監督:ジョン・ハフ
原作・脚本:リチャード・マシスン
出演:ロディ・マクドウォール(ベン・フィッシャー)
パメラ・フランクリン(フローレンス・タナー)
クライヴ・レヴィル(ライオネル・バレット)
ゲイル・ハニカット(アン・バレット)
この屋敷の霊現象は何が原因なのかを突き止めようと、フローレンスは得意の交霊術を使い、霊との交信を試みる。そして、屋敷の持ち主だったエメリッヒ・ベラスコの息子である、ダニエル・ベラスコの霊が彷徨ってる事を知る。だが、その後フローレンスはまるで情緒不安定になったかのような言動を繰り返すようになり、ついにはどこからともなく現れた黒猫に襲われたりするのだった。
バレット博士は、ポルターガイスト現象に襲われたり、妻が何かに操られるかのようにフィッシャーを誘惑するのを見るにつけ、自慢の新兵器「建物内の異常エネルギー緩和装置(仮名)」を引っ張り出してくるのだった。
そして、フローレンスやバレットが一生懸命仕事をする一方、フィッシャーは、霊に攻撃されないよう、ひたすら大人しくしているのだった。
(感想)
数あるお化け屋敷映画の中でも、相当クールで面白い映画です。
「引っ越した屋敷に悪霊がいた」というタイプではなく、元々、すでに何人も死人や怪我人を出しているという恐ろしい場所である事が分かっていて、そしてその屋敷の謎を調査する、というストーリーです。オカルト方面の専門家である霊能力者や、科学方面の専門家である学者などがこの屋敷の謎に挑んで行くというストーリー展開は、先の気になる面白さがありますね。
ホラー映画ですが、「見てて怖いか」というと、特に怖いことはありません。この手の映画にありがちな「ゾッとするような恐怖」というのが無いんですよね。と言うのも、この屋敷に住み着いてる霊が中々アグレッシブな奴で、「ジワジワと怖がらせる」という手法を使ってこないんです。
もちろん、直接ゴーストが出てきて驚したりするような事はないんですが、かなり激しいポルターガイスト現象を起こして、シャンデリアを落としてきたり皿を飛ばして来たりという、ゾッとするどころの話じゃない危険な攻撃をしてくるんです。
これはこれで、当事者にとっては恐ろしい事態ですが、映画的には別に珍しい事ではありませんからね(笑)。油断している人の心を操っておかしな行動をさせたりもしますが、これで「人を襲う」とか「自分を傷つける」という事はしてきませんでした。
なので、確かに怖くはないんですが、この屋敷がいかに危険な場所かという事はよく伝わってきます。そこで、この屋敷をいかにサバイバルしながら霊現象の謎を解いていくのか、というストーリー展開が見てて実に面白いんですよね。霊と人間の対決を見てるかのようです。
この手の映画では、時々、霊の能力について疑問に思ってしまうという事があります。例えば、どの程度の攻撃が出来るのかとか、何を目的としているのかだとか。そこに辻褄や整合性が感じられなくて疑問点が噴出してしまう映画があったりする中、この映画の場合、霊の能力やその存在自体が“疑問点”ではなく“謎”として感じられる点がいいですね。「分からないから怖い」というように思えるわけです。
最終的にある程度解明される事となりますが、それでも謎の残る部分もあります。そういう部分が「考えても分かるわけない」という、適当に作られたんだろうな感がなく、ある程度は予想や想像が出来そうな感じがあるんですよね。ストーリーの細部にまで手が行き届いてるようでいいですね。
あと、登場人物の人選も、少ないながらも無駄が無くていいです。学者ライオネルの妻アンが、特に何の能力も持って無い、観客と等身大の普通の人であるという設定なのもいいですし、もう一人の霊媒師フィッシャーが、過去にこの屋敷に来ていて、そして唯一生きて出られた人間である、という設定も、この屋敷の恐ろしさを物語っているようで面白いです。そして、殻に閉じこもるようにして特に屋敷の調査もしないでいるこの男ですが、その経験から、「後で何か活躍してくれるに違いない」という期待感を抱かせてくれます。
そしてラストでは期待通りの活躍を見せてくれます。霊能力や物理学といったもので果敢に挑んだフローレンスとライオネルは共に失敗してしまいますが、フィッシャーが二人の後を継ぐような形で霊の正体を暴くラストは興奮します。
興奮と言えば、フローレンスを演じたパメラ・フランクリンにも別の意味で興奮させられましたね。“女霊媒師”なんて聞くとヤバそうな人を連想してしまいますが、パッと見、普通の女子大生みたいな雰囲気があるのがいいですね。そして、そんな外見の人が霊に騙されてヌードを披露する辺りは(暗がりの中ですが)、もう「ある意味、ここがクライマックスだ!」とか思ってしまいました。