セッション9
<SESSION 9>
01年 アメリカ映画 100分

監督・脚本・編集:ブラッド・アンダーソン
共同脚本:スティーブン・ジェブドン
出演:ピーター・ミュラン(ゴードン)
   デビッド・カルーソ(フィル)
   スティーブン・ジェブドン(マイク)
   ジョシュ・ルーカス(ハンク)
   ブレンダン・セクストン・サード(ジェフ)
   ポール・ギルフォイル(ビル)

(あらすじ)
十数年前に閉鎖された精神病院のアスベスト除去作業に来た5人の男たち。
ゴードンはストレスの溜まる仕事と家庭での子育てで、このところ精神が参り気味になってきていた。
フィルは、仲間の一人ハンクに恋人を奪われているのだが、特にいざこざを起こすわけでもなく、真面目に仕事をしていた。
ハンクは、病院の地下で年代物のコインが落ちているのを発見。点々と落ちているコインを辿って行き着いた壁の一部を壊すと、それは大量に出てくるのだった。そして、恋人に「大金が手に入った」と告げたのち、姿を消してしまった。
法律を学んでいた学のある男だが、今は大学を辞めてこんな仕事をしているマイクは、地下の一室で、メアリーというかつてのこの病院の患者と担当の精神科医との話し合い(セッション)を録音したテープを見つけ、全9巻あるそのテープを仕事の合間を縫っては聞きにきていた。

仕事を始めてから数日後。ゴードンのストレスが限界に来ていることを感じ取ったフィルは、その事をマイクに相談していた。そんな時、ゴードンの甥で、仕事を世話してもらった形で参加していたジェフが、いなくなったはずのハンクを建物内で見つけたと言ってきた。

(感想)
心理的に怖いタイプのホラー映画ですね。別に、殺人鬼とか幽霊とかが出てくるわけではないし、登場人物が定期的に死んで行くというわけでもないんですが、映画全体から妙に怖い雰囲気が漂ってました。むしろ、殺人鬼も幽霊も死体も出ないから怖い、という感じですかね。
それに、舞台の廃墟となった精神病院も、場所が場所だけに恐ろしい雰囲気満点です。別に、「暗闇から何かが出てきそう」みたいな演出がなされてるわけじゃないんですけどね(そういう演出をされてる箇所もありますが)。

ただ、“怖い”と言っても、“そら恐ろしい”程度のものですけどね。映画の大半は終盤の展開への伏線を出すのが目的みたいなもので、本当の恐怖は最後に待っているんです。

伏線とは、ゴードンがフィルに打ち明けた、「妻を殴ってしまった」という話と、マイクが聞き続けている全9巻の“セッション”の内容の事です。
その内容は、多重人格者メアリーと精神科医との会話です。メアリーは家族を惨殺した罪でここに入れられているようで、精神科医は、家族を殺した時に現れていた人格を呼び起こそうと試みているんです。
で、実はゴードンの家庭での事情には、この内容と少し似ている点があるんですが、それはこのテープを聞いてるマイクも、相談を受けたフィルも、ゴードン自身も知らない(気付いてない)事です。

要するに、ゴードンは多重、かどうかは分からないですが、少なくとも二重人格者で、妻と娘を殺害しているんですね。
その後、ついに本格的に狂ったゴードンは、ラスト、登場人物全員を血祭りにあげてしまいます。

そんなストーリーの映画です。こうして概要を見るとそんなに怖くなさそうですが、演出が良かったんでしょうかね。終盤は見てて結構怖かったです。

ただ、頭の中には終始“?”マークが出ていたので、“心底震え上がった”というところまでは行きませんでした。
なぜって、ゴードンが凶行に走った理由がよく分からないからです。
この仕事がストレスの溜まりやすい仕事だという事は劇中で語られたんですが、果たしてゴードンは仕事と育児によるストレスで精神のバランスを崩してしまったのか?それとも、やはりこの病院に原因があったのか?というがよく分からなかったんです。
何だか、メアリーの怨念に取り憑かれた、という見方も出来るんですよね。だから、あくまでも人間の心の闇が原因なのか、怨霊が原因なのか、『シャイニング』のホテルのように、建物自体がゴードンを狂わせたのか、その辺がはっきりしないんです。

この辺を曖昧にする事で恐怖を出そうという目論みなのかもしれないですが、私的には恐怖よりも何か釈然としないものの方をより強く感じてしまいましたねぇ。