ファンハウス 惨劇の館
<THE FUNHOUSE>
81年 アメリカ映画 97分

監督・トビー・フーパー
特殊メイク:リック・ベイカー
出演:エリザベス・ベリッジ(エイミー)
   クーパー・ハッカビー(バズ)
   ラルゴ・ウッドラフ(リズ)
   マイルズ・チャピン(リッチー)
   ショーン・カーソン(ジョーイ)

(あらすじ)
カーニバルに遊びに来たティーンエイジャーのエイミーとバズ、リッチー、リズの4人は、お化け屋敷“ファンハウス”の中に忍び込み、そこで一晩を過ごそうと企む。
夜中、4人の潜む部屋の下から声が聞こえてきた。隙間から覗き見ると、何と下の部屋ではフランケンのマスクを被った男が、占い師のおばちゃんを絞め殺しているのだ。
逃げようとする4人だが、外への出入り口はカギが掛かっていて出る事が出来ず、仕方なく元の部屋に戻るのだった。

下の部屋では、ファンハウスの入り口で呼び込みをやっていた男が、例のマスクの男を叱り付けていた。どうやら、マスクの男は、この呼び込みの息子らしい。だが、マスクを剥がされ、露となったその息子の顔は、もはや人の顔の原型をとどめていない、異形の化け物の顔だった。
驚いたリッチーがうっかりライターを下に落っことしてしまった。親父は天井で何者かが一部始終を見ていた事に気付き、奇形の息子をけしかける。
お化け屋敷を舞台に、若者と奇形の怪物の命をかけた追っかけっこが始まるのだった。

(感想)
若者が殺人鬼に襲われる映画ですが、その殺人鬼がフリークスという、何とも危ない映画です。まあ、フリークスと言っても特殊メイクですけどね(しかも、奇形と言うより、ほぼ怪物)。

映画の前半は、若者達がカーニバルを楽しむ姿が延々と描かれていきます。これがまた、結構長い時間をかけてるんですよね。劇中の若者達は楽しそうですが、見てる方はあんまり楽しくないです(笑)。
多分本物と思われる奇形の牛とか、マジックショー、ストリップショーなどが映され、観客も一緒にカーニバルを楽しんでもらう、的な演出になってるみたいですけど、私はホラー映画を見たいのであって、カーニバルを見たいわけではないですからね。

映画の半分はそんな感じの展開で、何だか、若者達のとある一日を見てるようです。
そして、そんなごく日常的な展開に脳が慣れきった頃、ついにストーリーはホラーっぽい方向に進み始めます。
お化け屋敷に忍び込んで夜を明かそうとした若者達が、そこで殺人現場を目撃してしまうんです。
この、“お化け屋敷に忍び込む”というのは、普通に考えたら非日常的ですが、この若者達にとっては特に突飛な行動という感じはしません。この時点ではまだ“日常的”な展開の範囲内です。
ですが、殺人現場を目撃する所で一気に非日常の世界へと突入していく事となります。普通のホラー映画では「ここからいつもと違う、“ホラーの世界”に入ったんだな」なんてまず考える事はありません。最初の殺人が早い段階から起こったり(中にはオープニングが殺人シーンだったり)、殺人鬼そのものが早い段階から出て来たりする事が多いですからね。
ですがこの映画は、前半をたっぷり使って何も起こらない日常世界を描いてきたせいか、いざホラー的な展開になった際に、まるで現実の世界で怖いことが起こっているのを見ているような、妙な怖さがあるんですよね。
しかも、マスクを被ったその人殺しをした男が、いざマスクを取ってみたら、それはまた、とんでもない素顔が出てくるわけですよ。人間以外のDNAが入ってるとしか思えないような、完璧な化け物顔です。でも、そんな化け物にもリアリティが感じられてしまうんですよね。多分、舞台がいかがわしい匂いプンプンのカーニバルのお化け屋敷だというのも効いてると思うんですが、この奇形の殺人鬼が、本当にいるような気になってしまうんです。後半始まる、お化け屋敷を舞台とした殺人鬼と若者の追いかけっこも、実際に自分もこの奇形に追いかけられてるような気になってしまい、見てて怖いです。
これは、化け物・妖怪系の都市伝説の話を聞いて感じる怖さと似てるような気がしますね。「カーニバルの殺人鬼」というタイトルの都市伝説を映画にしてる、そんな雰囲気ですね。
あと、このお化け屋敷の内部が、照明がついてないせいで、ほとんど暗闇状態だというのも怖さに拍車をかけてくれてます。この暗さ、一歩間違うと「画面が見づらいだけ」という印象を出してしまいかねないんですが、暗闇がそのまま、圧迫感のようなものを伴った恐怖として感じられるんです。

最近パッとしないトビー・フーパーですが、この頃は勢いがあったんだなぁ、と思ってしまいますね。
この映画の奇形殺人鬼とその父親とか、何だかレザーフェイス一家を思い出させるような雰囲気がありましたね。そう言えば、『悪魔の沼』も狂ったオヤジが人を殺す映画でしたね。この頃は狂人ばっかり描いてたんですなぁ(笑)。