監督・脚本:ダリオ・アルジェント
音楽:クラウディオ・シモネッティ
出演:ステファニア・ロッカ(アンナ・マリ)
リーアム・カニンガム(ジョン・ブレナン)
シルヴィオ・ムッチーノ(レモ)
クラウデイオ・サンタマリア(カルロ)
アントニオ・カンタフォラ(マリーニ)
フィオーレ・アルジェント(ルシア・マリーニ)
(感想)
イタリアン・ホラー界の帝王ダリオ・アルジェントが、現代社会に潜む闇を鋭く抉ったスリラー映画の傑作!
という触れ込みの映画ですが、内容は、とりたてて特徴の無い、至って普通なサイコサスペンス映画でした。普通のサイコサスペンス映画というのも悪くは無いですが、「アルジェントの新作」という事からくる期待感があったせいか、見終わった後に失望感みたいなのが出てきてしまいます。
どうも、アルジェント的には「ネットを使って殺人の生中継を見せる」というネタを使って、現代社会の闇を描こうとしたようですが、何だか、今更な感のあるネタですからねぇ。アメリカではすでに同じネタを扱った映画が作られてますし。
一応、前作の『スリープレス』同様、殺しの手口に凝ったところを見せようとはしているようですね。『スリープレス』の時は、殺すまでにやたら長い時間を掛けるという形で表現されてましたが、今回は「ネットを使った生中継」という表現方法でした。
どちらも、犯人の異常性を描く手段ではあるんですが、今回のは映像的にかなり地味になってしまいましたね。
また、『スリープレス』の時は音楽に懐かしのゴブリンを使ってきましたが、今回は『デモンズ』のクラウディオ・シモネッティを起用してきました(まあ、この人もゴブリンのメンバーなんですけど・笑)。
またまたイカしたスコアを提供してくれてるんですが、困ったことに、オープニングとエンディングで少し使われるだけで、本編はほとんど音無しなんですよね。『サスペリア』とか『シャドー』の時みたいに、本編でもガンガン鳴らしてほしかったです。
ただ、この映画にも「アルジェントならでは」な場面が無いわけではありません。超リアルな犠牲者の遺体の人形をこしらえて、それを「これでもか!」とばかりにアップで見せてきます。で、この遺体がまた“川から引き上げられた、死後数時間経過して体全体がどす黒くなった全裸の若い女性”というもので、「アルジェント御大の変態性はまだ健在なんだな」というのが確認出来て嬉しくなったものでした。
しかも、遺体から証拠を見つけようとする刑事が口を強引に開かせようとしたところ、口の中から大量の水が逆噴射してきた、なんてショックシーンまで用意してきてました。
ただ、ここで「死人の口から吹き出た水」を被るのが男の刑事だという辺りが以前と違うところでしょうかね(昔なら美少女にやらせる仕事だったでしょうに)。
ちなみに、この映画のDVDの映像特典に入ってるメイキングで(なぜか“オリジナル予告編”を選ぶとメイキングが始まったんですが、どういう仕様なんでしょう)、メイキング映像のBGMに、過去のアルジェント映画のテーマ曲の最新バージョンみたいなのが流れてたんですが、これがまたカッコ良かったですねぇ。『サスペリア』『サスペリア2』『デモンズ』以外は何の映画の曲なのか分からなかったんですが、むしろ映画本編よりも、このメイキングの方が見応えがありましたね。