ミート・オブ・ザ・デッド
<DEAD MEAT>
04年 アイルランド映画 79分

監督・脚本:コナー・マクマホン
出演:マリアン・アラージョ(ヘレナ)
   デビッド・マラード(デズモンド)
   エオイン・ウェレン(カサル)
   アミー・レッドモンド(フランシー)
   デビッド・ライアン(マーティン)

(あらすじ)
アイルランドの農村でゾンビパニックが発生した!
発端は、とある農家が、牛に動物の屍骸を食わせた事だった。これにより牛が凶暴化。人間の喉を噛み切ろうとする殺人牛になってしまったのだ。
牛は政府により全て処分されたが、その牛に噛まれた人間はゾンビになって農村を彷徨っていたのだ。

車で旅行中のヘレナとマーティンは、地図の読み違えのせいで、このゾンビ村にやってきてしまうのだった。
襲撃する農民ゾンビ!ゾンビ化するマーティン!そういった面々をぶち殺しながら逃げるヘレナは、途中、スコップ使いのデズモントと出会い、共に安全な場所を目指して行軍するのだった。

(感想)
アイルランド発のゾンビ映画です。それで、今までのゾンビ映画と何か違うのかと言うと、もちろんそんな事はありません。まあ、ゾンビパニックの原因が牛から始まったというのは初の試みかもしれませんけどね。もしかしたら、暗に狂牛病の恐怖を語っているストーリーなのかもしれません(狂牛病と無関係の国ではないようですし)。

舞台はアイルランドの農村で、民家すらほとんど無いような所です。住民の数もたかが知れてると思うのですが、その割に、ゾンビは大量にうろついています。まあ、ゾンビの数は多いに越した事はないのでいいでしょう。
背の高い草やら森などで、視界は森林並に悪い場所です。そのおかげで、ゾンビに気付かれにくいという利点はありますが、逆にこっちもゾンビの存在に気付きにくいという難点もあります。
何よりも、とにかく広大な土地なので、ゾンビパニック地域から脱出するのがもう大変なんですよね。何キロも歩かないとなりません。
ですが、時々、立て篭もれそうな砦の跡みたいなのが草原の中に建ってたりするんです。中世が舞台の映画に出てきそうな建物が出て来るのは、この土地ならではの面白い所ですね。まあ、結局、門が固くて閉まらなかったりだとかで立て篭もる事は出来ないんですが。

で、このゾンビパニックに遭遇する主人公他メインキャラクター達は、ほとんどがあまり性格が良く無さそうな雰囲気の人々です。ヒロインのヘレナも発言に自分勝手な所が見受けられるムカつく奴ですし、途中で合流する夫妻も「近所にこんなのがいたらイヤだろうな」と思うような人柄の持ち主でした。
最終的にはみんなで協力し合うになるんですが、どうも、嫌な性格の人にメインキャラとして出てこられると、いまいちストーリーにも乗り切れないものがありますね。あんまり「助かって欲しい」と思えなくなってしまいます。
そんな中、ヒロインと早い段階から合流する事になるデズモントという男は、嫌味なところのない、まともなナイスガイでしたね。しかも、最初から最後まで武器がスコップ一本です。どうもこのスコップにはこだわりがあるらしく、途中、逃げる時にスコップを置き忘れていた事に気付いて、慌てて取りに戻るなんて場面もありましたからね。で、そのスコップを巧みに操って次々ゾンビを屠っていくんです。ゾンビ映画史上、最高のスコップ使いの名誉を与えたい男ですね。

肝心のゾンビですが、あまり凝ってはいないが、確実にゾンビに見える、というメイクっぷりで、当初は一画面にいっぺんに映る数も少なかったですが、終盤は溢れんばかりに登場する大部隊です。
舞台は農村ですが、スーツ姿の人とかパーティの最中みたいな格好の人とかがいるという、衣装への凝りっぷりを見せたかと思うと、「主人公達の存在に気付いたが、食事中なので無視する」「立ったまま寝る」といった、今までのゾンビ映画であまり見ない、独特の行動を見せる奴もいます。
また、主人公達が銃を持ってないせいか、ゾンビの倒し方もなかなか派手でしたね。例のスコップで頭部の一部を切り取られたり、頭ごと吹っ飛ばされたり。頭をかちわられて脳みそを垂れ流す奴がいたかと思うと、中には、掃除機で目玉を吸われる奴とかいましたねぇ。

このように、ゾンビ映画としてそこそこのレベルのあるいい映画でした。
クライマックスの、砦の一角に陣取って、大量に現れるゾンビ軍団と戦うシーンは素晴らしかったです。あの押し潰されそうな感覚はゾンビ映画の醍醐味みたいなものですからね。
また、途中で「牛ゾンビ」が襲ってくるシーンがあるのも珍しくて面白かったです。
これで、登場人物に魅力があれば良かったんですけどねぇ・・・。