フロム・ヘル
<FROM HELL>
01年 アメリカ映画 124分

監督・製作総指揮:アルバート・ヒューズ
         アレン・ヒューズ
出演:ジョニー・デップ(フレッド・アバーライン警部)
   ヘザー・グレアム(メアリ・ケリー)
   イアン・ホルム(ウィリアム・ガル卿)
   ロビー・コルトレーン(ピーター・ゴットレイ)
   イアン・リチャードソン(チャールズ・ウォーレン卿)
   ジェイソン・フレミング(ネトレイ)
   カトリン・カートリッジ(ダーク・アニー・チャップマン)
   テレンス・ハーヴェイ(ベン・キドニー)
   スーザン・リンチ(リズ・ストライド)
   レスリー・シャープ(ケイト・エドウズ)

(あらすじ)
18世紀のロンドンで、娼婦の連続殺人事件が発生。そのあまりに残忍な手口に市民は震撼する。「切り裂きジャック」と呼ばれるこの惨殺犯に、「事件の様子を夢で見る事が出来る」という特殊能力を持つ警部が挑む。

(感想)
「切り裂きジャック」について考察されたノンフィクション本を読んだ事がある為、事件のだいたいの事は映画を見る前から知っていました。なので、事件の最後の犠牲者となっていて、そしてもっとも残忍な殺され方をされた娼婦(正確には、殺された後の死体の損壊が酷かったのですが)の名前が、多分、ヒロインを演じているはずであろう、ヘザー・グラハムの役名と同じだった事にまず驚かされました。
「なるへそ、ヒロインをラストで惨殺して、観客の恐怖心と嫌悪感を煽ろうという手法か」とか思いながら見てたんですが、主人公のデップがヘザーに恋心を抱いて行くという展開になってくると、結末が分かってるだけに、だんだんと見るのが辛くなってきてしまいました。思わず、「これが運命というやつなのか」なんて事を考えてしまいました。

しかし!この映画、数々ある「切り裂きジャック犯人説」を色々と取り込み、混ぜ合わせた脚本の映画だったんですね。
ジャックの正体が、ただの狂人どころの話ではなく、イギリス王室が絡んで来るという、何ともスケールのでかい話になってるのも、実際にこういう説は出てるものですし、最後の死体が実は別人のものだったという点もそうです。

この映画オリジナルな点として、ジョニー・デップ演じる主人公の存在があります。しかも「犯行の状況が見える」という特殊な能力を持つ警部という設定のキャラクターです。ただ、この能力が事件解決に何の役にも立ってないのはどうした事でしょう。まあ、事件を解決してしまうと史実が変わってしまうので仕方がないとも言えますが。
でも、映画的には、こういう超能力を持った主人公がいて、そして事件を捜査していくという形になってると確かに面白くはあるんですけどね。

それにしても、主人公を演じたジョニー・デップはこういう映画が似合いますね。『スリーピー・ホロウ』もやや似たところのある映画でしたが、あの映画でもやっぱりいい味を出してました。ファンタジーが入った話が似合う人なのかもしれないですね(雰囲気もそんな感じだし)。この映画も、猟奇殺人物というより、ダークファンタジーみたいな雰囲気がありますからね。

それにしても、『フロム・ヘル』って、いいタイトルですね。「地獄から」ですからね。何だか、この「切り裂きジャック事件」を扱った映画のタイトルに相応しいです。
実際の事件で、ジャックが警視庁に送ったと言われる手紙にも書いてあった一文なんですが(この映画にも出てくる)、この切り裂きジャックという殺人鬼自体が、まさに地獄の使者みたいな感じですからね。