エイリアン・ドローム
<CONTAMINATION>
80年 イタリア・ドイツ合作 85分

監督・原案・共同脚本:ルイス・コーテス
音楽:ゴブリン
出演:ルイーズ・マーロウ(ステラ・ホームズ大佐)
   マリノ・マッセ(トニー・アラス警部補)
   イアン・マカロック(ハバート中佐)
   ジークフリード・ラウヒ(ハミルトン)

(あらすじ)
ニューヨークの港に、人の乗っている気配のしない怪しい船が漂流してきた。船内には乗組員の凄惨な死体と、謎の卵があった。この卵、地球上のものではなく、破裂すると、ドロドロした液体が飛び散り、それに触れた人間は、苦み出したかと思うと、内部から爆発したかのように、勢いよく内臓を飛び散らせて死んでしまうという、デンジャラス極まりない物体なのだった。
政府のエージェント、ステラ・ホームズ大佐は、事件に関わっていたニューヨーク市警のアラス警部補と、かつて火星で今回の事件の卵と同じものを目撃していながら、誰にも信じてもらえなかったというハバート中佐と共に、事件の真相を探る。
そして3人は、船の出航元である、南米に赴くのだった。

(感想)
エイリアンの地球侵略物だと思うんですが、エイリアンは最後にしか出て来ません。この映画で脅威となるのは、エイリアンの“卵”です。これが、少々特殊な卵で、孵化してもエイリアンの赤ん坊が出てくるわけではありません。代わりに、殺人溶液をバラまいてくるんです。
あらすじに書いたように、この溶液に触れた者は、その場で内臓をぶちまけて息絶えるという結末が待っています。しかも、苦しむ時間も少し与えてくれます。厄介な話です。
多分この卵、『エイリアン』の、酸性血液を参考にしてるんでしょうね。この映画の殺人溶液、見た目が似た感じですし、「食らったらやばい」というのも一緒です。ただ、卵の形状は違ってましたけどね。そこまで真似たらまずいと思ったのか、この手の映画で出てきそうなオーソドックスな卵でした。

この映画、主人公が政府のエージェントという事で、スパイ映画みたいな展開で話が進んで行きます。ストーリー展開や登場人物のキャラクターなど、そこそこよく出来ていて、地味に面白い映画になってます。しかも、音楽をなぜかゴブリンがやっています。『サスペリア』『フェノミナ』などのダリオ・アルジェト映画の音楽で有名な、あのゴブリンです。
また、メインの見せ場である、人体破壊シーンも結構派手にやってくれてます。最近の映画だったら直接描写は避けてくるんでしょうが、この時代の映画はしっかりと腹が爆破するシーンを映してくれます。しかも、ちゃんと腸やら何やらの破片も舞ってくれてます。素晴らしい!
中盤には、主人公のホームズ大佐が、バスルームで孵化間近の卵と一緒に閉じ込められるという緊迫シーンも登場。このダレがちな中盤に緊迫シーンを持ってくるとは、なかなか堅実な映画を撮る監督ですね。

ラストにはエイリアンがその姿を現すんですが、残念ながら画面が暗くて、どんな形なのかほとんど分からない状態でした。ただ、人間の倍ぐらいの大きさで、自分で歩けるのかどうか分からないような、据置型の体型をしてるようでした。ジャバ・ザ・ハットを複雑化したようなデザイン、みたいな感じです、多分。
このエイリアン、睨んだだけで人間を洗脳する能力があるらしく、序盤には操り人形と化した人間が襲ってくるシーンもありました。で、この能力で、ハバートと一緒に火星に行っていたハミルトンという男を洗脳し、コーヒー会社のオーナーと組ませて、コーヒーの箱に卵を詰めて、それを船に積んでニューヨーク襲撃、という計画だったもようです。侵略の計画としては、かなり微妙な部類でしょうか(笑)。

また、ラスト、映画の最初から登場していたメインキャラの一人、アラス警部補も操られてしまい、フラフラとエイリアンの前に歩いて行ったかと思うと、頭からエイリアンにパクパク食われてしまいます。割といいキャラクターの人物でしたし、ちょっと前に主人公ホームズといい関係になるという展開を見せていたので、なかなか戦慄的なシーンでした。

ちなみに、にっかつから出ているこの映画のビデオ、最初に「この映画の」予告編が入ってました。何の前触れもなく始まったので、本編が始まったのかと思ってしまいましたよ。