監督:サイモン・ウェスト
出演:カミーラ・ベル(ジル・ジョンソン)
トミー・フラナガン(ストレンジャー)
ケイティ・キャシディ(ティファニー)
テッサ・トンプソン(スカーレット)
ブライアン・ジェラティ(ボビー)
クラーク・グレッグ(ジョンソン)
(感想)
家に脅迫いたずら電話が掛かってきて、警察に逆探知をお願いしたところ、まさにその家から電話が掛けられている事が判明する!
という、都市伝説を映画にしたものなのかと思ってたんですが、その昔、同じネタを映画化した『夕暮れにベルが鳴る』という映画のリメイクという事らしいですね。レンタル屋でたまたま、この映画と『夕闇にベルが鳴る』という便乗リメイクの映画を見つけて、2本セットで借りてみたんですけど、オリジナルがあったとは迂闊でした。3本セットで借りるべきでしたな(ただ、後に確認した所、オリジナル版はレンタル屋に置いてませんでした)。
さて。この映画、元の話(都市伝説の方)や、便乗リメイクの方と違い、舞台がただの家ではなく“豪邸”となっています。もちろん、防犯対策もしっかりしていて、誰かが入ってきたらアラームが鳴る仕掛けとなっています。
この、「ただっ広い舞台」と「防犯システム」をうまく活用したら面白いサスペンスストーリーになりそうなんですが、どうも、それほど有効に活用されてるとは言い難かったですね。
だいたい、メインのストーリーが始まって間もない頃に早々にアラームが鳴るという事態が発生するんですけど、あっさり「装置の誤作動」という事にしてましたし、さらには「ガレージの中のドアが開いてた」という理由で、ヒロインの友人が突然登場する始末ですよ。穴だらけじゃねぇか(笑)。
多分、その最初のアラームが鳴った時に変質者ことストレンジャーは侵入していたんでしょうね。何しろ家が広大なんで、隠れる所も山ほどあるわけでよす。
それにしても、凄い豪邸でしたねぇ。あまりに凄すぎて、「住んでみたい」という気が起きないぐらいです。トイレに行くのに迷子になりかねないですからね(いや、そこまでは広くなかったか)。でも、「あの部屋に用事がある」という時に、結構歩かないといけないというのは不便なような気がしてしまいます。
で、この広い豪邸が舞台という点、「侵入者の隠れ場所がいくらでもある」というのと、「主人公が邸内をゆっくり探索する場面で尺を稼ぐ」という所でも役に立っていましたね。本来、大して長くも無い話を90分かけて語らないといけないわけで、こういう、「ストーリーは全然進んでないけど、視覚的にちょっと面白い」という場面が入れられるというのは、製作側にとっても便利な要素だったに違いない。
でも、これ以上の使われ方がされなかったのはちょっと物足りなかったですね。例えば、『ホステージ』なんかは、舞台となった豪邸の広さをストーリー的にちょっと活かした場面とかがあったと思ったんですが、こちらは「広い家だなぁ、面白いなぁ」止まりだったんですよね。
悪役である所の“ストレンジャー”ですが、その正体は完全に謎という人物で、「何故、この家に目をつけたのか」といった、動機に関する事も全て不明です。
映画を見てる間は、「このいたずら電話の主は一体何者で、何が目的なんだろう」と思うわけですが、最終的に、「人殺しをしようとしていた」という以外、何も分からないんですよね。でも、中途半端に正体が割れてるよりは、ここまで徹底して謎にされてる方が、悪役として魅力的のような気がします。さらに、冒頭で、ストレンジャーがこの家に来る前にやった仕事に関する描写が出てくるんですが、それが「ベテランの刑事が、殺害現場を見て気持ち悪くなってしまう」という、かなり凄惨な殺し方をしていたらしいんです。
また、家の中に隠れているのかと思ったら、離れの小屋に移動している時があったり、帰ろうとしていた友人を殺す為に庭に潜んでいる時があったりと、結構な神出鬼没っぷりを見せてくるんですよね。別に、この家の構造や内部の造りなどに詳しいという設定は無いはずなんですけど、まるで自分の家のように自由自在に動き回っているんです。
