パルス
<PULSE>
06年 アメリカ映画 86分

監督:ジム・ソンゼロ
出演:クリステン・ベル(マティ)
   イアン・サマーハルダー(デクスター)
   クリスティナ・ミリアン(イジー)
   ジョナサン・タッカー(ジョシュ)
   リック・ゴンザレス(ストーン)
   サム・レバイン(ティム)

(ストーリー)
最近、恋人のジョシュと連絡がとれなくなった事が気になった大学生のマティは、住んでるアパートに直接出向く事にした。
だが、部屋の中は数日無人で放置されていたような有様となっていて、在宅していたジョシュも、まるで生きる屍のような元気の無さだった。しかも、ふと隣の部屋に行ったと思ったら、そこで首を吊って自殺してしまったのだ。
この事件に大変なショックを受けるマティ。だが、ジョシュの自殺は序章にしか過ぎなかったのだ!

ジョシュの所有していたパソコンが、大家によって勝手に売られた事を知ったマティは、そのパソコンを購入した、デクスターという男を訪ねる。だが、デクスターから、ジョシュのパソコンの中に怪しい映像が入っていた事を知らされる。それは、まるで呪いのビデオを見てるかのような、何ともいえない不気味さのある映像で、さらに、拳銃自殺を図る男の映像まで出てくるのだった。

これが何を意味するのか不明のまま、各地で自殺者が多発するという事件が起こる。さらに、自殺だけでなく、一瞬で灰になって消える者まで出る始末だった。
どうやら、パソコンから得体の知れない、ゴーストのような存在が出てきて、人々に、気力を失くさせる呪いを振りまいているらしいのだ。
ジョシュのパソコンをさらに調べていくうち、ジョシュがジーグラーという男に宛てたビデオレターが見つかる。それによると、ジョシュが何か大変なものをオンライン上から現実世界に呼び出してしまったようなのだ。

謎のパルス軍団はさらに行動を活発化させ、町が一晩でゴーストタウンと化すほど急速に災厄が広がる。そんな中、マティとデクスターは、唯一の鍵と思われる、ジーグラーを追って、彼の住んでいるアパートに向かうのだった。

(感想)
黒沢清監督作の『回路』という邦画をハリウッドでリメイクした映画ですが、生憎、私はオリジナルを見ていません。さらに、どんなストーリーなのかも知らなかったので、このストーリー展開には大いに驚かされましたね。まさか、こんな方向に行く話だとは思ってもみませんでした。

まず、前半の頃は、Jホラーお得意の怨霊&呪いものなのかと思っていました。実際、“いかにもゴースト”みたいなのがオープニングから堂々と姿を現して人を襲っていましたからね。
それで、若者達がお化けに襲われて怖い怖いする映画なのかと思っていたんですが、敵は単なる化けなんてものじゃなかったんです。
そして、この「何が襲ってきているのか」、と言うか、「いったい、何が起こっているのか」というのもよく分からないままストーリーが進んでいって、中盤ぐらいまで私も、ストーリーがどこに向かおうとしてるのか検討もつきませんでした。でも、その「意味の分からない展開」が、うまいこと「先が気になる」というように感じられて、イライラするような事がありませんでしたね。あと、全体的に青暗い映像も、いい雰囲気を醸し出していました。
そして“いかにも呪いのビデオ”みたいな映像も出てきた辺りでは、「そうか、これは『ほんとにあった!呪いのウイルス』的な内容の映画なのか」と、思ったんですが、もっと深刻な展開へと発展していくんです。

最終的に、「地獄の門が開いて、地上が大変な事になる」という、ハルマゲドン的展開にかなり近いような、ほんと、「人類滅亡」に片足突っ込んでるぐらいの事態になっていくんですよね。これは驚きましたよ。「ここまで行くんだ」と。だって、このジャンルでここまで事態がオオゴト化する事なんてほとんど無いですからね。ゾンビ映画なんかではよくありますけど。
で、いったい何が原因でそんな事になったのかと言いますと、やっぱり、よく分からないんですよね。あのゴーストみたいな連中は一体何者なのかと。パソコンを介して人を襲うというだけかと思っていたら、空中を飛び交う電波を介して、現世に出現する事が可能という、もう、何だか分からない奴らですよ。「お前らはいったい、どこから現れた、何者なんだ」とテレビのモニターに向けて問いたくなってくるぐらいです。ゴーストでもないし、悪魔でもない。モンスターでもなければ、もちろん宇宙人でもテロリストでもない。これまで、ホラー映画で色んな怪物を見てきましたけど、そのどれとも当てはまらないような謎っぷりでしたねぇ。

こういう、最新テクノロジーを使った恐怖物語はいいですね。「このテクノロジーをこれからも使い続けていて大丈夫なんだろうか」という不安を掻き立ててくれて、見終わった後も恐怖感が持続するんですよね。私も、この映画を見終わった後に、この感想を書くんでパソコンを立ち上げたんですが、ちょっと怖かったですからね(笑)。
ケータイやら無線LANといった、電波を使った便利な機器が次々登場しますけど、その電波やら電気信号やらの世界をさらに掘り進めていたら、別の次元みたいな所にぶつかってしまった、みたいなのが事の発端だったようなんですけど、これは、「森林を刈り進んで未開の地に進出したところ、未知のウイルスが発掘されてしまった」という状況と重なるものがありますね。

ちなみに、DVDのパッケージやメニュー画面などで使われている、「主演女優が、無数の手に捕まえられている」という見るもおぞましい画像。その無数の手のうちの一本が面白い所に伸びていて、何か、違う意味でドキドキしてしまいます。この場面は本編でも登場するんですが、そこもやっぱり、本来と違う意味でドキドキさせてもらえました。ただ、どうも手がCGっぽかったですけどね。