監督:リドリー・スコット
原作:トマス・ハリス
音楽:ハンス・ジマー
出演:アンソニー・ホプキンス(ハンニバル・レクター博士)
ジュリアン・ムーア(クラリス・スターリング捜査官)
ゲイリー・オールドマン(メイスン・バージャー)
レイ・リオッタ(ポール・クレンドラ)
ジャンカルロ・ジャンニーニ(リナルド・パッツィ刑事)
フランチェスカ・ネリ(アレグラ・パッツィ)
フランキー・フェイソン(バーニー)
イヴァノ・マレスコッティ(カルロ)
一方、イタリアのフィレンツェに潜伏していたレクターは、フェル博士と名前を変え、図書館の司書の座につこうとしていた。
地元の刑事リナルドは、フェル博士がFBIの指名手配リストに載っていたハンニバル・レクターと同一人物である事を疑っていた。リナルドは、ネット上でレクターに懸賞金がかけられているのを目にし、レクターを逮捕するのではなく、懸賞金をかけている組織に引き渡して金を頂こうと企むのだった。
その、レクターに懸賞金をかけている人物とは、かつてレクターにそそのかされて自分の顔の皮を剥いだという、謎の大富豪メイスンだった。メイスンはレクターを殺す方法として、凶暴な殺人猪軍団を育てるという凝った手段を講じていた。
(感想)
アンソニー・ホプキンス演じるレクターシリーズの第2弾です。前作はジョディ演じるクラリスが主役でしたが、今回はレクターが主役のお話ですね。何しろ、タイトルからして『ハンニバル』なんて、人名を持ってきてますからね。つまり『ファースト・ブラッド』『レイダース』が2作目で主人公の名前がタイトルになったのと同じような流れなわけです。もし次回作があったら『ハンニバル 怒りの聖戦』とかそんなタイトルになったに違いない。
ただ、その主役のレクターが登場するのが、映画開始から30分過ぎではあるんですが。
しかし、この映画は、ジャンル的にはサイコ・サスペンスになるんでしょうかね。「殺人事件の捜査」というストーリーじゃないので、サスペンスという雰囲気が無いですけど。
そもそもこの映画、一本芯となるストーリーが無いですよね。主人公の目的も不明ですし、「どうなったらエンディングになるのか」がよく分からないです。なので、ちょっと変わった感じの映画ではありますよね。前作に比べて評判が悪いのも、この辺が原因の一つのような気がします。まあ、それが「悪い」という事ではないですけどね。これは“そういう作りの映画”なんですから。
それとも、映画の構成とかストーリー以前に、やっぱりラストのアレが原因でみんな引いてるだけかもしれないですかね。似たようなのは『魔宮の伝説』でも出てきましたけど、あっちはシャーベットでしたからね。まあ、調理法が問題なわけじゃないですけど、でも、目の前で焼き肉式にジュージューするのは、何か匂ってきそうなおぞましさがありましたからねぇ。
ところで、『人喰族』の主演俳優が、あの映画における“チ○○切断シーン”で、「どういう演技をしたらいいか想像もつかなかった」と言っていましたが、レイ・リオッタはこのシーンでは、何を心がけて演技したんでしょうね(おサルさんは食卓に着いた時はもう頭だけだったんでこの場合の参考にならないですし)。
3作あるレクターシリーズの中で、レクターが塀の外を自由にうろつきまわってるのはこの『ハンニバル』だけなんですよね。まさに「ここからが本領発揮」というわけで、前作では使わなかった技を次々見せてくれました。おなじみの「かみつき」も、VTR内の映像で見せてくれましたが、他にも「必殺・キ○タ○潰し」や、番犬もおとなしくなる「脅威の眼光」、レクターを殺して食べる為に訓練された殺人猪軍団をも寄せ付けない「レクター・バリヤー」などなど。ちなみに、一発目の技は実際はタマを潰したんじゃなくて太腿の付け根を切ったみたいなんですが、どっちがイヤだろう。レクターが実際やった手口の方があまり痛みもなく死ねたみたいなんで、やっぱりこっちの方がいいのか。
こういった脅威の技を駆使して追っ手を撃退していくみたいな低俗な映画だったら私も大喜びだったんですけど、残念ながら、「レクターとクラリスの関係」がストーリーの根底にくるような格調高い雰囲気を漂わす感じの映画になってしまっていて、私としては少々取っつきにくい映画という印象でした。
レクターのキャラクターとか言動とかは見てて面白いんですけど、一方のクラリスの方は、2作見てもいまいちキャラクターに面白さが見出せないんですよね。単なる優秀な女性FBI捜査官だけでしかないみたいな。『レッドドラゴン』のグレアムの方は初見で面白いキャラクターだと思えるような個性が感じられたんですけど、こっちの方はレクターからそれほど興味を持ってもらえなかったのか、1作目にしか出してもらえませんでした(後のドラマシリーズの方ではメインキャラとして出る事になりましたけど)。
なので、クラリスと全く絡まないレクター映画の続きというのを見てみたかったですね(前日譚とかじゃなくて)。『羊たちの沈黙』まではまだサイコサスペンスの手強い犯人レベルでしたけど、今回からアンチヒーローだとか主役級ヴィランみたいな位置付けまで来た感がありましたし、「牢屋」とか「クラリス」といった枷が無くなったらどこまで暴れられるのか見てみたかったです。原作だとラストでクラリスと一緒に逃亡するらしいんですが、映画版ではきちんと別れたんで、そういうオリジナルストーリーの続編というのを夢見てしまいますねぇ。