監督:ロブ・ヘデン
音楽:フレッド・モーリン
出演:ケイン・ホッダー(ジェイソン)
ジェンセン・ダゲット(レニー)
スコット・リーブス(ショーン・ロバートソン)
ピーター・マーク・リッチマン(チャールズ・マカラロック)
バーバラ・ビンガム(コリーン)
V.C.ダプリー(ジュリアス)
マーティン・カミンズ(ウエイン)
シャーリーン・マーティン(タマラ・メイソン)
ウォーレン・マンソン(ロバートソン船長)
ケリー・フー(エヴァ・ワタナベ)
サフロン・ヘンダーソン(J.J.)
トッド・シェイファー(ジム)
ティファニー・ポールセン(スージー)
犬(トビー)
一方、実は海へと続いていたクリスタル・レイクの向こうでは、若者達を乗せた船ラザラス号がニューヨークへ向け出港しようとしていた。その場に、さきほどの船に乗ったジェイソンが到着。若者臭漂うその船に早速乗り換えるのだった。
そしてラザラス号は数名の若者(別名、獲物)とジェイソンを乗せ、ニューヨークへ向かって出港してしまうのだった。
(感想)
ついにジェイソンがクリスタル・レイクから遠く離れたNYに遠征に出ます。恐らく、この映画がヒットしたら「ジェイソンLAへ」とか「ジェイソン アフガンへ」とかシリーズ化していこうという製作側の思惑もあったのでしょう。ですが、結果は興行成績的には悲しいぐらいの惨敗に終わったようで。
ただ、そのお陰でパラマウントは『13金』シリーズの権利をニュー・ラインに売却。これでついに夢の映画『フレディVSジェイソン』製作への道が開けたわけです。そう考えると、まさに「意義ある失敗」だったわけですね。
さて、そんな「NYへ」ですが、こんなサブタイトルをつけられてるくせに、話の主な舞台はニューヨークではなく、ニューヨーク行きの船の中です。
ですが、この、船内という閉鎖された空間でジェイソンの殺戮が起こる様は、これまでのシリーズとはまた違った“楽しさ”が出ましたね(“恐怖”ではない)。殺される若者も、特にエロっていたわけでもなく、ただジェイソンと同じ船に乗っていた為に殺されていく、という感じです。中には、名前も出ずに死ぬ連中も出る始末。
で、最終的には何のかんので船は大爆発するわけですが(まさに最高の展開!)、生き残り数名が救命ボートで脱出。そのままボートでニューヨーク上陸となります。
驚いたことに、船から飛び降りる描写もなく、行方不明だったジェイソンは“泳いで”ニューヨークに到着していました。まさか遠泳の能力もあったとは。少年時代、溺れて死にかけた奴とは思えないぐらいの成長ぶりです。まあ、後の『フレディVSジェイソン』では「水に弱い」という設定が付けられる事になるんですが。
ヒロインは、過去の何かの出来事が原因で水にトラウマがあるという性格設定となっています。それ以外でも、なぜか少年時代のジェイソンの幻影を見たりと、ほぼ精神病状態です。このシリーズの主役はこんな奴ばっかりですな。
ただ、このヒロインのレニーがジェイソンの幻覚を見るのは、過去にクリスタル・レイクで少年ジェイソンに溺れさせられかけているせいなんです。
確か『3』のヒロインも一度ジェイソンに森で襲われていましたね。たまにこういう、「討ちもらし」を処理しようという行動に出るんですね、ジェイソンは。このレニーを追うジェイソンの執念は何か凄いものがあります。終盤、ニューヨークの町を舞台に、地下鉄から食堂、下水道と、ひたすらレニーを追いかけ回す様は、後期『13金』にしては珍しく、恐怖感すら漂っています。
しかも、回りにいる人々には目もくれず、ただひたすらにレニーのみを追いかけまわす様は、まるでサラを追うターミネーターのようです。
今回のジェイソン、その異様な執念故か、ついに瞬間移動という特技を習得しています。これにより、今回の犠牲者は「ジェイソンが前から来たから後ろに逃げる」という行動をとっても、すぐに先回りをされたりするという不条理な目に遭うハメとなります。
個人的には、現実味がなくなるので殺人鬼に瞬間移動は使ってほしくないんですが、まあ、もうシリーズ8作目ですからね。マンネリ打破の為にはこんな要素が出てきてもいいでしょう。
この映画、パラマウントが権利を手放したくなるほどヒットしなかった映画ですが、シリーズの中でも悪い出来とは思わないですね。まず、舞台が船というのも、一時期流行した「舞台限定型アクション」を彷彿とさせてくれる設定ですしね。中でも、船が舞台という事で『沈黙の戦艦』なんかを特に思い出してしまいます。あの映画も、船内という限定した場所で、テロリストが次々虐殺されていく様を描いてましたからね。船内で学生が次々虐殺さるこの映画とよく似ています。
あと、終盤のニューヨークでの追いかけっこは、久々に追ってくるジェイソンに恐怖を感じられるという事で、シリーズでもかなり貴重であり重要なシーンです。それに、絡んでくるクソガキどもを「素顔を見せて退散させる」という変化球的な技も披露してくれます。そうそう。このシーンで、わざわざクソガキのラジカセを蹴っ飛ばしていったジェイソンに猛烈な頼もしさを感じてしまいましたね(笑)。
ところで、この映画に、後に『スコーピオン・キング』『X−MEN2』や、テレビシリーズ『刑事ナッシュ・ブリッジス』に出るケリー・フーがジェイソンに殺される役で出ています。
この映画に出た事が今後の女優人生においてマイナスにならなくて良かったですね(いや、もしかしたら、この映画に出てなかったら、今のルーシー・リューぐらいの立場になってたのかも・笑)。