殺戮職人芝刈男
<THE GREENSKEEPER>
02年 アメリカ映画 98分

監督・製作・脚本:ケビン・グリーン
出演:アレロン・ルジェロ(アレン)
   トーマス・メルディス(オーティス)
   ブルース・タイラー(ジョン・アンダーソン)
   メリッサ・ポンジオ(エレーナ)
   アリソン・カルプ(メアリー・キャサリン)
   クリスティ・タイラー(メアリー・ジェーン)
   ステファニー・ビンガム(メアリー・ベス)
   スティーブ・リックマン(チャス)
   マイケル・ショート(チェット)
   ジャミー・レネル(チャンプ)
   パトリック・ドノバン(スチュー)
   ジョン・ジュディ(コックス巡査)
   ロン・レスター(スタイルズ)
   ジョン・ロッカー(ジョージ)

(あらすじ)
脚本家志望のダメ男アレンは、高級ゴルフクラブのオーナーの息子だ。だが、本当の父親のジョージは事故で死亡し、ジョージの兄のジョンが母と再婚して、現在のアレンの父となっているのだった。
アレンは、自立した生活を送っており、ゴルフコースの整備をするグリーンキーパーとして働きながら日銭を稼ぐ日々を送っていた。仕事仲間のベテラングリーンキーパーのオーティスとの仲も良く、クラブのレストランの従業員のエレーナに惚れだしたりといった、一応順調で穏やかな毎日だった。だが、そんなアレンを、両親の財産目当てで同棲している恋人のメアリー・キャサリンは、ことある毎に罵ってくるのだった。
そして、最近、妙な不安感をかき立てられる、おかしな夢をみるようになっていた。

アレンの25歳の誕生日の夜。メアリー・キャサリンとその悪友達の頼みで、深夜のゴルフコースに忍び込んでパーティをする事となった。
酒、クスリ、SEXと3拍子揃ったパーティに背を向け、アレンは誘いにOKしてくれたエレーナの到着を待っていた。だが、エレーナがプール監視員の変態男スチューとデキてるという噂を耳にすると、ガッカリして家に帰ってしまうのだった。
だが、この場には一人招かれざる客が来ていた。それは、グリーンキーパーの作業着を着込んだ謎の殺人鬼、殺戮職人芝刈男だ!殺戮職人芝刈男は、ゴルフ場の整備器具等を用いて、頭の悪そうな若者共を次々惨殺していく!果たして、この殺戮職人芝刈男の凶行から生き延びられる人はいるのか!?そして、殺戮職人芝刈男の目的は何なのか!?おそるべし!殺戮職人芝刈男!!

(感想)
ゴルフ場を舞台としたスラッシャー映画です。どうも、野球場を舞台とした『ザ・キャッチャー』、スキー場を舞台とした『ジェイソンZ』とは、何かしら繋がりがありそうな気がしますね。もしかしたら、製作会社が一緒だったりするんじゃないだろうか。

さて、こんなタイトルの映画がホラー映画として見るべきところのある、面白い映画になってるなんて事はまずありません。なので、「いったい、どんなにくだらない映画なんだろう。『ザ・キャッチャー』とどっちがつまらないだろう」といった類いの興味を持ってこの映画を見てみました。
『ザ・キャッチャー』は、本当にただつまらないだけの困った映画でしたが、こちらはいい意味でくだらない映画で、そこそこ楽しむ事が出来ました。殺人鬼の殺戮職人芝刈男が出てくるのは中盤過ぎ頃とかなり遅いんですが、そこにいきつくまでのストーリー部分が割りと面白かったというのは意外でしたね。
登場人物のほとんどがアホとかムカつく奴とかばっかりなんですけど、どこか、妙な味がある連中でもあるんですよね。あまりに典型的に嫌みな女とか、腰を振るのが大好きなテニスコーチとか、何かにつけて「あれはゲイだ」という理論を意味も無く展開してくる男だとか、オカマのおまわりさんとか一癖も二癖もある連中ばかりです。そして肝心の主人公は、単なる「人の良い若者」といった感じで、主人公としての個性がまるでありません。ですが、「いい奴なんだろうな」というのはよく伝わってくるナイスガイでもあります。
中盤まではこんな連中による会話シーンばっかり出てくるんですが、何故か飽きずに見てられるんですよね。キャラクターの個性にしろ会話のユーモア感覚にしろ、とりたてて「良い」という事はないんですけど、「悪い」「つまらない」という事もないという。そんな、「良い」でも「悪い」でもない、マッタリとした感覚が妙に心地良いと言うのか・・・。
ともかく、これまでのスラッシャーホラーとは全然違う雰囲気ではありましたね。

