれる男二人と女一人の3人の若者達。男二人、デイモンとマイケルは昔からの親友同士で、車で旅行をしている最中でした。女のサマンサは、数日前にヒッチハイクをしているところを拾って同行する事となりました。そして現在、デイモンとマイケルは、密かにサマンサに惚れ合っている、という、ちょっとした三角関係となっています。
そこに、現地に一人潜入しているNASAの学者と出会い、今、この町に大変な事が起こっていると聞かされるわけです。
このストーリー自体は、かなり「若者向け」な匂いプンプンという代物で、まるで、中学生向けのSF小説を映画化したような雰囲気です。主人公達が青春を謳歌しつつも、国家がらみの凄い事件に巻き込まれるというストーリーは、ティーンエイジャー的には、まさに心躍る冒険物語じゃないですか。
この映画の監督・脚本・製作を兼ねるデラン・サラフィアンも中々いい仕事をする人のようで、この単純で他愛ない、いかにもティーン向けなドラマに、「最後まで面白く見せ切る説得力」を与えていましたね。
ちょっと間違えると、相当くだらない話になったと思うんですが、「爽やかな三角関係ドラマ」「時折出てくるグロシーン」「ツボをついた恐怖演出」などを駆使して頑張っていました。
もちろん、くだらないと言えばくだらない映画ではあります。でも、このB級感覚がまたいいんですよね。「くだらないんだけど、面白い」みたいな。
多少おかしなストーリー展開を見せる所が出て来ても、「この映画を見に来てくれたティーンを喜ばせる事に全力を注いでいる」、というのが見てて感じられるんで、突っ込んだり、批判したりという気が起こらないんですよね。
終盤、何か気づいたらカーチェイスとかが始まってるんですけど、この時に背景に流れる、いかにも80年代的なBGMといい、「あいつはドライビングテクニックはハリウッド一の腕を持ってるんだ!」と場を盛り上げる友人とか、何か全部いい感じなんですよね。もし自分がアメリカのティーンエイジャーだとして、仲間達とこんな映画を劇場で見てたとしたら、きっと盛り上がるだろうと思いますよ。もちろん、仲間達の知能レベルが私と同程度に低いという前提での話です。

そんな映画ですが、ラストは意外に衝撃的です。クライマックスの危機を乗り切り、「助かった!」と思っていたら、またエイリアンに襲撃されるという、まあよくある手法ですね。ですが、ここもやっぱり乗り切り、しかも時にユーモア的なシーンも盛り込んだりしながらのラスト突入なので、「もうこのままハッピーエンドに行くだろう」と安心していたら・・・。最後にもう一捻りあって、そのまま終わりになるんですよね。これは私も意表を付かれましたね。ラストのエイリアンの襲撃シーンで、車のフロントガラスにへばり付いてきたエイリアンを、「ワイパーを動かして落とし、ひき殺す」という技で撃退したのを見た時は、絶対このままハッピーエンドで終わると思ったんですが。