暗黒ベビィ ビクチム
<BLOOD GNOME>
04年 アメリカ映画(ビデオ用) 88分

監督・製作・脚本:ジョン・リチャゴ
出演:ビンセント・ビランシオ(ダニエル)
   メリッサ・パースリー(ディビニティ)
   リー・ウァルトン(エランドラ)
   スコット・エヴァンジェリスタ(テッド)
   チャールズ・モスビー(スターリング刑事)

(あらすじ)
SMプレイ中の男女が惨殺される、連続殺人事件が発生した。CSIで現場写真を撮るカメラマンとして勤務しているダニエルは、偶然、赤外線ビデオカメラに映った怪物の姿を目撃する。だが、ダニエルは最近まで精神病院に入らされていたのだ。なので、下手な事を言うと大変な結果になる為、証拠の写真を撮るまで黙っている事にした。ちなみに、ビデオカメラは壊れていて録画出来ないうえに、修理に2週間掛かってしまうのだ!

唯一存在に気付いているダニエルを何とかしようと、姿の見えない謎の怪物ビクチム達がダニエルの自宅までやってくるようになるが、ダニエルは上手いことやって、襲撃してくるビクチム達をビデオに撮る事に成功するのだった。

一方、被害者がSMの愛好者である事から、最初の犠牲者の友人であった同業者の女性、ディビニティにこの世界について教わってみる事にしたダニエル。そして次第に2人は惹かれ合っていくのだった。
だが、そんなディビニティをビクチム達にさらわれてしまった。ビクチム達が映っているビデオテープと交換する為の人質にとられてしまったのだ!

(感想)
まず、「ビクチム」というのはビデオ会社が勝手に作り出した怪物の名前です。実際の怪物の名前は「ブラッド・ノーム」とか何とか言うらしいですね。
でも、どちらかと言うと“ビクチム”の方がより胡散臭くて、この手の映画の怪物の名前っぽい気がします。

この映画のストーリーの基本形は、主人公のカメラマンが連続殺人事件を調べる、というミステリータッチなものです。ですが、犯人は姿の見えない怪物であったり、犠牲者がSMの愛好者だったり(それも、お互いに傷を付け合うという、「ブラッド・スポーツ」と呼ばれる過激なジャンルです)と言った、品の無い要素が絡み合う事で、なんとも愉快で低俗なD級ホラーとなっていました。
ちなみに、何でカメラマンが事件を調べているのかと言うと、ただのカメラマンではなく、「CSI」のメンバーだからです。きっと、監督・脚本のジョン・リチャゴがテレビシリーズ『CSI:科学捜査班』のファンなんでしょうね。で、この主人公のダニエルという男は、現場写真の担当で、かつてはコイツの腕のおかげで数々の証拠を発見していたというやり手カメラマンなんです。
ですが、過去のある事件のせいでショックを受け、しばらく精神病院に入院するハメとなってしまい、今回が復帰後初の事件だという背景があります。
ですが、そんな複雑な背景のあるキャラクターとは到底思えないような、常に変なニヤけかたをしている気味の悪い、ナヨナヨした男です。見ていて、「こんなのが主役なんてイヤだ」と思わせるような奴です(笑)。ちなみに、何故か吹き替え版では声を宮本充があててたりします。よく洋画の吹き替えに起用される人ですが、こんな映画の吹き替えもやるんですね。
で、ダニエルはSM愛好者である女性ディビニティと知り合いになり、事件解決の為、この世界の事についてもっとよく知るためにレクチャーを受ける事となります。すると、ストーリーの都合上、この二人が次第にお互いに好意を持つようになっていくわけです。ディビニティの方は、顔も割りと私の好みのタイプだったり、態度もエラそうじゃなかったりとかなり好印象なんですが、そんな人がニヤけたナヨ男に好意を持つ所には少々理解に苦しみましたね。
ですが、クライマックスでは、つれ去られて裸で縛り付けられてるディビニティを助ける為に、ビクチムを飼い馴らしている悪の元凶であるSM女とダニエルが死闘を演じる事となります。このSM女、つい先ほど圧倒的パワーで黒人刑事を肉弾戦で倒したりと、戦闘力はかなりのものがあるんですが、どう見ても強そうじゃないダニエルがコイツをやっつけてしまいます。もちろん、ビクチム達も襲って来ますが、ダニエルは負けません。
そして、裸の美女を悪い奴から救出してエンディングへ。これを見て「ああなるほど、そういう映画か」と納得しましたね。これぞまさに「うだつの上がらない奴らの夢の映像化」みたいなものじゃないですか。まさにダメ男専用ファンタジー。それが『暗黒ベビィ ビクチム』だったのです!ブラボー!
もはや、ダニエルを演じてるのが監督・製作・脚本を兼ねているジョン・リチャゴじゃないのが不思議なぐらいです。ここまで来たら自ら演じて欲しかったですね。

と言う訳で、実にいい映画でした(ええっ!?・笑)。

ちなみに、DVDのジャケットは、ビクチムが女性の腹を破って登場してるという凄惨なものですが、映画本編は超低予算なので、こんなグロシーンは出て来ません。
どうも、特殊効果に使う予算はビクチム人形の制作で使い切ってしまったらしく、ショックシーンはほぼ全て血糊だけで乗り切ってました(あと、たまに安っぽい人体パーツを使ったり)。
ですが、その血糊や人体パーツを割と上手く使っていて、「貧乏臭い」いう感じはあまり無かったですね。さらに、定期的にオッパイとかが出て来たりするので、「見世物映画」として最後まで飽きずに見ていられる程度の楽しさはありました。