いけにえ
<DEVOUR>
05年 アメリカ映画 90分

監督:デビッド・ウィンクラー
出演:ジャンセン・アクレス(ジェイク・グレイ)
   シャニン・ソサモン(マリソル)
   ドミニク・スウェイン(ダコタ)
   ティーチ・グラント(コンラッド)
   ウィリアム・サドラー(ライス)
   ロブ・スチュワート(ノース)
   マーティン・カミンズ(ケイター)

(あらすじ)
好青年のジェイクは、悪友のコンラッドに無理矢理に謎のネットゲーム「パスウェイ」に参加させられてしまった。それは、あらゆる個人情報を入力すると、後にある指令が電話で送られてくるというものだった。
確かに変な電話が掛かるようになって来たが、特に気にしないで普段の生活を続けるジェイクだが、最近見始めるようになった“妙な幻覚”が、この頃からさらに頻度を上げて見るようになってくるのだった。

そんなある日、同じくパスウェイに参加していたらしい悪友二人が、いざこざのあった相手を殺した後に自殺をしてしまった。
「何故二人は自殺したのか」「何故自分は二人のようにならなかったのか」と疑問に思ったジェイクは、このネットゲームが、悪魔崇拝者が作り出した邪悪なゲームである事を知るのだった。

(感想)
「嫌な奴を殺してみたい」「つまらない人生から逃げたい」など、若者が抱く負の妄想を、オカルトをベースに語ってみた映画、というような気がしました。
主人公は大学に通うごく普通の好青年ですが、最近、幻覚のような妄想のようなおかしなビジョンを見るようになっていた、という所から始まり、デビッド・フィンチャーの『ゲーム』のような怪しいゲームが関わってきたり、同じそのゲームをやっていた悪友達が死んだり、自分の出生に何か秘密がありそうな事を親父が口走ったりと、「いったい、このストーリーはどこに向かっているんだ?」というのが気になる展開を見せてきます。
悪魔が背後に関わるオカルト的なストーリーなわけなんですが、語り口はホラーというより、サスペンスに近いような感じですかね。展開はかなり地味目で、これといった盛り上がりも見せないまま淡々と進んで行くんですが、主人公同様「いったい、何が起こってるんだ?」と驚きながら見ていくことが出来ましたね。

最終的には「全て悪魔の陰謀」みたいな方向にストーリーが進むわけですが、最初に書いたように、このオカルトストーリーから、暗に若者の抱く負の妄想というのを語ってるような雰囲気があって、中々興味深かったですね。確かに、私も過去に何度か「あいつを殺してやりたい」だとか「もう死んでしまおう」だとか、そんなような事を妄想した時もありました。こういう、いわゆる「悪魔の囁き」を聞き、従ってしまった悪友二人には悲しい結末が待っていたという事なんでしょう。
そして、どちらのケースも、もし主人公がもっと親身になって二人の話を聞いてやれば、もしかしたら防げたかもしれない事件だったというのには、見てて何だか、もどかしいような思いがしたものでしたね。友人の悩みは聞いてあげないといけませんね。
また、この映画ではラストの最後の最後で、「もしかしたら、悪魔なんていなくて、全部自分の妄想だったのかも?」なんて曖昧な部分も出してきます。たまに世に出て来る「悪魔に言われて実行した」的な犯罪を是認してるわけではありませんというのをこれで表現しているんでしょうかね。もしくは、悪魔とは自分の心の中にいるものだという事を言いたかったのか。

『いけにえ』なんてタイトルから、てっきり自主制作の超低予算なくだらないZ級ホラーだと思っていたんですが、そこそこ名の知れた人の出演する、まともな映画だったのにはちょっと驚きましたね。
面白いか面白く無いかは別として、映画のレベル自体は、やっぱり無名の人達しか出てない未公開映画よりは高いものが感じられました。