監督:K・C・バスコーム
出演:ジェシー・ジェームズ(ライアン)
ケビン・ゼガース(デール)
レイチェル・スカーステン(ヘザー)
チャールズ・パウエル(パパ)
リンダ・パール(ママ)
(感想)
私は昔、暗闇が嫌いでした。なぜかって、何かが出て来そうで怖いからです。大人になった今はもう暗闇に対する恐怖はほとんど無いですが、それでも、怖い話を聞いた後とかはやっぱり何かが出て来そうな気がして怖くなったりもします。
そんな、「闇に対する恐怖」を描いたのがこの映画です。
舞台はアメリカの郊外の一軒家で、主な登場人物は、家で留守番をする事となった兄弟のみという、大変シンプルな作りになっています(終盤には兄のガールフレンドが来て3人になりますが)。
怪物とかが派手に襲ってくるわけでもないので、地味な映画かと思いがちですが、いや、確かに地味な映画ではあるんですが(笑)、見ていて飽きたりダレたりという事がほとんど無いんですよね。なぜかと言うと、全編にきちんと恐怖感が漂っているからです。何しろ、その題材自体が物凄く身近な話であり、リアリティが感じられるんですよね。舞台が、曰く付きの場所とかではなく、いつも生活している自分の家だというのも現実感があっていいです。
また、例え見てる人が「暗闇が怖くない」と思っていても、劇中の主人公は暗闇を怖がっているんです。だから、暗闇が出てくるシーンを見ると、つい主人公につられて「何か怖い事が起こりそうな気がする!」と思って、見ていて何となく怖い感じになってくるんですよね。
主人公の少年はなぜ闇を恐れているのかと言うと、闇の中には“闇の住人”と呼んでいる得体の知れない連中が存在していて、そいつらが襲ってくるからなんだそうです。そして、この闇の住人とやらは、後半になると実際にその姿を現して襲ってくるようになります。痩せてて肌の白い、黒い服を来た男という姿なんですが、こいつらのビジュアルは結構、「いかにも闇の中にいそうな感じがする」というもので、なかなか怖いです。なので、本来はリアリティが無くなって怖くなくなってしまうところである、「実際にこいつらが姿を見せて襲ってくる」という展開になっても、見てて怖いんですよね。割りと、幽霊と近い感じの存在なので、幽霊同様、本当にいそうな雰囲気が感じられるせいなのかもしれません。
それに、こいつらの外見は、設定では「その人が恐れを抱いているものの姿」をとって現れるという事らしいです。なので、もし日本人がこいつの姿を見る事があったら、白い着物を来た青白い顔の老婆(または、口から血を流した若い女)みたいな「いかにも幽霊」という姿をしている可能性があるわけです。
いやぁ、これはいい設定でしたね。これのせいで、見終わった後はしっかり、暗闇にビビリましたからね、私は(笑)。これが、見るからに人を取って食いそうなクリーチャーみたいな外見で固定されてたら、多分、全然怖くなかったと思います。あと、この映画の予算的に、そんなのを出そうとしたら、思わず笑ってしまうような出来のクリーチャーになってた事でしょうし。
闇の住人が出て来てる時も怖いですが、やっぱり、何も出てこない、「何かが出そうで出ない」ようなシーンの方が怖いですね。この映画の恐怖演出は、中盤過ぎぐらいまでほとんどこれ一本で通して来るんですが(あと、背景で鳴る音楽も結構恐怖を煽ってくれる、いい曲になってました)、それでも十分怖いんです。これは、肝試しの怖さに通じるものがあるような気がしますね。肝試しだって、実際は「何か怖い事が起こりそうで起こらない」を延々体験するものですからね。