監督:ゴア・バービンスキー
音楽:ハンス・ジマー
出演:ナオミ・ワッツ(レイチェル・ケラー)
マーティン・ヘンダーソン(ノア・クレイ)
ブライアン・コックス(リチャード・モーガン)
デビッド・ドーフマン(エイダン・ケラー)
デイビー・チェイス(サマラ・モーガン)
シャノン・コクラン(アンナ・モーガン)
(感想)
日本が誇る最恐ホラー『リング』をハリウッドでリメイクした映画で、舞台がアメリカに変わった事によって、ストーリーの細部に変更が加えられたものの、おおまかな流れはオリジナルそのままでした。
かなり忠実なリメイクなんで、ハリウッドびいきの私が見たら「オリジナルよりも面白い」と言う感想が出てもおかしくないところなんですが、やはり、オリジナルのあのジメジメしたような雰囲気はハリウッドでは出し切れなかったようで、オリジナルに比べると「何かが足りない」という印象が出てしまいましたね。
やぱり、こういう「呪い」の話はアメリカみたいなビッグな国には似合わないんでしょうかねぇ。殺人鬼が大暴れするスラッシャー系のホラーなんかは、逆に日本で作っても嘘くさいのが出来上がるような気がしますし、この『ザ・リング』がオリジナルに及ばないように思えてしまうのは、製作国の文化の違いという問題なのかもしれないですね。
ですが、確かにオリジナルには及ばないものの、そういう比較等をしなければ、一本のサスペンス・ホラーとしては、よく出来た、面白い映画だとは思います。
何と言っても「呪いのビデオ」という物の存在自体がいいんですよね。この映画みたいに、泊まった先に謎のビデオがあって、興味本位で見てしまうという事は有り得る話ですし、そうでなくても、例えば、借りたビデオの巻末に変な映像が入ってたらとか、友人に「面白いビデオを見つけた」みたいな感じで見させられたりとか、「もしかしたら、自分の身に降りかかるかも」と思ってしまうような、「ごく身近な怪」というのが感じられるんですよね。
そして、例え人から呪われるような行いをしていなくとも、このビデオを見てしまったら、100%呪いに感染してしまうというのは恐ろしいです。日頃の行いとか無関係なんですからね。
で、今となっては、アジア発のリメイクホラーでは当たり前の展開である「呪いの根源を探していく」というサスペンスストーリーが、先が気になる面白さがあるんですよね。「7日後に死ぬ」というタイムリミットがあるのも、緊迫感が出ていいです。
最終的に、呪いの根源であるサマラという少女の死体を、遺棄されていた井戸から救い出し、「これで成仏して呪いも消えた」と思わせておいて、実はそれがサマラの策略だったらしい事が分かるクライマックスは、そういう展開になると分かっていても驚きと怖さが感じられます。
そして、息子の為に呪いのビデオのコピーをとってしまうラストも、ホラー映画として実に盛り上がる終わり方です。
ところで、サマラは、オリジナルの貞子よりも大分若い設定になり、そのせいか、若干迫力も落ちた感がありますけど、子供になった分、親から(里親ですけど)井戸に突き落とされる場面がショッキングになりましたね。そして、呪いを振りまいているところに「かまってほしい」という無邪気さが加味されたのも興味深いです。
ちなみに、実はこのリメイクに、オリジナルを凌駕している凄い点というのがあるんです。それは何かと言うと、「主人公の息子の異様な不気味さ」ですよ。これは、演出どうこうと言うより、たまたまいい雰囲気の子を見つけてきたというだけの話だとは思うんですけど(笑)。
序盤の葬式のシーン辺りでは、『シックス・センス』のコール少年のような雰囲気を出そうとしているかのようでしたけど、ダミアンにしか見えませんでしたからねぇ。こいつの醸し出す不気味さと言ったら、「こいつが死んだら、サマラ以上の怨霊になるんじゃないだろうか」と思ってしまうぐらいです。