監督:清水崇
製作:サム・ライミ 他
音楽:クリストファー・ヤング
出演:アンバー・タンブリン(オーブリー)
アリエル・ケベル(アリソン)
ジェニファー・ビールス(トリッシュ)
エディソン・チャン(イーソン)
宇野実彩子(ミユキ)
サラ・ローマー(レイシー)
サラ・ミシェル・ゲラー(カレン)
藤貴子(伽椰子)
一方、例の呪いの家に、女子高生3人組が興味本位で侵入し、まんまと呪われる事態が発生。
一方、アメリカのあるアパートで、謎の呪いが蔓延し出すのだった。
(感想)
劇場公開時、考えられる限り最悪の吹き替え版のみの上映だった為に、やむなくレンタル待ちをしたこの映画。ですが、オープニングを見て、思わず「映画館で見なくて良かった・・・」と思ってしまいました。
もちろん、怖いからではありません。と言うか、多分、監督的には怖いシーンとして撮ったんだと思うんですけど、人物の動きとかシーンの構図やらが、何か、コメディ映画のワンシーンにしか見えないんですよね。で、「ああ、これはお笑い芸人で固めた吹き替えによる公開という処置になったのもしょうがない映画だったんだな」と思ったんですが、結局、変だったのは冒頭だけで、後はいつも通りの『呪怨』になっていたんです。
せっかく、映画館で見られなかった事にも納得いきかけてたのに、これでまた映画会社の嫌がらせに対する悔しい思いをぶり返させるハメになってしまったじゃないですか。まあ、映画が面白かったわけなんだから良いっちゃ良い事なんですけどね。
さて。今回、基本的には、やってる事は今までと同じなんですが、新機軸として「呪いが海を越える」という、革新的な面をぶっこんできました。こういう大風呂敷は面白くていいですね。まさにファンタジー的展開ですよ。言ってみれば、ジェイソンが宇宙に進出するのと同じようなものですからね。
大風呂敷と言えば、ビデオ版『2』でも、「伽椰子大増殖!」というファンタスティックな展開を出してきてましたが、あっちは「ありえない度」が高すぎてちょっとついていけなかったんですよね。でも、今回はそういう、“ホラー映画的にありえない”というのが感じられず、素直に受け入れ、楽しむ事が出来ました。
ところで、伽椰子は一応、お化けの類だと思うんですけど、あの殺気漲る様は、もう完全にモンスターですね。あるいは、スーパー怨霊か(何だそれは・笑)。
標的になった人物にどこまでもついていき、霊体なのを活かした、物理無視の攻撃をしてくる所は実に頼もしいです。実体のある殺人鬼やら怪物やらと違って、退治出来ない所も素敵ですが、攻撃の時に、驚くような場所から現れるところも視覚的に面白くていいです。「そろそろ伽椰子が出て来そうだな」というシーンになったら、「今度はどこから出てくるんだろう!」というのが楽しみでワクワクしてきます。
そんな伽椰子に比べると、相方の俊雄君は「ただ相手を驚かせるだけ」なんで、あまり面白味が無いんですよね。時々猫の声で鳴くという小技を使ってきますけど、「だからなんだよ」という感じですし。
ただ、どちらにしても、造形が、CGやら凝った特殊メイクやらを使っていない、「ただの白塗り」というだけで出てきてる所はいいですよね。今の時代ではむしろこういう造形のモンスターは新鮮な感じすらありますし。
あと、このカヤ&トシ以外にも、面白い妖怪が出ていたのも楽しいポイントでした。いや、実際は妖怪という設定で出てきてるわけではないんですけど、「牛乳を飲んでは戻し、飲んでは戻し」を繰り返す“牛乳女”とか、「いないいないばぁ」を延々繰り返す“いないいないばぁジジイ”とか、妖怪みたいなニックネームをつけたくなるような面白キャラが、本筋に全然絡まない形で登場してるというのは、何か賑やかでいいです。
と言うわけで、最初ちょっと躓いたものの、中々に楽しい映画でした。
ただ、ある気になる点があって、前作ほどには楽しめませんでした。その気になる点とは、もちろん「全然怖くない」という点ではなく(そもそも、私はもはやホラー映画に“恐怖”を期待してないですし・笑)、また例によって、時間軸をバラバラにして複数のエピソードを語っていくという手法を使ってきてるんですけど、これって、ほんと、何の意味があるのかさっぱり分からないんですよね。映画を面白くする役には全く立ってないとしか思えないんですけど、必ずこういう作りにしてくるんですよねぇ。
前作『THE JUON』は唯一、ストーリーに面白味が出せていたと思えたんですが、今回、また「ただ分かりづらくなってるだけだよ」と思ってしまいました。
一応、時間をバラす事で、最後にちょっとした驚きが得られるようになってるんですが、これも、「ふぅん。」と思うだけでしたからね。で、そこでネタばらしをされるまで、このエピソードの大部分が「意味不明過ぎてつまらない」という状態になってしまってるんですよね。これが、意味が分からない事で不安がかきたてられる、というふうに感じられればよかったんですけどね。
多分、時間軸をバラさないで、ストーリーを順番通りに見せてくれてたら、このエピソードも「これからどうなっていくんだろう!」と思えたんじゃないかなという気がするんですよね。次に『呪怨』シリーズを作る機会があったら、変な小細工はやめて、もっとストレートに撮ってほしいです。