監督:アンドレ・ド・トス
出演:ヴィンセント・プライス(ヘンリー・ジャロッド教授)
フィリス・カーク(スー・アレン)
チャールズ・ブチンスキー(イゴール)
フランク・ラブジョイ(トム・ブレナン警部)
キャロリン・ジョーンズ(キャシー)
ポール・ピサーニ(スコット)
ポール・カバナフ(ウォーレス)
ダッブス・グリアー(シェーン)
だが、展示されている蝋人形の一体が、謎の怪人に殺された友人とそっくりなのに気付いたスーという女性が、この蝋人形館に不信感を抱く。その一方、ジャロッドもこのスーがかつての最高傑作「マリー・アントワネットの蝋人形」と似ていた事から、スーを蝋人形にしてやろうと企むのだった。
(感想)
33年に作られた『肉の蝋人形』こと『MYSTERY OF THE WAX MUSEUM』のリメイクです。05年にもリメイクが作られましたが、原題が『THE HOUSE OF WAX』と、この53年版と同じという事は、05年版は53年版の方のリメイク、という事になるんでしょうかね。
ですが、33年版と53年版がほとんど同じストーリーなのに対し、05年版は『悪魔のいけにえ』のようなスラッシャー映画という、ストーリーからジャンルまで全くの別物になっていました。
さて、ストーリーはほとんど33年版と同じと書きましたが、登場人物に一部変更があり、同じ役回りの人物も名前が変わってたりします。
まず、一番大きな違いは、33年版でメインキャラの一人だった女記者が丸々いなくなってる事でしょうかね。33年版の顔とも言えるキャラだったので、もうこれだけで雰囲気がかなり違っていて、コメディ的だった雰囲気が無くなり、変わりに怪奇映画的雰囲気がより色濃くなっていました。
前作から20年が経過し、その間、特殊メイク技術も向上しました。と言う事で、怪人の焼けただれた顔のメイクがさらに壮絶味を増していました。また、怪人が死体を盗むだけではなく、死体を作る仕事もするようになり(要するに、殺人)、よりホラー映画っぽく生まれ変わってましたね。
怪人に関しては、後は33年版とほとんど同じです。「車椅子生活の蝋人形館のオーナー」と「焼けただれた素顔を晒して夜の町で獲物を狩る怪人」という二つの顔を持つ所や、かつては紳士だったのが、ある事件のせいで心身共に怪物になってしまった事など。ただ、表の顔をしてる際は、こっちの方がより紳士的でしたね。なので、表と裏の顔のギャップがさらに広がったような感じがします。
ところで、これは33年版からそうだったんですが、怪人として夜の町に出没する際は、黒のコートに黒の帽子を深く被り、といった黒づくめな格好をしてるんですが、この衣装といい焼けた顔といい、サム・ライミの『ダークマン』の主人公にそっくりなんですよね。実はこの映画、『ダークマン』の元ネタだったんですかね。
また、クライマックスでは、捉えに来た警官隊と百人組み手を繰り広げる武闘派っぷりも見せてくれます。これは確かに、怪奇映画の怪人というだけでなく、ダークヒーロー映画の主人公としての素質も十分ある逸材だなと思えますね。
ダークマンは顔を隠すのに苦労したものですが、こちらは「本物そっくりなマスク」をこしらえて、簡単に焼けた素顔を隠すのに成功しています。そのマスクの精巧さは、回りの誰ひとりとしてマスクである事に気づかないぐらいのレベルです。思わず、「お前はイーサン・ハントか」とか言いたくなるほどです。「いったい、どんな素材で出来てるマスクなんだろう」と思ったら、どうも蝋で出来てるらしく、叩いたら割れ落ちたりするんです。自然な表情が作れるほどの柔軟性があるというのに(笑)。
ちなみに、弟子のイゴールという人物が、何故かいやにムキムキした体型で「何でこんなにマッチョなんだろう」と思っていたら、実は演じてるのが無名時代のチャールズ・ブロンソンだったらしいですね。私の知ってるブロンソンと全然顔が違うんで気が付かなかったですねぇ。