監督:ドッド・ブラウニング
製作:カール・レムリ・Jr
原作:ブラム・ストーカー
出演:ベラ・ルゴシ(ドラキュラ伯爵)
ヘレン・チャンドラー(ミナ)
デヴィッド・マナーズ(ジョナサン・ハーカー)
ドワイト・フライ(レンフィールド)
エドワード・ヴァン・スローン(ヴァン・ヘルシング教授)
(感想)
ベラ・ルゴシ主演の、ドラキュラ映画の元祖です。ドラキュラと言えばクリストファー・リーというイメージがあったんですが、実はルゴシが元祖なんですね。
ドラキュラという存在はかなり有名で、私も昔から知っていましたが、全てはこの映画がヒットした事から広まったものなんですよね。なので、ドラキュラに持っている“イメージ”というもののほぼ全てがこの映画に詰まっていました。
余計な物の入っていない、ドラキュラの基本的設定のみで作られたこの映画、何だか、「添加物の一切入って無い、自然食品」を食べてる時のようなストレートさを感じましたね。
ただ、ストーリー自体はそんなに面白いものではありませんでした。ジャンル的には一応ホラーに分類されてる映画ですが(何やら、「ハリウッドが初めて超常現象を描いた映画」という説もあるそうな)、ほんの1ミリたりとも怖い所なんて無いですからね。この映画を「ホラーとして楽しむ」には、あまりに世代が違い過ぎました。
今見ると、ドラキュラは弱点が多すぎて、悪役としてはてんで弱っちいですし、凶悪さでも、現在のサイコな殺人犯と比べたら紳士みたいなものです。実際、態度は紳士的ですしね。
ですが、この点こそがまさにドラキュラの魅力でもあるわけなんですよね。「元祖としての魅力」と言うんでしょうか。実のところ、これまで私が見て来たドラキュラの中で、この映画のドラキュラが最も魅力的に見えたものでした。
多分、長年慣れ親しんできたドラキュラの設定がそのまま表れていたような存在だったせいなんでしょう。懐かしさみたいなのもあったのかもしれません。
そんな訳で、上でストーリー自体は面白くないと書きましたが、映画自体は面白かったですね。面白い、と言うより、興味深かったです。
懐古趣味的なもの以外でも、何か、この「クラシック怪奇映画」には、最近のモンスター・ホラーには無い魅力が隠されてるような印象もありました。その魅力が具体的に何であるかまでは、まだよく分からないですけど。
ちなみに、この映画には同年に製作された“スペイン語版”というバージョンがあるんですが、これがなんと、ただスペイン語に吹き替えただけのバージョンではなく、スペイン語を話す俳優達によって作り直されてる、言ってみればリメイクみたいなバージョンなんだそうですね。
しかも、『サイコ』のリメイクみたいに、完全にオリジナルに沿ってるわけではなく、細部に違いがあるらしく、このスペイン語版の方がオリジナルよりも演出がやや派手目になってるそうです。
これは、当時としては特に珍しい事ではないそうなんですが、今では考えられないような事ですよね。こっちのバージョンも見てみたいものです(DVDがリリースされてるようですが、レンタル屋では見かけなかったんですよね)。