プロムナイト
<PROM NIGHT>
08年 アメリカ・カナダ映画 88分

監督:ネルソン・マコーミック
出演:ブリタニー・スノウ(ドナ)
   スコット・ポーター(ボビー)
   ダナ・デイビス(リサ)
   コリンズ・ペリー(ロニー)
   ジェシカ・ストループ(クレア)
   ケリー・ブラッツ(マイケル)
   ブリアンヌ・デイビス(クリッシー)
   イドリス・エルバ(ウィン刑事)
   ジェームズ・ランソン(ナッシュ刑事)
   ジョナサン・シェック(フェントン)

(ストーリー)
女子高生のドナは、ストーカーと化した教師に家族を殺され、そのショックで毎晩のように悪夢にうなされる日々を過ごしていた。

だが、それから月日が経ち、心の傷も少しづつ癒えてきた。そして、学生生活最高の一日である、高校の卒業パーティの日が訪れた。ここで、あの悪夢の記憶を消してしまえるぐいらいの、一生に残るいい思い出を作るはずだったのだが・・・。何と、ドナの一家を殺した後に逮捕され、精神病院に入れられていたストーカー教師のフェントンが、病院を脱走してしまったのだ。
フェントンは、鋭利なナイフを持ち、まるでニンジャか暗殺者のような神出鬼没な動きで、パーティ会場のホテルに侵入してくるのだった。

(感想)
その昔、続編が4、5作ぐらい続いていた人気シリーズ『プロムナイト』のリメイク作です。
私は過去のシリーズは、1作目の他、『4』か『5』辺りを見てるだけで、しかももう内容は全く覚えていません。
ただ、1作目の感想を読み返してみると、どうやらリメイクと言っても、プロムパーティが舞台という以外は、ストーリーに何の共通点も無いみたいですね。まあ、「高校生活最大のイベントの最中に惨劇が起こる」という設定が受けてシリーズ化されてただけで、ストーリーそのものが受けていたわけでは無さそうですからね。

さて。過去のシリーズは、内容は忘れていたものの、確か、他のこの手の殺人鬼物映画とそう変わらないような印象の映画だったと思います。
ですが、このリメイクは結構、これまでの数多の殺人鬼物映画とちょっと雰囲気が違う作りになってましたね。
まず、ヒロイン他、脇役の若者達が、みんなあんまり下品じゃないんです。パーティ会場が体育館とか講堂ではなく、ホテルを借り切っていたりするように、もしかしたら優等生が集まってる、いいとこの学校が舞台だったのかもしれません。
この「若者連中が爽やか」というだけで、何か、他のこの手の映画と比べると異質という感じがしてしまいます。
そして、ヒロインのドナが「家族を殺されている」というトラウマを抱えているんですけど、このドナの心理描写が結構丁寧な感じで、物凄く同情を誘うんですよね。可哀想で、守ってあげたいような感じがあって、これからいい人生を送って欲しいと、そんな事を見てて思わせるような人物造形になってるんです。
多分、合間に、両親の代わりに保護者となった親戚夫婦や、前の事件を担当していた刑事の目線で、「ドナを何とか守ってあげたいと思う」という描写を入れてきているから、見てるこちらも釣られてヒロインへの同情度がアップしているんでしょうね。
また、プロムパーティというものが、ドナにとってどれだけ大事なイベントかというのもよく表されていました。それも、動機が不純なものではなく、「過去の辛い体験を打ち消すぐらいの楽しい思い出を作りたい」という実に健気なものなんですよね。
私は基本的に、こういう、学生のパーティみたいな場面を見ていても、「これの何が楽しいのか分からない」というつまらない人間でして、下手すると、浮かれ騒いでいる若者達の姿を見てウンザリしてくる事もあるぐらいです。でも、この映画ではそういう、負の感情が出る事がほとんど無かったですね。
本来、殺人シーンが起こるのを今か今かと待ちかねながら見る事になるんですけど、むしろ、このまま誰も殺されずに、みんなが楽しいままでパーティが終わって欲しいぐらいの事まで思い始める始末でした。

ですが、当然、惨劇は始まっていくわけですよ。それも、クスリをやっていたわけでも、セックスをおっ始めたわけでもない、悪い事なんて何もしてないのに、ただ、犯人の付近に一人で行ってしまったというだけで殺されてしまうんです。
この、前半部分の殺人シーンはどれも、「奇襲」という作戦が使われていまして、もうほとんど暗殺状態になってましたね。5秒前までは自分が死ぬなんて事をこれっぽっちも考えてなかった、パーティを楽しみ、将来に思いを馳せていた若者が、気付いたら何者かに襲われてナイフを突き立てられている、みたいな殺人シーンなんです。これは、見てる側としても結構ショックがありましたね。
そして、ドナにとっては、犯人の存在自体が忘れたい過去だというのに、そいつが現れただけでなく、友人を殺したという現実には、ドナの保護者でもないのに「せっかく、心の傷が癒えかけていたのに、また・・・!」とか思って悲しくなってしまいます。
でも。これはホラーファンの悪しき習性なのか、そのショックな出来事を見るのが、ちょっと快感だったりもするんですよねぇ。そして、ドナがもっと酷い目に遭うのを期待し始めてしまうんです。可哀想な目に遭ってるのを見たいと思ってしまうんですよね。
思えば、これはアルジェント映画みたいな「美少女いじめ」の別パターンなのかもしれないですね。

殺人鬼のフェントンは、他のスラッシャーキラーと比べると、一見、何の特徴もない、ただのサイコなんですけど、よくよく考えたら、「基本的に、一人の女を付け狙ってるストーカー」というのは珍しいかもしれません。ドナに近付きたい為に、周りにいる家族とかは邪魔だから殺したけど、もしかしたら、ドナを殺す意思は無いかもしれないぐらいなんですよね。まあ、面と向かって拒絶とかされたら、その執着心が一気に殺意に変わったりとかするんでしょうけど。
あと、ストーリーにも書いたように、「お前は隠密行動の達人か」と思うぐらいの神出鬼没さを持っていて、それこそ、犠牲者が「すぐそこに殺人鬼がいるのに全然気付かない」みたいな感じで襲撃されたりするんです。この人は、きっと就く職業を間違えたんでしょうねぇ。政府の工作員とかやってれば、敵国の要人の暗殺とかで大活躍していたに違いない。