ジェイソンZ
<SHREDDER>
03年 アメリカ映画(ビデオ用) 86分

監督・脚本:グレッグ・ヒューソン
出演:スコット・ウェインガー(コール)
   リンジー・マッケオン(キンバリー)
   ジュリア・ウェイケル(パイク)
   ビリー・オー(スカイラー)
   ピーター・リッグス(カーク)
   ホリー・タウン(ロビン)
   ブラッド・ホーキンス(クリストフ)
   エリオット・オルソン(チャド)
   セス・レストン(トニー保安官)
   ロン・ヴァレラ(バド)
   キャンダス・ムーン(シェリー)

(あらすじ)
閉鎖されたスキー場に遊びに来た若者達が殺人鬼に襲われる。

(感想)
要するに、湖をスキー場に変えただけの、『13金』の亜流です。
殺人鬼が若者を襲う理由もかなり『13金』チックです。このスキー場ではかつて、スノーボーダーがルール無視の我が物顔で滑りまくっていたせいで死亡事故が起きているんです。で、その時に死亡した娘の身内が、ルールを守らないボーダーを恨んで犯行を重ねているんです。
劇中にジェイソンという名前の人物は一切出て来ませんが、こんなストーリーなら『ジェイソンZ』なんて身も蓋も無い邦題を付けられるのも仕方の無いところですね。
肝心の殺人鬼も、変わった凶器を使うわけでもなく、変わったお面を付けてるわけでもない、何の捻りも無い出で立ちです。もともと捻って無いのか、捻り過ぎて元に戻ったのかは分からないですが。

そんなパクリ映画が面白いわけが無いと思いがちですが、これが意外や意外。実に惜しい映画になっていたんです。結局のところ『ブラッディ・マーダー』シリーズみたいなパクリ映画に違いは無かったんですが、途中、この映画ならではな個性を出せそうな箇所が所々にあったんですよね。そこをうまくやってれば、下手したら本家の『13金』のシリーズよりも志の高い映画になってたかもしれないぐらいです。

この映画、上で書いたように、殺人鬼はスノーボーダーに敵意を燃やしています。標的が「若者」とか「エロってる若者」みたいな漠然としたものではなく、「スノーボーダー」と特定されてるんです。途中、無関係な保安官を殺したりもしますが、放っておいたら仕事の邪魔をされてしまうので始末しておかねばなりません。
しかもこの殺人鬼、ボーダーを殺した後に、そのボードを斧でメチャメチャに叩き割ったりと、そのボーダーへの恨みは相当なものだなというのが見て取れるぐらいです。
恐らく、『ジェイソンZ』なんてタイトルの映画を進んで見てるような人は、この時点でこの殺人鬼にかなりの親近感を持ったんじゃないでしょうかね。いや、私も別に特別な恨みがあるわけでは無いですけど、スキー場を我が物顔で滑ってるようなアホな若者ボーダーとか大嫌いですからね。と言うか、スノーボードをやってるって時点で何かムカつきます。「この、若者め!」とか思ってしまいます。
数年前、スノーボードが流行し始めた時に、ニュース番組で「ルールを守ろうともしないスノーボーダーの横暴っぷり」の特集を見て、こんな奴ら抹殺しちゃえばいいんだと思ったものでしたからね(注・識者の方、この発言を本気にしないように)。

そして、標的をボーダーのみと限定したこの映画の殺人鬼の活躍を見るにつけ、「もしかしたらこの脚本を書いた人は、実際にスノーボーダーの被害に遭っているのでは?」と思うようになってきました。それならば、もしかしたら、若者陣全員死亡という、この手の映画ではまず成し得る事の出来ない快挙を達成してしまうのでは!?と期待感も上がっていきます。
さらには、見ていて「日本でも、“コンビニの前で座り込んでる若者のみを殺す殺人鬼の映画”とか作るべきだ!」なんて妄想を抱き始める始末です。
でも結局、ラストは本当に『13金』シリーズ、及びそのパクリ系映画とほとんど同じ締め方でしたねぇ。残念。
しかも、このラストの直前までの展開は、かなりこの手の映画のパターンから外した展開になってたんですよね。例えば、「生き残るのが男」とか「実は殺人鬼が2人いた。しかも片方は女だ」とか。
なのに、ラストは若者の生き残りの女が殺人鬼を撃ち殺して終わりですよ。まさにパターン通り。
唯一パターンと違うのは、その女が、前に頭に穴を開けられて死んでたはずという点ですかね。本来、「死んだと思ったら、最後に生き返って襲ってくる」というのは殺人鬼側がやる行動ですが、それをヒロインにやらせてみたんでしょうか。
でも、生き返った事への理由付け(言い訳)がほんの一言すらも無いので、「やや捻った展開」と言うより、ただ単に意味不明なだけです。主人公の男も、「生きてたのか。良かった」じゃないだろう。そいつ、さっき明らかに死んでたじゃん(笑)。

と、折角のチャンスをふいにしたこの映画。結局は数ある「13金パクリ映画」とほぼ同じ出来の映画、という事になってしまいましたね。まあ「面白くなりそうな可能性」があっただけマシではありましたが。