サンゲリア
<ZOMBI2>
79年 イタリア映画 93分

監督:ルチオ・フルチ
特撮監修・特殊メイク:ジャンネット・デ・ロッシ
特殊効果:ジノ・デ・ロッシ
音楽:フィビオ・フリッツィ
   ジョルジョ・トゥッチ
出演:イアン・マカロック(ピーター・ウェスト)
   ティサ・ファロー(アン・ボウレス)
   リチャード・ジョンソン(デビッド・メナード医師)
   オルガ・カルラトス(ポーラ・メナード)
   アウレッタ・ゲイ(スーザン・バレット)
   アル・クリバー(ブライアン・フル)

(あらすじ)
ニューヨーク湾に漂流してきた謎のクルーザー。それを調べに入った警官の一人が死亡するという事件が起こり、新聞記者のピーターが調査に乗り出した。
ピーターは船の持ち主の娘のアンと知り合い、アンの父親のいるという島、マツールへ向かう事となった。
マツールのある西インドに飛んだ二人は、クルージングをするつもりで来ていたカップル、ブライアンとスーザンの船に乗せてもらい、4人でマツールに向かうのだった。

そのマツール島では謎の奇病が猛威を奮っていて、医師のメナードが一人で奮闘していた。そして、アンの父親もこの奇病の犠牲になっているのだった。
実はこの奇病、正体は恐ろしいブードゥーの呪いなのだ。今年いちばんドキーンとする事態が待っているとも知らず、ピーターら4人はマツール島に到着するのだった・・・。

(感想)
ジョージ・A・ロメロの『ゾンビ』と人気を二分する、大人気ゾンビ映画です。
なぜ、この映画がそんなに人気があるのかと言うと、まず、残虐シーンが奮っているからです。特に有名なのは、「目玉串刺しシーン」。目玉に木の破片がぶっすり刺さるという痛いシーンなんですが、これを「刺さる寸前に場面を変えて、悲鳴だけ入れておく」という手段ではなく、目玉に木片が食い込んで行く様をシッカリと描写してくるんです。
そして、主役であるゾンビ達が思いっきり汚い!もう、腐ってるわ顔が損壊してるわの大騒ぎです。そんなゾンビが終盤、大量に出てくるからたまらないです。
グロゾンビ+超残虐シーン。この2点を兼ね備えてしまったこの映画、もはや風格のようなものが漂ってるのも感じられます。

この映画のゾンビは、珍しく、本家でもあるブードゥーゾンビです。でも、“設定上はブードゥーゾンビ”というだけで、やってる事はロメロゾンビと変わらないというのが嬉しいですね。
ただ、ゾンビの動きがやっぱり少し違うんですよね。ロメロゾンビは「本能のようなもので人を食べようと襲う」という動きですが、この映画のゾンビは「本当は死んでいたいのに、呪いで仕方なしに動かされてる」という感じの動きなんです。もう、見るからにかったるそうに「ゆら〜り、ゆら〜り」と超スローで歩いて来ます。
ゾンビ達の襲撃シーンになると必ずかかるメインテーマが、そんなゾンビ達の心情をよく表してるような感じの曲で、場面に思いっきりマッチしてます。
でも、そんな動きの遅いゾンビ達ですが、かみつき攻撃の射程内に入ると急に早い動きを見せたりします。そして、噛んだ辺りの肉をごっそりと食いちぎっていきます。当然、食いちぎる様を画面にしっかりと映して。これがまたとっても痛そうで、見ていて思わず顔をしかめてしまうほどです。

こういった残酷描写が“不快”と感じる人には、まさに地獄のような映画でしょうね、これ。何しろ、残虐シーンが見せ場であり、そのシーンを見せるために存在してるような映画ですからね。でも、残虐シーンを「ブラボー!」という感じで見られる人には、もうたまらない映画です。大群で襲いかかる汚いゾンビの群れ!次々死にまくる登場人物!と、終盤の展開はとっても盛り上がります。
しかし、そんな映画な為、ストーリーを進ませる為のシーンが全く盛り上がらないんですよね。そもそも、ストーリー自体はそんなに面白いものでもないですからね。なので、序盤は少々退屈だったりします。
ただ、島に辿り着くまでの部分がこの映画の弱点だと分かっていたのか、序盤から中盤辺りの箇所、船で島を目指して進んでいるというシーンで凄い見せ場が用意されています。
なんと、ゾンビが人喰い鮫と水中で戦う!というとんでもないシーンが出てくるんです。しかし、こんなシーン誰が考えたんでしょうね。そもそも、この水中ゾンビはこんなところで何をしていたんでしょう(笑)。まあ何にしても、「ゾンビVSジョーズ」なんていう、冗談みたいな場面が実際に見られるだけでも素晴らしい事です。
ちなみに、この少し前には女の人が裸にヒモパン+アクアラングのみという姿で潜水をするという素敵なシーンも用意されています。エロが来た後、間髪入れず「ゾンビVSジョーズ」ですからね。この畳み掛けには見てて燃えざるを得ません。

で、ここで見てる人のテンションをあげたところで、一行は島に到着。話は佳境に、そしてメインの見せ場に入っていくわけです。確か、この辺りで、例の「目玉串刺しシーン」も入ったと思います。
そして、一行が島にあった古〜い墓場に来た辺りから、出るわ出るわの腐れゾンビーズ!ここで、ビデオやDVDのパッケージでも使われてる、あの目からミミズを垂らしてる超汚いゾンビが超アップで登場し、登場人物の一人、スーザンの首の肉をごっそり持っていきます。
で、ここでスーザンがあげる悲鳴が物凄いんですよね。目玉を串刺された人もそうだったんですが、この映画で酷い殺され方をする人の悲鳴がどれも凄いんです。悲鳴というよりも断末魔ですか、あれは。かなり壮絶で印象的な叫びでした。

また、ラストはゾンビ軍団の襲撃を教会に立て篭もってしのごうとするんですが、もうあまりにもゾンビの数が多すぎてどうにもならなくなります。この、まさに押しつぶされそうな絶望感がたまらないですね。やっぱりゾンビは群れてこそ華だ、とか思ってしまいます。
そして、命からがらニューヨークに戻って来た主人公を待ち受ける運命も最高です。何と、アメリカもゾンビだらけになってしまっていたという。
ニューヨークを舞台にした正当な続編としての『サンゲリア2』を作ってほしかったですねぇ。実際の『サンゲリア2』は『1』とは全然違う映画になってましたからね。