監督・原案・共同脚本:ダリオ・アルジェント
原案・共同脚本:フランコ・フェリーニ
製作総指揮:クラウディオ・アルジェント
音楽:ゴブリン
出演:マックス・フォン・シドー(モレッティ)
ステファノ・ディオニジ(ジャコモ・ガロ)
キアラ・カゼッリ(グロリア)
ロベルト・ジペッティ(ロレンツォ・ベッティ)
パオロ・マリア・マカロンドロ(マンニ警部補)
ガブリエル・ラビア(ミスター・ベッティ)
ロッセラ・ファルク(ローラ)
ロベルト・アコーネード(ファウスト)
マッシモ・サーチェリー(レオーネ)
17年前の事件を担当したが、今は引退している元刑事のモレッティと、当時の2番目の犠牲者の息子であり、母親が殺されている所を目の前で見ていたジャコモは、二人で独自に犯人を探し始めるのだった。
(感想)
アルジェント+ゴブリンが再び組んだ話題作(一部のホラーファンの間で)です。内容は『サスペリア2』や『シャドー』のようなサイコサスペンスになっています(本当はアルジェントの初期監督作に近いらしいんですが、見てないもので・笑)。
で、映画の出来ですが、やっぱり、上記2作には及ばないものでした。『シャドー』に関しては、人によっては「『スリープレス』の方が面白い」と感じる人もいるかもしれませんが、『サスペリア2』には到底及ばなかったですね。まあ、この映画を越えるホラーサスペンスなんて、今後映画界に現れるかどうかも怪しいぐらいですからね。
でも、ホラーサスペンス映画の新作の一本として見ればかなり面白い映画です。ちなみに、“ホラーサスペンス”というジャンルにおいては、話の矛盾点を深く追求するのはご法度です(笑)。
また、ゴブリンの音楽についても、ジャンルは違いますが『サスペリア』『フェノミナ』ほどのインパクトが無いので、ここもマイナス要因に思ってしまいがちですね。「アルジェント+ゴブリン」というのは、この映画最大のウリと言っても過言ではないんですが、あまり過剰に期待はしないほうがよさそうです(矛盾してますが)。
「昔起こった殺人事件と同じ手口の事件が再び起こった。でも、当時の事件の犯人と思われる男はすでに自殺している。では真犯人は?」というのがおおまかな事件の概要です。この事件に、当時の担当だった元刑事のマックス・フォン・シドーと主人公の青年が関わって行く、というストーリーですが、なぜか主人公が登場するのが映画開始から3〜40分過ぎてからです。それまでの時間は謎の犯人による殺人シーンに費やされてます。
序盤がそんな展開なので、「この映画は殺人シーンがメインなのか?」と思ってしまうほどです。ちなみにここの殺人シーンは、アルジェントな演出の画面の背景にゴブリンの音楽が鳴り響いているという、視覚的にも聴覚的にも楽しいシーンになっています。ホラー映画のワンシーンと言うよりも、ゴブリンの音楽のプロモーションビデオのワンシーンと言った方が合ってるような感じです。
で、中盤からようやく映画の本筋が始まるんですが、実は、犯人の目星に関する、かなり分かりやすいヒントがすぐに出てくるので、見てる人の大半は終盤に行く前に犯人の見当がついてしまいます。これは意図した演出なんでしょうかね。でも、そのヒントのかなり後に、登場人物の一人を容疑者のように映すシーンが出て来たりするんですけどね。
犯人の正体は途中でだいたい想像がつくんですが、その動機については、ラストで犯人が自ら語るまで分かりません。で、その動機が結構怖いです。私だけかもしれないですが、何か、現実的な恐怖が感じられました。動機も怖いですが、その殺害方法も、犯人の正体を知った後は余計に怖く感じられます。
事件は、昔の事件の犯人と思われていた小人のヴィンチェンゾの書いた小説の通りに起こっていた、と序盤では言われてましたが、実は、その小説に出てくる子守歌の通りに殺人が行われていた事が後に判明します。
確か「夜眠れないから動物を殺しに行こう」とか、そんなような内容で、歌では6種類の動物が殺されていきます(ちなみに、最初に殺されるのがブタさんだったりします。おのれ)。
ですが、この映画の中で死ぬのは6人を軽く越えます。普通のサイコ犯は、自分の設定したルールは守っていくものですが、この映画の犯人はそんなのおかまいなしに、秘密を知った者などを次々殺していきます。この辺の犯人の思いきりの良さもホラーサスペンスならではという感じですかね。
ちなみに、殺し方もなかなか凝っていますし、最近のアメリカ製ホラーと違って、「殺す瞬間は映さない」とか「CGを使った殺人シーン」といったものは一切出て来ません。「殺す瞬間は映さない」は時折出てたような気もしますが(何しろ、結構死にまくるので把握しきれません)、気になるほどではなかったはずです。