で、終盤からはいよいよ殺戮職人芝刈男が現れて若者を惨殺し始めるんですが、枝切りバサミだとか釘だとかを使用した、結構痛々しい殺戮をしてくれるんです。
それ以外にも、ゴルフ場で使う器具(整備用の器具とか)という珍しい物を凶器に使用してきます。ただ、珍しいのはいいんですが、その器具がどれもこれも普段目にしないものなので、「どこでどうやって使う道具なのか」というのも見ててよく分からないんですよね。こういう、謎の道具が凶器で使われてる様というのは、見ててあんまり痛々しさが伝わらないものなんですね。例えば、チェーンソーとかを人に対して使った場合、「肉を切り裂き骨を断つ」という効果が出る事が分かり、その痛さもなんとなく想像出来るんですが、どこでどう使うのかも分からない凶器が使われる様を見ても、「肉体にどんな痛みを与えているか」が分からないんですよね。もしこれら謎の道具の知識があるのなら、殺戮シーンにもっと痛々しさが感じられたかもしれないですね。
そして、それらで攻撃を受けた人は、“見るからに血糊”といった感じの赤い液体をぴゅーぴゅーと噴き出して絶命していく事となります。と、痛々しいのと同時にどこか貧乏臭い感じが漂ってる殺戮シーンなんですが(笑)、この映画全体に漂うマッタリ感にはマッチしてて、これがまた、いい意味での「くだらない感」を醸し出してくれてましたね。

また、ストーリー面に一つ工夫が凝らされていて、『ザ・キャッチャー』のように、「観客に犯人を誤認させる」という技が使われてます。劇中、「明らかにコイツが正体なんじゃねぇか」と思わせる人物が二人も出てくるんですが、結局どっちでもなかったりするんですよね。
それも、その容疑者が実は殺人鬼の正体ではなかった、というのが明かされるシーンの見せ方が、見ている人に「あれ、コイツだと思ってたのに違うのか」と不思議に思わせるような見せ方にちゃんとなってるんですよね。たまたま何かの間違いで容疑者に見えてたわけではなかったんです(このレベルの映画だとそういう事も起こりそうなんで)。

というわけで、くだらなくも楽しい映画でした。でも、「面白い映画」では決して無いので、人には勧めません(笑)。
ちなみに、時々、この「くだらなさ感」を確信犯的に演出して見せてるシーンなんてのも出て来たりします。きっと「どうせ、こんな映画を見ようとしてる奴らなんて、“どんなにくだらない映画なのか”というのに興味があるだけなんだろう」とか思って作った映画なんでしょうね。まんまと見抜かれたようで、ちょっと悔しい。
あまつさえ、劇中には、登場人物達が「くだらない映画を見ている」というシーンが出て来たりしますからね。
その劇中映画の場面もちょっと出てくるんですが、これが本当にくだらなそうなんですよね。実際にある映画じゃなくて、この『殺戮職人芝刈男』の1シーン用に作られた映画で、“ミルクマン”という殺人鬼が、美女にミルクをかけながら殺すという内容です。
で、こんな恐ろしくつまらなそうな映画を、映画の登場人物が「くだらん」とか言いながら見てるんですが、その場面をまた私が「くだらねえ」とか言いながら見てるわけなんですよね。いやぁ、何とも不思議な感覚でしたねぇ。