ハロウィン
<JOHN CARPENTER'S HALLOWEEN>
78年 アメリカ映画 90分

監督・脚本・音楽:ジョン・カーペンター
製作・脚本:デブラ・ヒル
撮影:ディーン・カンディ
出演:ジェイミー・リー・カーティス(ローリー・ストロード)
   ドナルド・プレザンス(サム・ルーミス医師)
   ナンシー・キーズ(アニー・ブラケット)
   チャールズ・サイファーズ(リー・ブラケット保安官)
   P・J・ソールズ(リンダ・ヴァン・ダー・クロック)
   トニー・モラン(マイケル・マイヤーズ)

(ストーリー)
マイヤーズ家で、ハロウィンの晩、8歳ぐらいの長男マイケルが、姉を包丁で刺し殺すという、痛ましい事件が起こった。
精神病院に入れられたマイケルだが、それから15年後のハロウィンの前日の晩、脱走してしまうのだった。
マイケルの担当だったルーミス医師は、マイケルを追って、故郷の町へやってきた。マイケルを診察し、彼が生まれながらのサイコである事を見抜いていたルーミスは、きっとここで大量殺人をおっ始めるに違いないと予想。
その読みは見事に当たり、地元の若者数人が血祭りにあげられてしまうのだった。

(感想)
『ハロウィン』シリーズ一作目というだけでなく、「殺人鬼が若者を次々殺していく」というスラッシャー映画の元祖でもあるという、名作クラシックホラーです。
ただ、この後、数十年にも渡って似たような映画が次々と作られ、それら亜流を散々見てきた今となっては、正直、さほど面白味の無い映画とも思えてしまいます。何しろ、他で散々パクられたおかげで、「この映画ならでは」という点がほとんど無くなってしまってましたからね。ただ、亜流には決してマネ出来ない、「元祖ならではの風格」というのは感じられました。
他所が表面の部分部分をパクった箇所が、この一本に全て詰まってるようで、やはり、「完成度の高さ」というのが窺えるんですよね。ただ、後の亜流が付け足していった面も無いわけなんで、やっぱり面白味はちょっと欠けてしまうかな、という気もするんですが、まあ、それはしょうがない事ですからね。「この映画の欠点」というわけではないですし。
それに、「もし、今まで見てきたスラッシャー映画を全て忘れて、公開当時にこの映画を見た人達同様、今回がこの手の映画を初めて見たのだとしたら」と想像すると、やっぱり、相当怖い映画じゃないかと思うんですよね。
そう言えば、これは他の亜流には無かった点かもしれないんですが、演出が凄く落ち着いた感じで、全体的に物静かな印象なんです。「静の恐怖」といった感じでしょうか。殺人鬼の見せ方も、どちらかと言うと、ゴーストっぽい雰囲気で、「ゾッとする怖さ」というのがあるんです。
一応、設定は生身の人間のはずなんですが、一瞬で姿を消してみせたり、刺しても撃っても死なない、不死身の肉体を持っていたりという、超常的な要素がある辺りも、殺人鬼よりも、実体の無い何かに襲われてるような怖さと不気味さがあります。
そして、監督カーペンター自らが手がけたスコアも、かなり不気味さを煽ってきてくれました。多分、3、4種類ぐらいしか曲が無かったと思うんですけど、この少ない音楽の使い回しだけで90分持たせてしまうのは凄いです。

殺された人数も少なければ、殺害方法も単調。さらに、殺す瞬間は直接描写してこないんで、血もほとんど出ません。「本当にホラーか」と思ってしまうぐらいですが、逆に、野蛮な場面が無いせいで、品格があるように感じられるんですよね。これが、この映画の「クラシック・ホラー」という面に大変マッチしていて、何だか、名作映画を見てるような気にすらなってきます。とても、後に『遊星からの物体X』というグチャグチャ映画を撮る男と同じ人の仕事とは思えないぐらいのスマートさです。
そう言えば、子供達が『遊星よりの物体X』を見てるシーンなんてのが出てきましたね。「後にこれのリメイクを撮る事になるのか」と思うと、何か、運命的なものを感じてしまいます。