<BURNT OFFERINGS>
76年 アメリカ映画 116分

監督・製作・脚本:ダン・カーティス
出演:オリバー・リード(ベン・ロルフ)
   カレン・ブラック(マリアン)
   リー・H・モンゴメリー(デーヴィッド)
   ベッテ・デイビス(エリザベス)
   エイレーン・ヘッカート(ロズ・アラダイス)
   バーゲス・メレディス(アーノルド)
   ダブ・タイラー(下男ウォーカー)

(あらすじ)
ロルフ一家は、夏の間を過ごすのに、とある豪邸をレンタルした。家の持ち主のロズ・アラダイスが格安で貸してくれるからだった。
ただ、借りるには条件が二つあった。一つは、家の手入れをする事。もう一つは、部屋に閉じこもっているロズの母親、ミセス・アラダイスに、毎日食料をドアの前に置いておく事だった。

家族の前に全く姿を見せないミセス・アラダイスだが、世話を買って出た妻のマリアンは時々会っているようだった。だが、他の家族が会おうとすると「寝ている」とか「疲れている」などと言って会わせてくれないのだった。

一方、この屋敷で過ごすうちに、一家は奇怪な現象に遭遇する事となる。物理的な現象は、閉めていたはずの窓が開いてたりとか、鍵をかけてないはずのドアが開かなかったりといった程度だが、心理面に何か影響がきているらしく、性格が悪くなり、口論をし合ったりするようになるのだった。

ある日、ついに祖母が怪死。そして、その葬式の後、家の一部が自動的に改築され、新しく生まれ変わり始めるのだった。ベンは息子を連れて急いで逃げ出そうとするが、倒れて来た木に道を塞がれてしまうのだった。もはや逃げることも叶わなくなったロルフ一家の運命はいかに!?

(感想)
引っ越した家で怪現象が起こる“家もの”の映画ですが、タイトルがそのものズバリ『家』というのがまた潔いですね。
ちなみに、この舞台となる家は、主人公一家が引っ越して来た家ではなく、夏の間だけ住むのに、借りているだけの家です。所有の別荘ではなく、レンタルの別荘でひと夏を過ごすというのは、向こうでは珍しい事ではないんですかね。少なくとも、私はこの映画で初めて見た気がします。

さて。まず、前半一時間近くを使って、普通の家族の描写をしてきます。これで、この一家がいかに仲がいいのか、という事が分かるんですが、怪現象らしいものが何も起こらないので、正直、見ていて退屈な前半戦でした(笑)。
ですが、中盤辺りから一家がそれぞれおかしな言動をするようになります。まずイカれたのは父親のベンで、息子とプールで遊んでいた際、突如狂いだして、息子を溺れさせようとするんです。
ただ、ベンはこの事件で猛烈に反省をしたせいか、これ以降は常軌を逸した行動をとらなくなります。
ですが、変わりに、母親のマリアンが、完全に家に取り憑かれる、という状態になってしまいます。と言うか、この人は当初からこの家に妙な愛着を持っていたようなんですよね。下見をしに来た際、ベンの方は「気味が悪い」と渋っていたんですが、マリアンの一押しで借りる事となった、という経緯もありました。

この映画で起こる怪現象の類いは、ほとんどが精神面を操るような感じのもので、ポルターガイスト現象的なものは、せいぜい「目の前でドアが閉まる」という、“逆自動ドア”程度のものしか出て来ません。家の外では、プールが波打ったりとか、木が倒れて来て逃げ道を塞ぐとか、派手な動きが見られるんですけどね。
そして、こういった怪現象は、『シャイニング』のようにこの家自体が作り出しているのか、それとも『ヘルハウス』や『たたり』のように何か亡霊の類が作り出しているのかが不明です。
ただ、どちらかと言うと、見ていて『シャイニング』っぽい雰囲気が感じられるので、家自体が意志を持ってるのかもしれないですね。
そして、この家の目的は、時と共に老朽化してきた外装&内装を「人の命を吸収する事で修繕する」というもののようです。要するに、この家で誰かが死ぬと、家の一部が自動的に新しくリフォームされるんです。
きっと、家の持ち主のアラダイス一家は、“この家の手先”、という事になるんでしょうね。

ちなみに、最後まで正体を現すどころか、存在しているのかも不明だったミセス・アラダイスですが、ラストについにその姿を現します。最後の最後まで引っ張ったおかげで、このクライマックスのサスペンスシーンは緊張感が凄い出てましたね。「いったい、どんなのが出てくるんだ!?」と、見てて構えてしまいます。
予期していたのは、マリオンがその正体で、ミセス・アラダイスは存在していなかった、というものでしたが、微妙に違う正体だったのには驚きでした。
正体は、“老婆の姿となったマリオン”でした。う〜む、意味が分からないですね。まあ、結局、ミセス・アラダイスは存在しなかったのだと思うんですが、何でマリオンは老婆化して、人格もマリオンとは違うものになっていたんでしょうか。あるいは、ミセス・アラダイスの亡霊が全ての元凶で、マリオンに憑依したという事なのかもしれません。

と、これだけで終わったら意味不明で消化不良を起こしかねなかったラストですが、この後の、謎のパワーでもってベンが窓から吹っ飛ばされるというシーンにおいて、その吹っ飛び方があまりに華麗なのでビックリしましたね。
「奇麗な放物線」と形容するに相応しい、見事なダイブで、そのまま、息子の待っている車のフロントガラスに派手に激突という壮絶な死に様。この、ベンの死にっぷりのあまりの見事さに、ラストの意味不明さも消し飛んで、爽やかに鑑賞を終える事が出来ました。ちょっと『ドロップゾーン』のゲイリー・ビジーの最期を彷彿とさせる死に様で、地味な展開の多かったこの映画において、最大の見せ場シーンとなっていましたね。グッジョブ、ベン!