監督・脚本:ブライアン・クレメント
出演:ポール・ペドロサ(シュラック)
クレア・ウェストビー(アジェンタ)
アリソン・テリアルト(ネメシス)
チェルシー・アレントセン(ティアマ)
テレサ・サイモン(バレリア)
カム・パイプス(アズール)
ケン・ピータース(オッペンハイム)
(感想)
なぜか定期的にリリースされる自主製作ゾンビ映画の一つです。当然、超低予算な映画なんですが、恐ろしい事に、舞台が「ゾンビの大群によって壊滅した世界」という、かなり大風呂敷な世界設定となっています。なんというチャレンジ精神なんでしょう。
でも、驚いた事に、意外に雰囲気が出てるんですよね。町の一角をゾンビの群れがうろついてる映像や、どこかからか頂いて来た火事の映像をうまい具合に挿入して見せたり、廃ビルをロケ地に使って、「ゾンビによって廃墟と化した建物」を演出してみたりと、かなりの頑張りが見てとれます。
さらに、肝心のゾンビ軍団のメイクがかなり凝ってます。ちょこっと腐乱メイクのされてる、ロメロタイプのゾンビではなく、顔全体を腐乱だか損壊だかよく分からない特殊メイクで覆った、イタリアンタイプのゾンビなんです(ただ、妙にカサカサした感じの乾燥肌なゾンビでした)。さすがに虫を這わせてる奴はいなかったですが、蛆関係の虫の出番もちゃんとあったり、ゾンビのお食事シーンも、赤く染めたフライドチキンを使って描写してきたりと、グロシーンも頑張っていました。
さらに、ストーリーも決してつまらなくはないものですし、何より登場キャラクターがそれぞれ個性的でイカしてました。まず、若い女にニヒルな男。それに、レーザー銃を装備した女吸血鬼の3人組。そして頭の悪そうな覆面プロレスラー。こんな連中がゾンビ相手のサバイバルを繰り広げる事となるんです。
主役級の“ニヒルな男”は、やたらと格好をつけた態度で、思いっきりクールを気取っているんですが、顔が不細工君です。このミスマッチ感に妙な魅力が感じられたものです。もう一人の主役級のキャラの“若い女”は、唯一、特にこれといった特徴が無いんですが、演じてる女優が結構美人なので問題無しです。
後の、“女吸血鬼”と“覆面プロレスラー”は、もうその設定からして個性的です。ゾンビが襲ってくる映画で吸血鬼が仲間にいる、というのはまあ考えられる範囲だと思いますが、何だ、覆面プロレスラーって(笑)。でも、その昔、メキシコかどこかの映画で、覆面プロレスラーがゾンビと戦う映画というのがあったみたいなんで、それの影響か何かなんでしょうかね。
ちなみに、この覆面プロレスラーは、吹き替え版ではなぜかオカマキャラになってます。字幕ではそんな事は無いんですけどね。どっちが本当なんでしょう。
ともかく、自主製作ゾンビ映画の中でも、ここまで個性的なキャラが揃った映画はこれまで見たことが無かったですね。
と、かなりの健闘が見られる映画ですが、「面白いか、面白くないか」で言うと、ハッキリ言って「面白くない」です(笑)。まあ、所詮は自主製作映画ですからね。作ってるのは、明日のサム・ライミやピーター・ジャクソンを夢見てるだけのセミ・プロみたいな人ですから、そうそう面白い映画なんて作れるものではありません。
でも、もともと「映画として面白いか」を求めてはいけないジャンルなので、見る側もそれなりの覚悟を持って見ないといけないですね。
ただ、そう思っても、この映画の序盤はかなりキツかったです。家庭用ビデオカメラ並の画質の安っぽさと俳優の演技の素人丸出し加減なところなど、もう見ていて失笑のオンパレードでしたよ。何よりも、映画の冒頭にゾンビメイクをした監督が自ら現れて「僕が監督のクレメントだ。作品は血まみれでエッチシーンが盛りだくさん!」みたいな事をにこやかに語ってくれてる辺りで、かなり嫌な予感がしたものです。しかも、エッチシーンは言うほど多くなかったですし。嘘つきめ。
メインキャラが揃ってくる辺りになると段々見ていられるようになりますが(多分、そこに行き着くまでに脳が慣れてくるんでしょう)、それまでは、ゾンビメイクをした近所の映画オタク達が遊んでる様を映したホームビデオを見てるような、くだらなさに満ち溢れた映像が続く事となります。それこそ、あまりの酷さに、見ていて楽しくなってくるぐらいです(どんな心理状態だ)。
「ゾンビがいっぱい出て来て、主人公達がゾンビと戦ったり逃げたりやられたりする」、という要素さえあればとりあえず何でもいいや、という人ならそこそこ楽しめる映画だと思います。自主製作ゾンビ映画の中には、ゾンビがちょっとしか出てこないようなものもあるというのを考えると、まあレベルはこれでも高い方だと思いますしね。
あ、この映画、一応“01年アンダーグランド・フィルム年間最優秀作品賞”なるものを受賞していて、後に続編まで作られてたりもします。と言う訳で、これでもこの分野では割りと優秀な部類の映画という評判のようです。