監督:マイケル・カーティス
出演:ライオネル・アトウィル(イワン・イゴール)
グレンダ・ファレル(フローレンス・デンプシー)
フェイ・レイ(シャーロット・ダンカン)
フランク・マクヒュー(ジム)
アレン・ヴィンセント(ラルフ・バートン)
ギャビン・ゴードン(ジョージ・ウィントン)
エドウィン・マクスウェル(ジョー・ワース)
ホームズ・ハーバート(ドクター・ラスマッセン)
クロード・キング(ミスター・ガラタリン)
アーサー・エドマンド・ケリー(スパロウ)
それから数年後。イワンは生きてニューヨークに現れ、新たな蝋人形館をオープンするのだった。今度は処刑、拷問、殺人等残酷な場面を再現した蝋人形が展示される、庶民的なものとなっていた。
一方、ニューヨークでは最近、死体が盗まれる事件が続出していた。
蝋人形館に立ち寄った新聞記者のフローレンスは、そのうちの一体が、先日死体が盗まれた女性とそっくりな外見である事に気付く。
実はイワンは、夜な夜な弟子と共にモルグから死体を盗んで来ては、その死体を蝋人形にするというサイコな仕事をするような人間になってしまっていたのだ。
(感想)
33年製作というクラシックなホラーです。年代的に、モノクロ映画だったと思うんですが、私が見たDVD版はキレイに着色されてました。私は白黒映像を見てると眠くなるという性質があるので、この色付き映像は有り難いものでしたね。
さて。「死体を使って蝋人形を作る怪人」なんてのが出て来る内容で、その怪人は顔が焼け爛れたグロテスクな容貌をしています。と、ここまではいかにもホラー映画的なんですが、何故か見てみると、あんまり「怖い映画だ」という気がしないんですよね。
その理由として考えられる一番の原因は、主人公的立場にいるフローレンスという女記者の存在、と言うかキャラクターです。何かこの人、異様にテンションが高いんですよね。しかもやたらと早口で喋りまくり、その行動も、まるで子供の動きを見てるかのように落ち着きがありません。こんなのがメインに出てるものだから、本来あるはずの「怪奇映画的ムード」がほとんど感じられません。
ですが、こここそがこの映画の面白い点でもあると思いますね。フローレンスを演じるグレンダ・ファレルという人が、コメディエンヌ並の活躍を全編に渡ってかましている事で、さながらホラーコメディの様相を呈しているように見えてきます。この当時のホラー映画なんて地味に怖がらせようとする映画ばっかりなのかと思っていたんで、これには予想外な驚きがありましたね。
また、フローレンスの上司の編集長役の人も、まるで『スパイダーマン』の編集長を思わせるような早口&嫌味を連発してくるようなキャラクターで、コイツとフローレンスとの会話シーンなんてもう早口言葉大会みたいになってましたからね。
肝心の怪人の方ですが、その設定の面白さ故に、「ヒロインの存在感に食われる」という事態にはなってませんでした。
普段は両手両足が不自由な芸術家という風を装っていますが、その裏では、焼け爛れた素顔を晒しながら夜中のモルグに忍び込んで死体を盗んで行くという怪盗みたいなマネをしています。
他のクラシックホラー映画の怪人と比べると、ドラキュラや狼男のような特殊能力は無いですが、生身の人間である事からくるリアル感がある点が魅力的ですね。
普通の人である表の顔と凶悪な裏の顔がある辺り、もしかしたら、ジキルとハイドの設定を少し頂いてる所があるのかもしれないですが、こちらは二重人格ではないというのがミソですね。しかも、元々は紳士的な人間だったのが、ある事件をきっかけに心身ともに怪人になってしまったという生い立ちも実に興味深いです。
このように、面白いキャラクターが二人も出ている為、今まで見て来たクラシックホラーの中ではこの映画が一番見てて面白かったですね。