監督:ジョナサン・リーベスマン
音楽:ブライアン・タイラー
出演:チェイニー・クレイ(カイル・ウォルシュ)
エマ・コールフィールド(ケイトリン・グリーン)
リー・コーミー(マイケル・グリーン)
グラント・パイロ(ラリー・フッシュマン)
サリバン・ステイプルトン(マット)
ウォルシュ家の長男、カイルの乳歯が抜けた夜、暗闇から凶暴な歯の妖精が現れ、うっかり暗闇に入ってしまったカイルの母親を殺すのだった。そしてカイルは母親殺しの容疑で施設へと送られてしまう。
それから12年後。カイルの幼馴染ケイトリンの弟が、かつてのカイル同様、暗闇を極端に恐れるという症状を出し、ケイトリンはカイルに相談を持ち掛ける。
ケイトリンに惚れていたカイルは、自身も暗闇から逃げる生活を続けているにも関わらず、「何か助けになれるかもしれない」と思い、施設に送られて以来、久々にダークネス・フォールズに戻ってくるのだった。
(感想)
この映画で出て来る、“歯の妖精”の伝説というのは、どうやら実際に語り継がれているものらしいですね。もちろん、「暗闇に入った人を殺す」という方ではなく、「抜けた乳歯を置いておくと、コインに変えてくれる」という方です。
「乳歯とコインを交換する」というのは、元々は、マチルダという人が生前に行っていた行動なんですが、「子供をさらったと勘違いされて、暴徒と化した町人に殺された」という悲劇的な最期だったせいか、後々まで語られる事となったみたいですね(何で乳歯を集めていたのかは不明。子供の歯フェチか何かだったのだろうか)。
いわゆる都市伝説の類のお話なんだと思うんですが、よくぞそれを、こんな凶暴なクリーチャーにアレンジしてしまったものです。本来、マチルダは被害者の側のはずなのに(笑)。
ちなみに、なんでマチルダは町人から殺されるハメになったのかと言うと、火事が原因で顔に火傷を負い、それを隠す為に仮面をずっと被っていたからのようです。「仮面を被ってるなんて、怪しい人間に違いない」みたいな感じだったんでしょうか。
映画では、暗闇に入ると怨霊が襲ってくるという設定になっていて、暗闇に恐怖を感じるような演出がなされているのですが、この、怨霊が誕生する経緯を聞くと、本当に怖いのは暗闇ではなく、人間の心の闇なのでは、なんて事を思ってしまいますね。
主人公のカイルも、久々に故郷に戻ってきたら、もうその日の内に「母親を殺したサイコ野郎」という事でケンカをふっかけられたりするんですよね。この町はイヤな奴しか住んでないのか。
暗闇から怨霊が人を襲うという内容のホラー映画ですが、ゾッとするような怖さを感じるシーンは全然無いんです。何しろ、その怨霊がガンガン人前に姿を現す武闘派の幽霊ですからね。でも、いかにもアメリカ映画な豪快さがあって面白いです。
で、そいつは暗闇に入らなければ襲ってこられないというルールがあり、主人公達はライトの元に行こうとする、怨霊側はライトを壊したり停電を起こしたりしてくる、という攻防が繰り広げられる事となります。
また「その姿を見たら、無関係の人にも襲い掛かる」という事で、たまたま主人公と同じ場所に居合わせた人がバリバリ死んで行く事となります。まるで、“主人公が死神”みたいな状況で、「お前のせいでいっぱい死んでるぞ」とか思うんですが、まあ、この町の住人はイヤな奴ばかりなんで、何人死んでも問題無いでしょう。
で、この暗闇からいかにして逃げるかというサバイバルストーリーをかなりテンポよく見せてきて、しかも上映時間が85分という短さ。おかげで、最初から最後まで一気に見てしまえる、“見易さ”というのがありますね。
ちなみに、夜のシーンが多いし、画面の半分が暗闇みたいな暗いシーンが多いんですけど、映像は決して見づらくないんですよね。こういう暗闇の見せ方はいいですね。時々「暗いだけで何も見えないよ!」とか思うような闇の見せ方をしてしまう監督とかいますけど、この映画みたいに「見える暗闇」という撮り方もあるんですね。