監督・脚本:デビッド・ダーストン
出演:バスカー(ホーレス)
ジョージ・パターソン(ロロ・イェイツ)
ジャディーン・ウォン(スー・リン)
ロンダ・フルツ(モリー)
アレックス・マン(シェリー)
リン・ロウリー(キャリー)
タイド・カーニー(アンディ)
エリザベス・M・ブルックス(ミルドレッド・ナッシュ)
ライリー・ミルズ(ピート少年)
アイリス・ブルックス(シルビア)
リチャード・ボウラー(バーナー爺)
ジョン・デイモン(ロジャー・デイビス)
森の中での集会を盗み見ていた地元の娘シルビアが連中に襲われるという事件が発生。シルビアのお爺ちゃんが早速仕返しに行くが、逆にLSDを飲まされて追い返されてしまう。
シルビアの弟のピート君は、復讐の為にとんでもない事をやらかす。狂犬病の犬を撃ち殺すとその血を採取し、パイに混ぜ、その「狂犬ブラッド・パイ」をマッド・ヒッピーズの面々にふるまったのだ!
パイのおかけで狂犬病にかかったマッド・ヒッピーズは、ただでさえイカれてるのに、この事でさらに狂いまくり、“マッド・ヒッピーズ”から“処刑軍団ザップ”に昇格。口から泡を吹きながら刃物を振り回すという大暴走を始めるのだった!さすが処刑軍団ザップだ!!
ザップの病気は、町で働いているダムの建設作業員達にも伝染。町中に狂人が溢れ返るという一大イベントに発展するのだった。
(注・劇中の狂人達が“マッド・ヒッピーズ”や“処刑軍団ザップ”という名称で呼ばれる場面は一切ありません)
(感想)
もう、見るからに社会不適応といった感じのヒッピーの方々。この時点でも十分狂ってる連中なんですが、狂犬病の犬の血を隠し味に使われたパイを食った事でさらに狂ってしまいます。
口から泡を吹き出し、雄叫びをあげ、斧やナタといった刃物を振り回しながら走り回るという、それは凄い有様になります。
終盤は町にいた作業員の方々にも伝染して、町に狂人が溢れ返るという状況に発展。映画はまさに、狂人エンターテイメントの様相を呈してきます(何だそりゃ)。
この、映画から発せられるパワフルさは、見てるだけで元気になってくるぐらいでしたね。腕や足、首が飛んだりと残酷シーンも振るってるんですが、陰惨な感じはあんまりないんですよね。千切れた各人体パーツが作り物にしか見えないせいでしょうか(笑)。
あと、狂った人の“狂いっぷり演技”が、もう見てて頼もしくなってくるぐらいにノリノリなんですよね。表情から動きまで、体の全てで狂人を表現しているかのようです。
この病気に感染した人は水を恐れるようになる為、そんな100%狂人な方々が、水溜りの水をバシャバシャかけただけで怯むという姿は、もはや神秘的ですらありましたね。
ただ、この病気自体は実際にあるものらしいんで、この面に関して喜ぶのはちょっと不謹慎なのかもしれないですが、まあこの映画自体が不謹慎の塊みたいなものですからねぇ。責めるんなら、こんな映画を作った奴の方を責めてくれと。
ちなみに、襲ってくる連中は狂人なんですが、「ゾンビ映画大辞典」でも紹介されてたりと、まるでゾンビ映画のような雰囲気もある映画です。
これをゾンビ映画に含めるのならば、このジャンルの中でもレベルはかなり高い部類の映画ですね。登場人物の半分以上が最初からイカれてるという設定も素敵ですが、そんな連中がさらにパワーアップして狂うという終盤の展開から発せられる圧倒的なパワフルさは一見の価値ありです。
映画全体のテンションもかなり高めで、展開も割とスピーディです。70年という、古の映画とは思えないぐらいですね。
殺人シーン等、恐怖シーンの背景に流れる音楽が、「ビーッ!」とか「ピーッ!」みたいな変な音なのも最高です。このサントラだけ聞いてたら頭がおかしくなりそうな異常な音(←もはや“音楽”とは呼べないので“音”と表記)は、「殺人シーンを盛り上げる」という効果の面で見ればロックやヘビメタにも負けてませんね。
いやぁ、凄い映画でした。
最後に、この映画で印象に残ったシーンを一つ。
ザップのリーダーが、大蛇を飼っているオヤジを襲うというシーンがあり(このオヤジはこのシーンのみの登場)、ここでリーダーはヘッドロックで攻撃をするんですが、その攻撃を受けてる最中のオヤジの口から、何かが「ポンっ!」と飛び出るんです。どうも、リーダーの攻撃があまりに凄まじくて入れ歯が吹っ飛んでしまったようなんです。
「犠牲者が入れ歯を放出する」なんてこれまで見た事の無い映像だった為、「なんて画期的な演出なんだ!」と感動したんですが、DVDに収録されてる音声解説によると、この「入れ歯吹っ飛びシーン」は演出ではなく、たまたまなのだそうです。アクシデントだったのか。
もう、この裏話を知ってからというもの、このシーンを思い返しただけで噴き出しそうになってしまいます(笑)。