監督・共同脚本・音楽:ジョン・カーペンター
出演:ナターシャ・ヘンストリッジ(メラニー・バラード)
アイス・キューブ(ジェームズ“デゾレーション”ウィリアムズ)
ジェイソン・ステイサム(ジェリコ)
クレア・デュバル(バシラ)
リチャード・セトロン(ビッグ・ダディ・マーズ)
ジョアンナ・キャシディ(ウィットロック)
パム・グリアー(ヘレナ・ブラドック)
リアム・ウェイト(デスカンソ)
(感想)
SF・ホラーの鬼才、ジョン・カーペンター監督が放つ、火星を舞台とした超絶バトルアクションホラーの傑作です。
「火星が舞台」と聞くと、SFX満載な映画を予想してしまいますが、そこはカーペンター監督作。のっけから、模型にしか見えない火星の地表と、模型にしか見えない列車が走るシーンが出て来ます。この、CG全盛の時代に、こんな見るからに模型な特撮を出してくるとは、見てる方が怖くなってしまいます(笑)。まあこの映画、製作資金の少ないB級映画なんで、仕方がないんですけどね。
でも、特撮の出来と映画の面白さは比例するわけではありません。確かに、大掛かりなセットやCGを駆使した方が迫力は出ますし、金の掛かった特撮とかはあるに越した事はないんですが、これは、特撮よりも、監督の力量と演出力で勝負!といった感じの映画ですからね。
まず、映画全体で、ダレるシーンというのが全く無いところが凄いです。序盤は主に、キャラクター紹介的な展開なんですが、「何かが起こった火星の町の探索」と合わせて描かれます。これがまた、とってもスリリングなんです。何かが出て来そうな緊張感が画面から強烈に発せられてます。
この辺の、話の展開とか主人公達の衣装や銃の構え方など、かなり『バイオハザード(ゲーム版)』を彷彿とさせられます。二回目以降に見た際も、どういう展開になるのか分かっていても、ついハラハラしてしまうほどです。
そして、登場キャラクターたちがどういう人物なのかも、このサスペンス描写を見ながら、同時に理解出来るというまさに無駄の無い感じが素晴らしい。
そして中盤、敵の火星人軍団が襲って来てからはアクションがメインの展開になるんですが、このアクション描写のレベルの高さに驚かされます。デゾレーションことアイス・キューブがマシンガンを両手で持って突撃するシーンから始まる集団戦闘の迫力の凄い事!しかも、アップや短いカット割などによるごまかしをしていない、見事な乱戦描写には興奮を禁じ得ないです。
さらに、ホラー映画の最大の見せ場、残酷シーンも奮っています。火星人の必殺武器に、「やたら切れ味のいい円盤型飛び道具」があり、これに当たると、腕だろうが頭だろうが、スパッ!と切り落とされてしまいます。序盤でキャラクターをしっかり描いて来た登場人物の首がスッパリ落とされる様は、まさに戦慄ものです。
主演のナターシャ・ヘンストリッジは、モデル出身の金髪美人という、こんな火星人軍団との血みどろな戦いを描いた映画には合わなそうな感じですが、意外や意外、かなりアクションの才能のある人だったんですね。
このところ、格闘アクション“らしきもの”を見せてる女優をたまに見かけるんですが、そんなへっぽこアクションとは格の違う、見事なアクションを披露してくれました。
ラストには火星人との一騎打ちシーンがあるんですが、この手のヒロイン・アクションでよく見る、「この敵、どう見ても手を抜いて勝たせてあげてるだろう」感が全く無いんです。本気の戦いで勝ってるように見えるんですから、凄いです。
さらに驚いた事に、ナターシャがこの映画に参加する事が決まったのが、ある事情で、クランクインの直前になってしまい、他のキャストは受けていた、アクションや格闘の訓練をほとんど受けずに撮影に入ったらしいんです。それであそこまでやれるんですから、これは凄いことです。
本人の才能もさることながら、スタント・コーディネーターのジェフ・イマダの振り付けのうまさもあるでしょうね。この映画で出る格闘シーン、一対一の格闘戦から、集団戦の中でちょこっと見られる格闘戦に至るまで、全てが見応えがあるんです。映画的な見栄え感もあり、リアル感もありますからね。
アクションメインの映画でも、ここまでレベルの高いアクションを見せられる映画はそう無いでしょうね(しかも、アクション俳優が出てないのに)。
この映画、かなり“作り込まれてる”感のある映画なので、何度見ても面白いです。
ただ、個人的に主演のアイス・キューブの地味さがどうにも気になってしょうがなかったんですが、DVDの音声解説で、ナターシャ・ヘンストリッジがアイスの事を「テディベアみたい」と言ってるのを聞いてハッとしました。“確かに似てる!”と(笑)。そう、この映画は「テディベアが火星人と戦う映画」という見方も出来るんです(何だそりゃ・笑)。
ずっとアイスは自分的にはミスキャストだと思ってたんですが、これを聞いて以来、考えが変わりました。変な柄のズボンを穿いてるところも、とってもラブリィに思えてしまいます。