サバイバル・オブ・ザ・デッド
<NIKOS THE IMPALER>
03年 ドイツ映画 100分

監督:アンドレアス・シュナース
出演:ジョセフ・ザソ(フランク・ヘラー)
   フレッシャー・ローズ(サンドラ)
   ブレンダ・アバンダンドロ(デイジー)
   ジョセフ・M・ラグナー(ピート)
   ジョー・ラッタンジ(ライアン)
   アンドレアス・シュナース(ニコス)

(ストーリー)
約千年前。ルーマニアで、蛮族のニコスが大量殺戮を行った後、反撃に出た人々に殺される、といった出来事があった。だが、ニコスは自分の魂を仮面に封じ込め、もしこの仮面に生き血が流される事があったら復活出来るようにしておいた。これで、後に復活した際、自分を殺した連中の子孫に仕返しをしてやろうと思ったのだ。

で、現代のニューヨーク。画廊にて、ルーマニアの怖い美術品が展示される催しが開かれ、そこにニコスの仮面も運ばれてきていた。
何だかんだで、木箱に仕舞われていた仮面に生き血がかかり、ニコスは晴れて復活。巨大な剣を振りかざして人々を惨殺し始めるのだった。

(感想)
お馴染みJVDリリースの、悪趣味スプラッター映画です。
監督が『悪魔のえじき』で知られるアンドレアス・シュナース、という事がウリのようですが(しかも、黒騎士ニコス役で出演もしてるそうな)、私はこの映画は未見なので、シュナースが何者なのかよく知りません。でも、汚いグロを出す変態監督らしいという噂は聞いていました。
確かに、そういう監督の作品だけあって、この『サバイバル〜』には、良識ある人なら目を背けたくなるような、派手派手な人体破壊スプラッターシーンのオンパレードでした。
しかし、良識の無い輩(私含む)にとっては、中々見応えのある一作でしたね。

ですが、映画としては結構酷い代物だと思います。一般的なホラー映画として見たら、褒められる所が何一つ無いぐらいでしたからね。まず、全く怖く無いですし、ストーリー展開も異常と言っていいぐらい適当です。キャラクター間の掛け合いもかなりふざけたものでした(そのせいか、JVD名物の“変な吹き替え”が実にフィットしてましたね)。
演出もかなりヌルいし、映像は安っぽいしで、まるで素人が撮った映画みたいです。でも、何か不思議な魅力があるようで、最後まで見入ってしまったんですよね。
やっぱり、一番の見せ場であるスプラッターシーンで期待通りのグロさを見せてくれた、というのが良かったんでしょうか。犠牲者は大量の血を吐いたり流したりしますし、時々臓物関連も顔を出しますし、相手が老婆でも容赦無く真っ二つです。
こういうシーンで大活躍するのは、主に“人形”です。例えば、老婆真っ二つのシーンでは、「体が縦に裂けた老婆の人形」を一瞬映す事で、老婆のキャラクターが惨殺された事を表現するわけです。で、これが一目見て人形だと分かるような代物で、グロいんだけど、かなりチープな感じもあるんですよね。
そのふざけたストーリー展開といい、グロいけどチープなスプラッターシーンといい、これはホラーなのかコメディなのか(あるいはホラー・コメディか)が分からなくなってくる事もしばしば。でも、この馬鹿っぽさに何度吹き出してしまった事か。「次はどんな馬鹿なシーンが出てくるんだろう」というのが楽しみになってくるぐらいでした。
ただ、予算の関係か、後半はあんまり派手な死に様を見せる人が少なくなるんですよね。人形もそう何体も用意出来なかったんでしょうね。後は血糊だけで頑張るしかなかったようです。
でも、後半の展開もまたバカなんですよ。映画の主な舞台は画廊で、そこに閉じ込められた人々の脱出劇が描かれるというストーリーの映画なのかと前半を見てる時は思っていたんですが、中盤頃で画廊から脱出出来てしまうんです。で、この前半の間で、普通のホラー映画なら後半まで生き残ったり、殺人鬼を倒したりする役割を担いそうな連中があっさり死んでいったりとかしてましたね。
その後は、何と黒騎士ニコスがニューヨークの町に出てしまうんです。そんな大風呂敷広げて大丈夫なのかと思ったら、ニコスさんはすぐに建物の中に入ってしまうんで、「殺人鬼が都会に放たれたら!」という時に予想するような大規模な惨事は起こらないんです。その代わり、ジムやらバーやら映画館やら、色んな店に入っては、客や従業員を殺しまくるんです。結局、ジェイソンがニューヨークに来た時よりも多くのニューヨーカーが死んだんじゃないですかね。
ちなみに、ジムに押し入った際には、サービスシーンとして「ヌードシャワーシーン」が登場してきます。ここだけ、それまでと違う雰囲気で撮られてて、おまけ以上の労力がかけられている事が察せられます(ご丁寧に、映像特典でノーカット版が収録)。

グロとバカがいい具合にブレンドされ、おまけにエロまで付いてきたという、全体的に楽しげな映画でありました。エンディングテーマもカッコ良かったです。

ところで、『悪魔の毒々モンスター』でお馴染みのロイド・カウフマンが本人役で登場して、黒騎士ニコスにぶち殺されたりするんですが、もしかしたらこの映画、トロマの映画の雰囲気を出すのを目指していたんでしょうかね。私はトロマの映画は『毒々モンスター東京へ行く』しか見てないんですけど、思えば、この映画と似たような感じがあったかもしれません。ヌルいコメディ調のストーリー展開に、定期的に汚いグロ描写が出てくる辺りとか。