正体不明 THEM ゼム
<ILS>
06年 フランス・ルーマニア合作 77分

監督・脚本:ダヴィド・モロー
      ザヴィエ・パリュ
出演:オリビア・ボナミー(クレモンティーヌ)
   ミヒャエル・コーエン(リュカ)

(ストーリー)
森の中の豪邸に住んでいる、学校教師のクレムと、作家のリュカのカップルは、暇があればイチャイチャしている、熱々な二人だった。
だがある夜、不審な物音に目を覚ました二人は、家の周囲で人の気配がする事に気付く。
そうこうするうちに、家中の電気が消え、電話も通じなくなるという事態になる。
ここから、正体不明の何者かの襲撃による、戦慄の一夜が始まるのだった。

(感想)
フランス産のスリラー映画で、夜の豪邸にて、何者かの襲撃にさらされるカップルの恐怖を描いています。
で、その肝心の「何者か」の正体ですが、これはネタバレすると面白さが半減する映画だと思うので、未見の方の為に、ここで書くわけにはいきません。
最後は正体が明かされるわけですが、それまでの「一体、何が襲ってきているのか」が分からない時の緊張感と怖さは中々のものでした。
まず、相手が“人間なのかどうか”すら不明なんですよね。中盤ぐらいでシルエットがようやく見えるんですが、それを見ると、確かに姿は人間のものでした。でも、襲撃をする時に、鳥のような獣のような、何だか分からない声だか鳴き声みたいなのを上げてくるんです。これは不気味でしたねぇ。さらに、数も一体なのか複数なのかも当初はハッキリしませんし。
で、この手の輩は「正体不明の時が華」というのがパターンで、正体が割れると怖さが半減するケースが多いんですが、今回は正体が分かった後も怖いんですよね。特に、「いったい、何者だったのか」がハッキリ示されるラストショットは、もしかしたら劇中で一番ゾッとしたシーンだったかもしれません。

一方、その正体不明の脅威にさらされる主人公カップルですが、これといった特徴の無い、「どこにでもいる、フランスの若いカップル」といった感じでした。ただ、序盤の、二人がイチャイチャするシーンは、結構ウンザリ来ましたね。こういう、熱々カップルがベタベタする様は、どの人種がやってるのを見てもウザそうですけど、特にフランス人のイチャイチャはイライラさせられますね。何か、気取ってるような感じがして。偏見ですけど、とりあえず「このクソッタレめ」という言葉を吐き出さずにはいられませんでした。
まあ、キャラクター自体がムカつく奴らというわけではないので「早く死ね!」とか思うような事はありませんでした。やっぱり、出来れば助かって欲しいと思いますし、逃げたりする際に手際の悪い所を見せられると「何やってんだよ!」とヤキモキしてしまいます。
で、舞台となる自宅の豪邸で攻防が繰り広げられるわけですが、自宅なのにも関わらず、こちらが有利なように思えないんですよね。こんな、「正体不明の何者かに襲撃される」というのは当然想定外なんで、パニックルーム的なものも無ければ、武器がおいてあるわけでもないんです。
そんな状況で「では、どこに逃げ隠れするか」「どこに行って、どうすれば助かりそうか」というのを考えながら見るのが中々楽しかったですね。敵側の描写が出てきたりして、「どんな奴が襲ってきているのか」が観客に示されていれば、それを考慮した想像が出来るんですけど、何しろ、「人間かどうか」すら分からないんですからね。この、「敵が完全に正体不明。ついでに言えば、目的も不明」というのが緊張感をかなり高めてくれていましたね。