監督・脚本:ダニエル・リアトウィック
デヴィッド・オクバーク
出演:エイミー・ウェバー(カイラ・ミッチェル)
ドニー・テラノヴァ(トム・ギャロウェイ)
ニコール・ペレリン(エリカ・タイラー)
ジョン・フェアリー(ゲーリー・ロビンス)
プロミス・レマルコ(ティナ)
リニー・クイグリー(精神科医ドロシー)
ジョナサン・ローン(カール監督)
集まった5人は、特に何事もなく一日目の夜を迎えた。だが、台所にコーラを取りに行った1人が、いきなり壁から飛び出して来た円盤型のカッターに腹を割かれて死亡する。さらに、家の玄関から窓という窓に至るまで、鉄板で覆われて外に出ることも出来なくなってしまう。全ては罠だったのだ!
(感想)
多分、『死霊のなんたら』系の映画みたいな、超低予算映画の一種なんだと思います。別荘に集まった若者が次々と殺されて行くというのもパターンですしね。
さらに、オープニングの曲が明らかに『サスペリア』のパクリだったりと、つまらなそうな映画の匂いがプンプン漂う序盤。いやぁ、まさかこんなに恐ろしくて凄い映画だったとは、この時点では想像もつかなかったですね。
あらすじに書いたように、家に閉じ込められた若者達が恐ろしい目に遭っていくんですが、その恐怖演出もなかなか奮っていますし、何と言っても登場人物の死に様がもう、この規模の映画では考えられないぐらいグロいです。それも、下品なグロさではなく、とにかく見ていて痛々しいんです。思わず目を背けたくなるぐらいに。
ただ、酷いダメージを受けてるはずなのに、その俳優の痛がり方が普通だったりという所はあるんですが、そんな欠点がささいな事に思えてくるぐらい、殺人シーンが凄いです。
オープニングの曲ではアルジェントの『サスペリア』をパクっていましたが、殺人シーンではどうもルチオ・フルチ辺りの映画の殺人シーンを参考にしてるような雰囲気があるんですよね。予算の関係か検閲の関係か、フルチ映画ほどのグロさは無いんですが、痛々しさでは引けをとってなかったですね。
ストーリーも結構凝っていて、家での惨劇と同時に、病院に大怪我を負ってかつぎ込まれた謎の女性のパートが時折映されます。カメラアングルは、ベッドで寝ているこの女性の目線になっていて、本人は一言も喋らないんですが、ベッドの脇で精神科医が話しているのを見ているんです。それによると、この女性の体中の傷や、特に酷い顔の傷は「自分でつけたもの」らしいという事が語られます。
果たして、この謎の女性のパートと、メインの家での惨劇がどう繋がっていくのか。
主人公はカイラという女で、精神安定剤を常用しています。精神病院ではないものの、心のケアが必要な人達のいる施設から来たんですが、この人だけは惨劇が起こる前から家で不思議な体験をしていたりします。
また、カイラは「怖い絵」を書くのが趣味で、残酷な人の死に様みたいな絵も中にはあるんですが、家で犠牲になった人は、その絵と似た殺され方をしているんです(似てるだけで、同じ構図とかではない)。ですが、家での惨劇のパートでは、「誰かが裏切り者=黒幕かもしれない」という映し方になっているので、「もしかしたらカイラが黒幕なのかも」と思わせるような展開になっているんです。
いやぁ、なかなか凝ったストーリーですね。この規模の映画としては、相当凝った脚本だと思います。その脚本を書いたのは、監督も兼ねてやっているダニエル・リアトウィックとデヴィッド・オクバークという2人の共同作業らしいです。何者なんでしょう。
ちなみに、原題の『コロボス』とは、ギリシャ語で“切り刻まれた体”という意味だそうです。邦題の『ホーンテッド・ハウス』より面白いタイトルですが、やっぱり『コロボス』では何の映画なのか分かりづらいですね。下手したら『コロンボ』の仲間かと思って、間違って借りてしまう人が出てしまいかねないです(それは無いか)。
(※ここからラストについての個人的な解釈です)
実は、病院に担ぎ込まれた謎の女性がカイラその人と判明。ですが、この病院の出来事が、カイラが家から脱出出来た後の話なのか、それとも、全部カイラの妄想、と言うか、頭の中の話なのか。最後までどっちともとれるような展開になっているので、目が離せませんでしたね。
そしてラストですが、ちょっと意味が分からなくなりそうな終わり方でした。多分、病院にかつぎ込まれたケガは、自宅において自分でやったものだったんでしょうね。あの別荘での出来事は、病院で夢を見ていたのか、その行為をしてる前後に脳内で見ていたものが映されていたものなのでしょう。だから、ティナやトム、エリカといった登場人物達は多分実在してないんでしょうね。
最後にまた新聞広告の掲載願いの電話をかけてましたが、これも多分、ただ電話をかけただけで、あの惨劇を実際に起こそうとしているという意味ではないんでしょうね。多分、病院にかつぎ込まれた原因の“自傷”行為をやる前にも同じような電話をしていたんじゃないかと思います。
なので、「狂った女が、自分の世界の妄想を見ながら、自分を傷つける」というお話しだったというわけなんでしょうね。
ところで、この「密室で人が次々死んで行き、登場人物の誰かが犯人かもしれない」という展開とか、「その惨劇が、ある精神異常者の脳内での出来事だった」という話だった点など、かなり昨年(03年)公開の某映画を思い出させる設定です。でも、この映画の製作はそれより前なんですよね(さすがに元ネタだったという事は無いでしょうけど)。