監督・製作・脚本:ベンジャミン・クラーク
脚本・特殊メイク:アラン・オームズビー
出演:アラン・オームズビー(アレン)
ヴァレリー・モーチェス(ヴァル)
アニヤ・オームズビー(アニヤ)
ポール・クローニン(ポール)
ジェーン・ダリィ(テリー)
ジェフリー・ジレン(ジェフ)
ロイ・エングルマン(ロイ)
ロバート・フィリップ(エマーソン)
ブルース・ソロモン(ウィニス)
(感想)
何とも、シャレたタイトルの映画ですね。このタイトルを聞いて、お子様が死体にちょっかいを出す映画なのかと思ったら、出てくるのは若者達でした。それも、舞台が湖畔だったら、13金系の映画とあまり変わらない感じの若者達です。
ストーリーですが、なぜ劇団員達が死体蘇生を試みてるのかさっぱり分かりません。一応、劇団の頭であるアレンが一人で計画して一人でやってる事なんですが、他のみんなは誰も止めようともしません(ちなみに、序盤で少し寝てしまったので、その間に理由が語られていたのかもしれません・笑)。
ただ、このアレンというキャラクター自体、こんな行動(仲間の劇団員を真夜中に墓地島に連れて来て、死体蘇生儀式の見学をさせる)をとってもおかしくないような怪しい人物なので、この妙なストーリー展開にもさして違和感が無かったりします。また、仲間の一人にも怪しい雰囲気の女がいたりして(儀式に失敗したアレンを急に罵り始めたりする)、もともとこういうオカルトチックな事が好きな連中なのかもしれないですね。
その死体蘇生儀式ですが、掘り起こした死体(腐敗はしてない)を墓石に立て掛けておいて、その前で怪しげな呪文を唱える、というものです。これが、死体の顔アップを定期的に入れたりして、今にも目をカッと見開いて動き出しそうな雰囲気があり、緊張感も結構あるし、見てて怖かったですね。
この儀式の後も、アレンが死体を小屋に連れ込んで、隣に座らせて話しかけたりとか、わけの分からない事をするんですが、この辺のシーンでも、死体に今にも動き出しそうな雰囲気があって、「いつ動き出すんだろう」と、思わず画面に釘付けになってしまいました。
ちなみに、映画の冒頭にゾンビが墓守りらしき人物を襲うシーンが入っていて、ここで「この映画で死体が動く時は人を襲う事を意味します」というルールが示されます(そんな字幕が出るわけではないですが)。まあ、ゾンビ映画なんですから、そんな事言われなくても分かるんですけど、せっかくのメッセージですから、一応、ありがたがっておきましょう。
ちなみに、私はこういう「今そこにある死体が急に動き出す」というシチュエーションには弱いんです。好きという意味ではなく、本気で怖いんです。でも、ここで実際に動き始めてしまうと、そこで現実感が無くなるので、もう怖くなくなるんですけどね。
で、そんなこんなで地中から次々ゾンビが沸いてくるという展開になります。この時の「ゾンビーズ登場シーン」では、背景にラジオのチューニングを合わせてる時のような奇妙な音が鳴り響きます。これが、画面上で展開されてる「不条理な事態」をよく表してて、なかなかイイです。
そして、大量のゾンビが登場人物達のいる小屋に進軍していきます。このゾンビがもう、ほんとに大量で、見ていて嬉しくなってしまいます。
また、そのメイクも『ナイト・オブ・ザ・リヴィングデッド』を彷彿とさせるもので、「ああ、私は今、ゾンビ映画を見ているんだな」という幸せな気分にさせてくれます。
突然ですが、私は以前は怖い映画が、興味はあるものの、苦手でした。そんな時期、私が最も好きなホラー映画の怪物は、“ゾンビ”でした。なぜかと言うと、「実際に襲われたらどうしよう」と想像してしまった時、ゾンビが相手なら逃げられそうな気がするからです。
この映画のゾンビを見て、そんな若かりし頃の自分を思い出してしまいました。と言うのも、他のゾンビ映画のゾンビと比べても、この映画のゾンビはあまり脅威的じゃないからです。
とにかく、大群で人に向かって襲いかかるんですが、ただ襲いかかるだけで、あまり「殺そう」とか「食べよう」という気が感じられない動きなんですよね。
そのせいで、登場人物達はゾンビに組みつかれても、無傷で振りほどいたりしてましたし、「ドアを破ってゾンビが侵入してきた!」という段階でも(これが『ゾンビ3』とかなら致命的状況)、ゾンビを体当たりで吹っ飛ばして、またドアを閉めれば大丈夫!となったりします。
そんなヌルいゾンビ達を見ていたら、つい「何故、自分がゾンビが好きだったのか」を思い出してしまいました。そして「もし自分がこの映画の登場人物だったら」と想像しても、余裕で逃げ切れそうな気がします。「死体が蘇った!」という時点で失神してなければ。
一応、最終的にはみんなゾンビに殺されるんですが、その殺害方法も、「首の肉を食いちぎる」とか「腹を引き裂く」とかじゃなくて、「抱きつく(すると、抱きつかれた人が断末魔の悲鳴をあげる)」とか、「みんなで覆いかぶさる」など、直接的な殺人シーンがありません。
我々は、ゾンビに組みつかれた人がその後どうなるのか想像出来ますけど、この映画で初めてゾンビを見るという人がいたら、ゾンビに組みつかれた人が何をされてるのかが分からないんじゃないだろうかと思うほどです。
という事でこの映画、怖いのや気持ち悪いのが苦手な人でも、気楽にゾンビを楽しめる映画、という事が言えそうですね。
ちなみに、ラストは主人公達の乗って来たボートにゾンビが乗り込んで出航する様がエンドクレジットの背景に映されます。島から出て、人のいる所に向かっているというわけで、この後ゾンビパニックが起こる事を予感させるんですが、小さいボートに大人数で立ち乗りしてるので、今にも落っこちそうなんですよね。このゾンビ達は無事に陸地まで行けるんだろうかと心配になってしまいます。