ファイナル・デスティネーション
<FINAL DESTINATION>
00年 アメリカ映画 97分

監督・脚本:ジェームズ・ウォン
製作・脚本:グレン・モーガン
原案・脚本:ジェフリー・レディック
出演:デヴォン・サワ(アレックス)
   アリ・ラーター(クレア)
   カー・スミス(カーター)
   ショーン・ウィリアム・スコット(ビリー)
   クリステン・クローク(ルートン先生)
   アマンダ・デトマー(テリー)
   チャド・E・ドネッラ(トッド)
   トニー・トッド(ウィリアム・ブラッドワース)

(あらすじ)
パリへ修学旅行へ行く学生達が引率の先生と共に空港にやってきた。飛行機に乗った学生達だが、学生の一人アレックスが「この飛行機は爆発する!」と騒ぎだし始めた。
パニック状態で騒ぎ続けるアレックスを連れ出すため、数人の学生と先生が飛行機を降りる。アレックスは飛行機が爆発するという夢か幻を見たのだが、それがあまりにリアルだった為に騒ぎだしたのだ。
飛行機はアレックス他、降りた学生や先生を残し、飛び立って行った。だがその直後、本当に飛行機は爆発してしまったのだ!

アレックスの幻のお陰で命拾いした6人。だが、彼らは本来飛行機事故で死ぬ運命だった身。この“死の運命”からは逃れる事が出来ないのだ。飛行機事故から数ヶ月後。飛行機事故の生き残りが次々と怪死していくのだった。

だが、この死の運命には決められたルール(順番)があり、それを見破れば生き残る事も可能かもしれない。アレックスは、たまに見える事のある“死の前兆”の幻を武器に、決死のサバイバルを試みるのだった。

(感想)
多分、若者が殺されまくるという『13金』とか『スクリーム』なんかと同系統の映画だと思います。でも、この恐怖度とストーリーの面白さ、アイデアの斬新さは、この映画を、もう全く別の領域の映画へと変えてしまってますね。
基本的に、アメリカ製のホラーは、恐怖が後にひきません。日本製の心霊物のホラーとかは、見終わった後も、「もしかしたら自分の後ろに霊がいるんじゃないか」と、恐怖がしばらく持続するんですが、アメリカ製のホラーを見た後は「もしかしたらナタを持った大男が襲ってくるかも!」なんて事は思わないですからね。
ですが、この映画で恐怖の対象となるのは幽霊でも殺人鬼でも、ましてや異形のクリーチャーでもなく、「突発的な事故」です。しかも、交通事故とか飛行機事故とか、規模のでかいのだけでなく、日常のほんのささいな事がきっかけで起こる事故も含まれてるんです。例えば、浴槽で滑って転んで頭を打つだとか、そういう事です。
これこそ、先ほど例にあげた恐怖の対象の中でも一番リアリティがあり、「もしかしたら、自分の身に降りかかってくるかもしれない」と思えるものですよね。
なので、映画を見終わった後も恐怖が持続するんですよね。初めてこの映画を見た後は、もう、身の回りにある全てのものが凶器となって襲いかかってくるんじゃないかとビビりまくったものでした。
見終わった後だけでなく、見てる最中の恐怖度もそれは凄かったです。間違いなく、私がこれまで見たアメリカ製ホラーの中で、最も怖かった映画でした。いやいや、国籍に限らず、全ホラーの中でも一番怖い映画かもしれません。何しろ、これまでに見た事の無いタイプの恐怖だっただけに、耐性も出来て無かったですからね。

ただ、登場人物には“事故”というより、“死”そのものが襲って来ている、という感じで、「偶然の事故」と言うにはあまりに偶然が重なり過ぎてるような事態が起こるんですよね。それも、死神の意志が介在しているかのような描写があったりするので、正確には襲って来ているのは「突発事故」ではないんですよね。「死の運命」が襲って来ている、と言うんでしょうか。
で、この「死の迫りっぷり」の手の込みようがまた凄いんです。あの手この手で登場人物に“死”が迫る様の緊迫感は並じゃないですね。さすがに運命だけあって、逆らうのは至難の業なんです。
そして、主人公はその死の運命をなぜか予知出来る能力を持っています。例えば、「誰がどこで、どう死ぬ」というような詳しい予知が出来るわけではなく、「何となくあの人が、これが原因の事故に遭いそうな気がする」という程度のものです。
そんな微弱な予知能力ではあまり役に立たないので、自分達を襲っている「死の法則」の謎を頭を使って解き明かしていく、という展開となります。
で、このストーリー展開がほんと、見てて面白いんです。これは凄い脚本だと思いますね。次にどういう展開になるのかも予測出来ないですし、かと言って見ててついていけないような突飛な展開にもなりません。この凝ったストーリー展開は映画だけでなく、小説で読んでも面白いものでしょうね。
ただ、死が迫るシーンでの「一体、何が直接の死に繋がるものなのか」というのは、映像ならではな面白さでした。「これは間違いなく死因になりそうだ」という、見るからに危険なものから、怪しいけど結局死因に繋がらないというものまで、色々映してくるんですよね。

冒頭の飛行機事故の映像も怖いものでした。主人公の夢に出て来た、「爆発する飛行機に乗ってる時の映像」も怖かったですが、その後の、空港のロビーで遠くから爆発を映すシーンもまた凄く怖いんですよね。
ここの映し方がまた凝ってて、爆発する飛行機を「これがメインだ!」とばかりに画面の真ん中に据えるような映し方じゃなく、空港のロビーから外の景色が見えるようなアングルで、端っこの方で音も無く爆発してる飛行機が映ってる、という映し方なんです。で、次の瞬間、その爆風でロビーの窓ガラスが割れ、効果音も派手に鳴って大パニックが起こる、という流れとなります。
で、この爆破、背景を注意して見て無かったら気が付かないぐらい小さく映されてるんですよね。一応、窓の前に立ってる登場人物の一人が「マジかよ!」みたいな事を叫んで爆破事故が起きた事をアピールするんですが、何しろ画面の端っこなので、もしかしたら爆発の瞬間を見逃してしまった人もいるかもしれないですね。
飛行機の爆破事故をこんな形で映した映像は今まで見た事無かったんで、最初に見た時は驚きました。しかも、ストーリー的に、飛行機事故が本当に起こるのか分からない、という状況だっただけに、画面の端っこで爆発してる飛行機の姿に気付いた時はほんと怖かったです。何だか、自分が実際に空港で飛行機事故を目撃してしまったような、そんな怖さがありましたね。

その飛行機事故で、本来死ぬはずだったところを免れた人達の中に、「アレックスの予知のおかげで命拾いをした」という事を思わない人がいるというのは何だか意外でしたね。むしろ、アレックスが原因で事故が起こったぐらいの事を思う奴もいる始末です。
アレックスの行動は、本来なら英雄扱いされてもおかしくないものだと思うんですが、逆に、アレックスはみんなから気味悪がられる存在となってしまいました。
この出来事を客観的に見ていれば、明らかにアレックスは英雄なんですが、実際、あの事件に関わった者にとっては、事故の予知をした人間をそう簡単に英雄扱い出来ない、複雑なものがあるんでしょうね。