痩せゆく男
<STEPHEN KING'S THINNER>
96年 アメリカ映画 92分

監督・共同脚本:トム・ホランド
原作:スティーブン・キング
出演:ロバート・ジョン・バーク(ビリー・ハリック)
   ルシンダ・ジェニー(ハイディ・ハリック)
   ジョー・マンテーニャ(リチャード・ジネリ)
   カリ・ウーラー(ジーナ・レムキ)
   マイケル・コンスタンティン(タドゥツ・レムキ)
   ジョー・レンツ(リンダ・ハリック)

(あらすじ)
デブの弁護士ビリーは、あるマフィアの弁護の仕事で見事勝訴する。その祝いのパーティの帰り、ビリーの運転する車の前に、ジプシーの老婆がふらふらと飛び出して来た。そして、気付いた時にはもう遅く、老婆は車にはねられ、即死してしまう。
この事件は、ジプシー連中の事を快く思っていなかった判事のケアリと、警官のホプリの証言により、ビリーは“無罪”となった。
裁判所から出て来たビリーに、ジプシーの長老レムキが近寄って来て、ビリーに触れて、一言「痩せていく・・・」と言い、その場を去って行った。
次の日から、ビリーの体重は毎日少しづつ減って行くのだった。ビリーは呪いをかけられてしまっのだ!そしてその呪いはビリー以外にも、ケアリ、ホプリにもかけられていた。ケアリは皮膚がトカゲのようになってしまい、ホプリは顔がただれてしまったのだ。
3人の中でも呪いの進行がなぜか遅いビリーは、呪いをかけた張本人のレムキに呪いを解いてもらおうと、ジプシー達の後を追う。
そして、ついにレムキに追いついたビリーだが、逆に「もっと酷い呪いをかけるぞ」と脅されてしまう。怒ったビリーは、「今度はこっちが呪ってやる!」と脅し返し、先日弁護を引き受けたマフィアの男、ジネリに電話をするのだった。

(感想)
スティーブン・キング原作の映画化です。で、例によってこの映画版は「まあ、そこそこ面白い」程度の仕上がりとなってました。
「主人公が痩せてく映画なんて、怖いのか?」という疑問があったため、今までこの映画にあまり興味を持てなかったんですが、原作を古本屋で100円で見かけて購入し、これを読んでみたら、怖いわ面白いわの「さすがキング!」というものでした。それで、この映画版を見てみたわけですが、まあ、やっぱり以前想像してた通りでしたね。

原作は「罪悪感」がテーマといった感じの話だったんですが、映画版は「仕返しの応酬」、または「目には目を歯には歯を」、あるいは「てめぇ、落とし前どうつけてくれるんだ!」というようなテーマの話になってました。
でも、ほんとに全編に、「やられたらやり返す」の精神が溢れていて、虐げられていたマイノリティのジプシーへの哀れみなどこれっぽっちも感じさせない作りになってました。まさに“敵”でしかない存在。終盤、主人公が恨みがましい嫌な人物になっていくという展開も、人間の暗部を描いたというよりも、これもジプシーの呪いのせいなのではと思ってしまうほどです。
そんな映画なので、話にマフィアの人が絡んでくるところに妙な説得力が出ましたね。何しろ、マフィアといえば、仕返しの本場ですからね。後半のマフィア対ジプシーの仕返し合戦は結構盛り上がりますし、見てて楽しいです。

このように、主人公がどんどん痩せていく事に関しては、何だか、物語りの中のおまけみたいな感じなんですよね。この映画で一番怖いのは、やっぱりジプシーの仕返しの仕方の方なんですよ。何しろ、ただ後を付けただけで惨殺される青年とか出て来ましたからね(笑)。
映画では、どんどん痩せて行く主人公の特殊メイクが見所の一つになってますが、想像してたよりも痩せなかったですね。そもそも、原作でも、主人公が最も痩せた時の体重が、普段の私とほとんど変わらないぐらいでしたからね(笑)。って、笑ってていいのか、自分。

ちなみに、原作者のスティーブン・キングが序盤の方で、薬屋の主人の役で登場してましたね。なかなか味のある顔なので、こういう映画の脇役で出ると、独特の印象が残せる人ですよね。