サスペリアPART2
<DEEP RED/PROFONDO ROSSO>
75年 イタリア映画 106分

監督・脚本:ダリオ・アルジェント
製作:クラウディオ・アルジェント
脚本:ベルナルディーノ・ザッポーニ
音楽:ゴブリン
   ジョルジオ・ガスリーニ
出演:デヴィッド・ヘミングス(マーク)
   ダリア・ニコロディ(ジャンナ)
   ガブリエラ・ラヴィア(カルロ)
   マーシャ・メリル(ヘルガ)
   エロス・バーニ(カルカブリーニ)
   グラウコ・マウリ(ジョルダーニ)
   クララ・カラマイ(カルロの母親)
   ニコレッタ・エルミ(オルガ)

(あらすじ)
女性霊能力者が、講演会中に、客の中に邪悪な心を持ったサイコが紛れている事に気付いた。そして、その夜。霊能力者は自宅のマンションで肉切り包丁を持った何者かに襲われるのだった。
同じ時、友人のカルロと通りを歩いていたピアニストのマークは、どこかからか悲鳴が聞こえてくるのに気付く。声のする方を見上げると、そこは自分の住むマンション。そして、下の階の窓から霊能力者殺害事件が行われているのを目撃してしまうのだった。

事件に興味を持ったマークは、独自に犯人探しをしようとする。手がかりは、犯行後に霊能者の部屋に駆けつけた時、窓から見えた、立ち去ろうとする茶色いコートの人影。そして、霊能者が講演会中にサイコから感じ取った「屋敷」と「子供の歌」という言葉。
そこから、幽霊屋敷と言われているある屋敷の存在を見つけたマーク。無人の廃墟だが、時々子供の歌が聞こえてくると言われているのだ。
屋敷を調査したマークは、壁に埋め込まれている不気味な絵と、隠し部屋を発見する。

一方、犯人は情報を知っている人物を着々と殺害し続けていた。そして、その魔の手はマークにも迫ってくるのだった!

(感想)
『サスペリア』の続編を謳っている邦題ですが、『サスペリア』とは関連が無いばかりか、製作年度も『サスペリア』より早いという有様。でも、この2作には「監督が同じ」という以外にも共通点があるんです。それは、「超怖い」という点。どちらも、まだホラー映画を見た本数がそれほど多くなく、耐性が出来てない頃に出会ってしまったもので、もう、見ながら「一人で見るんじゃなかった!」と泣き叫びながら鑑賞するハメになったものです。せっかく、キャッチコピーで警告されてたのに!
まあ、多少の誇張はあったものの、当時見て怖かったのは本当です。一応、ジャンル的にはホラーではなく、サイコサスペンス(マニアにとっては、“ジャーロ”という別のジャンル名があるらしい)に含まれるもので、『セブン』とか『羊たちの沈黙』の仲間だと思うんですが、初見時に感じた映像の怖さとインパクトはその2作の比じゃないぐらいでしたね。

残酷な殺害描写とか出てきますが、怖いのはそういう、直接的なグロ関連の映像じゃないんです。それよりも、想像力を刺激される事で恐怖感が湧き上がってくるような、背筋が寒くなる系の怖さがある映像が出て来るんですよね。
特に、前半の段階で真犯人の顔が堂々と映ってるシーンが紛れてるという映像トリックがクライマックスで明かされた時は心底驚いたものでした。そして同時に猛烈に怖かったですね。これは例えるなら、今まで普通の写真だと思っていたのが、誰かに指摘されて心霊写真だった事に気付いたような怖さですよ。
あと、回想シーンで見られる「最初の殺人」の場面の映像もやたら不気味でしたね。一見、普通の殺人シーンみたいなものなんですけど、「トラウマの映像化」みたいな、イヤ〜な不気味さがあるんです。
出て来る絵も怖い絵ばっかりですし、あるシーンにおいて、突如突進してくるからくり人形のビジュアルは悪夢に出てきそうです。もう、こんな映像が思いつく奴こそが異常者だろうとか思うような、常識や人智を越えた何かがある映像ですね。
また、映像だけでなく、音楽の怖さもまさに特筆ものです。一般的な「怖い音楽」とはかけ離れたもので、むしろ激しいロックな感じの音楽なんですけど、この映画の映像と組み合わされると、異常なまでの迫力と怖さが生まれてくるんです。この感覚は、「アルジェント&ゴブリン」のコラボでしか味わえない、独特のものですね。
また、ゴブリンじゃないですが、事件のカギとなる「子供の歌」の不気味さも相当なものでした。

その代わり、ストーリー自体は、どうも矛盾の匂いがするような、どこか隙のある話なんですよね。例えば、何でただのピアニストである主人公がここまで事件の真相に拘るのかもよく分からないですし、事件の情報を持ってる人間を犯人が殺しに行く時も、「お前はどこで、こいつの情報を得たんだ」とか思うんですよね。かなり大規模な盗聴でもしてない限り不可能な先回りとかしてきますし。
でも、そういった事が全て“ささいな事”と思えてしまうような、圧倒的なパワーが映画から発せられているんですよ。事件のカギが眠っている屋敷に主人公が辿り着いたのも、結局ただの“勘”ですし(笑)、その屋敷の壁から怖い絵が出て来た所で、それと霊能力者の殺害事件とどう関連があるのかよく分からないんですけど、映画を見てると「恐ろしい事実を発見してしまった!」とか思えるんですよね。
きっと、理論よりも感覚に訴えてくる映画なんでしょうね。