監督:メアリー・ランバート
原作・脚本:スティーブン・キング
音楽:エリオット・ゴールデンサル
出演:デイル・ミッドキフ(ルイス・クリード)
デニース・クロスビー(レイチェル・クリード)
フレッド・グウィン(ジャド・クランドル)
ブラッド・グリーンクイスト(ビクター・パスコウ)
ブレイズ・バーダール(エリー・クリード)
ミコ・ヒューズ(ゲイジ・クリード)
ある日、娘の大事にしていた飼い猫のタマ(←名前忘れたので仮名)がトラックに跳ねられて死んでしまった。当時、娘は妻のレイチェルと息子のゲイジと共に実家に帰省していたので、後でこの事を娘に話して聞かせねばならない。気が重くなるルイスだが、向かいに住んでいる気のいい爺さんのジャドから、ある場所に連れていかれた。そこは、家の裏山にあるペットの墓地のさらに奥にある、先住民の秘密の墓地だった。ルイスは、そこにタマを埋めるように言われるのだった。
そして翌日。何と、タマが生き返って帰ってきていたのだ。あの秘密の墓地は、死んだ者を生き返らせる事の出来る場所なのだ。だが、生き返ったタマは以前とはどこか違う感じのする、不気味な猫になっていた。しかも、臭かった。
ある日、今度は息子のゲイジがトラックに跳ねられて死亡するという痛ましい事件が起きてしまった。
息子を失ったショックでルイスは静かに錯乱し、あろうことか、墓からゲイジの死体を掘り返して、例の秘密の墓地に埋めようとするのだった。
だが、この墓地に人間を埋めると、ゾンビみたいになって生き返って人を殺すようになってしまうのだった!
(感想)
スティーブン・キングの小説で、私が読んだ中でも最も重いストーリーだった『ペット・セマタリー』。それを映画化したこの『ペット・セメタリー』(微妙にタイトルが違うのは、私の誤字ではありません)ですが、いつもの「キング原作映画」のように、そこそこ怖くてそこそこ面白い程度の映画となっていました。
ただ、原作のような“重さ”はあんまり感じられませんでしたが、“後味の悪さ”は、かなりのものがありましたね。結局、出て来る人々が死んだり不幸になったりするだけで、何の救いも無いというお話ですからね。“怖い”と言うより“嫌な気分”にさせてくれる映画としては、かなりの出来と言っていいのかもしれません。
この映画の脚本は、なんとキング自らが手掛けているようですが(しかも劇中にも神父役でカメオ出演)、「原作を2時間にまとめただけ」という、他のキング原作映画と同じようなストーリーになってるのはどうした事でしょう。
原作をなぞったストーリーになっているのに、原作にあった重さが感じられないのは、主人公が死んだ息子を生き返らせようとする事に関する葛藤がほとんど描かれていないからでしょうね。その主人公の行動がかなり唐突に思えてしまうんです。
そりゃ、生き返らせる事の出来る可能性があるんなら、賭けてみたい気持ちは分かります。ですが、映画では、「娘に、死んだら生き返る事は出来ないと言って聞かせるシーン」や、「あそこで人間を生き返らせると大変な事になる」という点は描かれているんです。それでもなお、わざわざ死体を墓から掘り返してまで生き返らせようとする主人公の行動には、それまで理知的でしっかりした父親といった感のあるキャラクターだっただけに、釈然としないものがありましたね。
また、この映画に出て来る超常現象は「死んだ者の生き返り」だけではなく、平気で幽霊が出てきたり、娘が超能力的な予知夢をみるようになったりと、一種のファンタジーワールドのような「何でも有り」みたいな世界観になっています。
もっと、精神的に堪えるような内容を期待してしまうんですが、その世界観のせいで現実味が薄くて、“頭の陥没した幽霊のビジュアル”や“息子ゾンビのメス攻撃”といった、見た目の怖さだけが印象に残ってしまうんですよね。
もっと恐ろしくも悲しい内容に出来そうな題材だけに、「違う形で映画化出来なかったのかな」とか思ってしまいますね。