この、「殺害の凄惨な手口」「神出鬼没」という辺り、実にホラー映画的なキャラクターじゃないですか。そう言えば、途中、「玄関のドアがガンガン叩かれているんで、ヒロインがドアを開けた所、玄関に誰もいなかった」というシーンがあったんですが、ここなんて、ドアが叩かれてから開けるまでにほとんど間が無いうえに、付近に隠れられそうな所も無いという状況だったんです。もう、瞬間移動か何かを使わない限り、あの状況で姿を消す事なんて出来ないはずなんですよ。
こういった、ホラーキャラとして頼もしい雰囲気が色々とある奴なのにも関わらず、趣味が「いたずら電話」というのが、また、何かギャップを感じさせてくれて面白いです。豪邸に侵入し、どこかに身を潜めて、ベビーシッターのバイトの女の子に、延々と無言電話を掛けるんですよ。で、結局、いたずら電話に精を出してる隙に警察に通報されて、まんまと御用になりましたからね。なんてカワイイ奴なんでしょう。
思えば、上記の「ドアを叩いた後、姿を消す」というのも、ピンポンダッシュよろしく、ドアを叩いた後、全力で走って逃げたのかもしれません。まさに、ホラー界のいたずらっ子。
ついでに、ストレンジャーを演じているのはトミー・フラナガンという人なんですが、電話口での声は何故かランス・ヘンリクセンが演じているという辺りもイカしてますね。
と、犯人目線で考えると、ちょっと笑える内容なんですけど、劇中では犯人目線のシーンは一切出てきません。これらは、映画を見終わった後から思った事で、見てる最中は、「豪邸に一人ぼっちのヒロインが(一応、二階では子供が寝ていたり、どこかにメイドがいるらしいという事にはなってるんですが)、謎の変質者のいたずら電話攻勢で追い詰められていく」という、ちょっと怖いお話なんです。
そのヒロインを演じるのは、その昔、『沈黙の陰謀』でセガールの娘を演じていたり、『ロストワールド』でコンピーに襲われたりしていた、元子役のカミーラ・ベル嬢です。あの当時はそれは可愛らしい子供といった雰囲気でしたが、それが成長して、中々に濃ぃい顔立ちになっていましたね。何だか、「一度見たら忘れられない」という感じの濃さですが、この映画の「ほとんど主人公の独り芝居」という内容には、これぐらい特徴的な顔立ちの人の方が見飽きなくていいのかもしれないな、なんて事を思ったものでした。
ところで、この映画、「逆探知の結果、変質者が家の中にいる事が判明する」という展開になるのが大前提となっているわけですが、その事実が知らされる前から、“犯人が家の中に潜んでいる気配”というのをかなり出してくるんですよね。
それが前提ではあっても、演出上では、「犯人がまさか家の中にいるなんて思いつきもしない」という展開になっていないと、実際に家の中にいたと判明した際に「とっくに気付いてるよ」と思うハメになってしまいかねません。
実は、便乗リメイクの方は、この点で思いっきりしくじっていたんですが、この映画の場合、「家のどこかにメイドがいる可能性がある」というのがある為、家の中の“人の気配”が犯人のものとは断定出来てない状況だったんですよね。いやぁ、この辺りは、B級映画と劇場公開作の出来の違いというやつでしょうかね(ただ、便乗リメイクの方は、劇場公開作ではやれないような危険なシーンを入れてきたりしてましたけどね)。
あと、前半の、主人公が家に着いて、シッターのバイトが開始されたばかりという段階から、背景で恐怖感を煽る怖い音楽が鳴ってるというのも何か面白かったです。まだ、いたずら電話はおろか、何も不審な事が起こってないのに、もう、今にも怖い事が起こりそうな雰囲気の曲が鳴っているんです。これは、もしかしたら「この時点で、もうすでに犯人が家にいる」というのを密かに表していたりするんでしょうかね。
ともかく、最初の段階から聴覚で不安感を刺激していたのが効いていたのか、映画全般に「何となく、空恐ろしい」という雰囲気が漂っていましたね。