監督・脚本・製作:ジェフリー・マクマイケル・ブルックシュア
出演:ゲーリー・ダグラス・ノース(クリストファー・ギデオン牧師)
リンジー・モリス(メアリー)
ネット・ウィッティ(スタンリー)
マイケル・ロバート・ニューマン(ジェレマイア)
ポール・ディオン・モンテ(ニック)
ウィル・ハリス(グリン)
家でジェレマイアを待つ二人だが、ふと気付くと、外にゾンビが溢れかえっていた。
その後、逃げてきた人々を中に入れたり、中に入った人がゾンビ化したりといった事があり、ついにクリストファーは、かつて暗殺者をやっていた時の殺人マシーン魂に火がつき、“二挺拳銃+ポージング”という、やや時代遅れの感のある動きでゾンビの群れに突撃し出すのだった。
(感想)
本来なら『なんたら・オブ・ザ・デッド』という、ありきたりな邦題がつけられててもおかしくない、自主制作臭のするC級ゾンビ映画です。ですが、実際に採用されたタイトルは『ゾンビVSスナイパー』なんていう、実に素敵なものでした。この、ビデオ会社の「消費者(と言うか、好き物共)を釣る、邦題の付け方」の巧みさには参りますな。こんなタイトルつけられたら、こちらとしては借りないわけにはいかないじゃないですか。例え、「きっとつまらないに違いない」という予感があったり、「こんなタイトルだけど、スナイパーなんて出てこないんだろうな(何しろ、パッケージにドンと出ている主役と思われる男が手にしてるのが、ライフルではなく、拳銃ですからね)」という予想をしていてもです。
といった、悲喜交々な感情が渦巻く中レンタルしてみたわけですが、思っていたよりは面白い映画でした。と言うか、この手の「ギリギリ商業レベル」な映画群の中ではかなりいい方なんじゃないんでしょうか。
ストーリーも、各キャラ設定もそこそこしっかりしていましたし、常にザラついている映像の雰囲気や、かける曲のセンスとか、結構いいんですよね。
中でも、主人公の設定が面白かったです。現在は牧師をしていて、静かで物腰の柔らかい感じの好人物なんですけど、実は、数年前まで暗殺者(スナイパーというわけではない)をしていたという、殺しのプロだったという奴なんです。
この設定からして素敵ですけど、演じてる人がまたクールなんですよね。細身でスラっとした長身で、いい具合にヒゲが生えている、イカした青年といった風貌で、見てて「カッコいい」と思えるような雰囲気があるんです。
前半の混乱した家での状況の中、一人で冷静にみんなをまとめあげていく姿には、落ち着いた大人の男を感じさせてくれましたね。そして一転、後半では殺人マシーンだった頃の自分に戻り、ゾンビ達をバンバン撃ち殺していくという、頼れるマッチョガイな雰囲気を出してきました。
生憎、アクションの動きにはそれほどキレが見られず、設定ほど強い男には見えなかったという難点もあったものの、やっぱり、表情も含めて、“クールっぽさ”を全体的にしっかりと出してきているんで、映画の面白さを削ぐほどの粗には見えませんでしたからね。
主役が立ってるんで、ややありきたりな感のあるゾンビ・サバイバルのストーリーも楽しく見られましたし、最終的に、ゾンビの発生原因が政府の陰謀という方向に着地するストーリー展開も面白かったです。
ただ。そういった“良かった点”を全て帳消しにしてしまうぐらい厄介な点もあるんですよねぇ。それは、ヒロインが死ぬほどムカつく奴だという点ですよ。もう、登場した時点から、常に誰かに対して怒ってるみたいな奴でして。態度もやたらデカいですし。「お前は一体、ナニサマなんだよ」と、見てて心底ゲンナリしましたね。
「他の誰が死のうが、自分さえ助かればいい」という考えを持っていらっしゃるんですが、普通なら、こういう思想のキャラは途中で死ぬじゃないですか。なので、こいつも一刻も早く死んで欲しかったんですが、残念ながら、コイツはヒロインという立場にいるんで、最後まで生き残るわけですよ。勿論、無傷で。くそったれめ。
主要登場人物の一人を、ここまでひねくれたイヤな人間に設定する必要があるのかとか思ってしまいましたよ。一応、後半で、そういうヒネた性格になった理由が語られるんですけど、その語るシーンでも、こっちはそんな話興味無いのに「いいから聞け!」みたいな事言って強引に語ってくるんですよねぇ。勘弁してくれ。
コイツさえいなければ(もしくは、普通の性格設定なら)、この『ゾンビVSスナイパー』なんていうフザけたタイトルの映画を堂々と「面白い映画だった!」と言い切る事にもためらいはないぐらいなんですけどね。残念です。