監督・製作:ロバート・ワイズ
出演:リチャード・ジョンソン(ジョン・マークウェイ)
ジュリー・ハリス(エレノア・ランス)
クレム・ブルーム(セオドラ)
ラス・タンブリン(ルーク・サンダーソン)
住んでみると、噂通りに、夜中に物音がしたり、扉が勝手に閉まったり、急な寒気が襲ってきたりしだす。さらに、集まった3人の内の一人、エレノアという女性がもともと病みがちだった精神をさらに悪化させ、おかしな言動を繰り返すようになるのだった。
(感想)
お化け屋敷映画の古典的名作で、99年にヤン・デ・ボンによってリメイクされた『ホーンティング』のオリジナルです。
リメイク版は「オリジナルに泥を塗っただけだ」等、散々な悪評が立ったものでしたが、今回このオリジナルを見てみて、実の所、「面白さ」という点ではまだリメイク版がマシだったかな、といった感想を持つに至ってしまいました。
まず、舞台となるお化け屋敷ヒルハウスが、あの豪華なリメイク版を見た後だといやにチャチに感じてしまいます。製作年度や予算の関係上仕方の無い所ではあるんですが、いまいち「不気味さ」というものが感じられなかったですね。
そして何よりも、主人公のエレノアのキャラクターが、リメイク版同様、何とも見てて胡散臭いんですよね。「青春を母親の介護に捧げていた」という気の毒な人物ではあるんですが、そんな人生のおかげで精神が病んでしまってるわけです。
この屋敷で起こる超常現象は、屋敷に来た全員が見聞き出来る、現実に存在するものなんですが、結局の所、「壁を叩く音がする」とか「扉が勝手に閉まる」といった実害の無いものばかりです。そんな中、このエレノアだけが必要以上に騒いで、さもこの屋敷に恐ろしい物が潜んでいるように振舞っている、というふうに見えるんですよね。「他愛も無いポルターガイスト現象」に、「精神病患者の暴走」が含まれているだけという感じで、見てて怖いというよりイラつかされてしまいます。「お化けよりもその女の方が別の意味で怖いよ!」と。
招待客の一人、セオドアという女性が、この一連のエレノアの行動を「博士の気を引きたいせいだ」みたいに言うシーンがありますが、実際、この人のこの屋敷に来てからの奇行はほぼ全てその通りなんじゃないかと思いますね。この屋敷にある霊的な要素も多少は作用してるんでしょうが、結局はコイツがもともと病んでたのが原因なのではないかと。
いつの間にか壁にエレノアの名前が大きく書かれていたという、本来ゾッとするようなシーンも、「きっとコイツの自作自演なんだろうな」と思えてしまって、全然怖くありません(意識しての行動ではないと思いますが)。
リメイク版では、エレノアがこの屋敷に来た事に理由付けがなされていて、「この家の超常的なパワーにより呼び寄せられた」といった感じでした。それぐら強烈なパワーを持った、デンジャーな屋敷という印象がリメイク版にはありましたが、この『たたり』の屋敷は「怪奇現象の噂のある、その辺のホテル」と同程度の怖さしか無いんですよね。
いや、「その辺のホテル」でも、実際にそこに寝泊りしたらと考えると怖いものですが、心霊現象よりももっとヤバいのが客の中にいたら、やはり霊現象に怖がってる暇は無くなると思うんですよね。本来恐怖の対象であるはずの幽霊の存在感が、エレノアの暴走の前にほとんどかき消されてるように思えてしまいます。
もう、霊に対して、「お前もエレノアを見習って、もっと自己主張しろ」とか思ってしまいます。終盤、ドアをくんにゃりして見せたりもしますが、クライマックスでこの程度の芸を出されても困ってしまいますね。何しろ、人間側にはもっと派手に動き回ってる奴がいるんですから。
どうやらこの映画、お化け屋敷映画と言うより、心理ホラーの面が強い映画のようですね。
そういう内容の映画である事を否定はしませんし、その観点で見ればよく出来たいい映画と言えるのでしょう(何しろリメイクされるほど有名な映画なんですし)。ですが、私はどちらかと言うと幽霊が怖いことをしてくるお化け屋敷映画の方が好きですし、見る前はこの映画もそういう映画なんだと思っていた為、ちょっとノリ切れないものがあったんですよね。
同じく有名なお化け屋敷映画である『ヘルハウス』の方は、家がとてもヤバい場所だというのが実感出来る、私好みの映画でした。もしかしたら、リメイク版は『たたり』よりも『ヘルハウス』の精神に近いものがあるのかもしれないですね。