監督:リック・スティーブンソン
出演:デビッド・キース(アダム)
ジョアンナ・キャシディ(ジャッキー・ポッター)
エド・ベグリー・Jr(クロウフォード)
ブライアン・マーキンソン(ピート巡査)
ジャン・ルーブス(アーサー)
キャメロン・ダッド(クレイグ・アンダーソン巡査)
ウィリアム・B・デイビス(クロウ)
アリソン・ホサック(ロビン・アンダーソン)
キーラ・アンダーソン(ウェンディ)
そんな折、町に自称フリーのジャーナリストのアダムが現われ、この町の事件を取材したいと、ジャッキーに話を持ちかけてきた。そして、アダムの提案で、研究所内で座り込みによる抗議活動を行う事となった。
アーサーやジャッキーは住民を集めて、アダムと共に早朝の研究所に侵入。座り込みを開始するが、「裏口にチェーンの鍵をかけてくる」と言ったきり、アダムが姿を消してしまった。
さらに、禁煙である研究所内をタバコを吸いながらウロウロしていたアーサーは、研究室のドアが開いてるのに気付き、中に入る。そして、炭疽菌が入ってると思われるビンを手に取ったところ、タバコの煙で火災報知器が反応、その音でビックリし、思わずビンを落としてしまった。
事態は、研究所内に炭疽菌が広がり、アーサーが死亡するという最悪の展開となってしまった。
(感想)
炭疽菌と言えばアメリカで大いに話題となった菌ですね。でも、製作時期的に、あの事件が元で出来た話なのかは微妙なところです。関係無いとしたら、かなりタイムリーですが。
内容は、炭疽菌が相手のパニック映画、という作りではありません。話に細菌が絡む話ではあるんですが、作りはサスペンスドラマといった感じで、話はかなり淡々とした感じで進んで行きます。さらに舞台が静かな郊外ということもあり、見るときの体調によってはかなりグッスリ行きそうな感じではあります(笑)。
でも、決して退屈な映画というわけではありません。私自身が、こういう淡々と話の進むサスペンスドラマが好きだというのもありますが、それもストーリーが面白ければ、の話です。監督の演出も、ドラマやストーリーをしっかり見せるというものになっていて、淡々としながらも、かなり見やすい映画になっています。
研究所に炭疽菌が蔓延するというのが中盤の展開となるんですが、研究所内にいるのは座り込みを敢行しに来た住民20人程度です。そして、ここに至るまで、本当に研究所から菌が漏れているのか、というのは描かれていません。
反研究所派のリーダー的存在のジャッキーというおばさんの娘ロビンと、主人公の巡査クレイグが夫婦という設定で、町の治安を守るのが仕事のクレイグと、「もし本当に菌が漏れているならどうする?」という見解のロビンとの対立があり、見てる方にとっても「いったい、どっちが正しいんだろう」と考えながら見る事が出来ます。
クレイグ自身の事件への見解というのは語られません。ともかく、確証は無いという事で、ただ治安維持という自分の仕事をやり通すだけです。ただ、研究所の所長が見るからに裏で何かしてそうな人相ですし、実際に牛が病気で死んでいるわけなので、「研究所には何か裏がありそう」という描き方になってるようです。
研究所に立て篭もった座り込み隊の中には、クレイグとロビンの息子スティービー(4,5歳ほど)も含まれています。なんと、こんなデモを行うに当たって、子供連れで来たんです、このバカ親は。まったく、何を考えてるんでしょうね。これで結局、自分の子供をみすみす感染の危険に晒す結果になってしまうんです。
この事態は、連絡を受けて駆けつけたCDCの連中(劇中ではどの機関とは言われてなかったので、多分ですが)の活躍で全員助かる事となります。
ここで注目すべき点は、助かった後、クレイグがロビンの行動を全く責めないというところです。いくら相手が深く反省しているとはいえ、本来なら大罵倒大会が開かれても文句は言えない状況だというのに、「君は悪くない」と慰めてやるんです。
まったく、素晴らしいヤツですね、このクレイグという男は。それに、この人物をあくまでも一介の巡査という普通の男で、ヒーローみたいなキャラクターとして描いてないという点もいいです。いわゆる、等身大のヒーローというやつでしょうか。
感染したと思われるデモ隊達は、全員、シャワー消毒させられる事となるんですが、これがまた、全員一箇所でやるという、プライバシーより効率優先の手法を使ってました。当然、全員すっぽんぽんに剥かれます。
ただ、ここで画面上でヌードを披露するのがオヤジ達のみというのは、また凄い展開です(笑)。しかも、モザイクを必要とするぐらいの強烈ヌードですよ。ここは、笑うシーンなんだろうか。
どれもこれも、実はテロリストだったデビッド・キース演じるアダムのせいなんですが、彼の本来の目的は、ただ、研究所に進入して炭疽菌を盗む事でした。デモ隊を研究所に閉じ込めたのは、菌が盗まれたのがバレる時間稼ぎをするためで、細菌パニックを引き起こすのが目的ではありませんでした。
事態をここまで大きくしたのは、バカオヤジ、アーサー一人の手柄(?)です。このアーサーというオヤジは本当にアホな奴で、最後はまさに自業自得としか言いようのない最期を遂げます(結局、劇中、菌で死ぬのはコイツ一人)。
さらに、事件の発端である牛の謎の死も、コイツが支給されていたワクチンを牛に打ってなかったのが原因だった事が明らかとなります。結局、牛の死因は炭疽菌ではなかったんですね。今まで怪しいと思っていた研究所の所長も、実は潔白だったんです。
ですが、これまでほとんど出番の無かったある人物、研究所の所長よりももっと怪しい人物がクレイグの前に現われ、「手伝いたい」と言ってきます。その人物とは、どこかの国の大使の(どこの国か忘れました)クロウという男。そしてこのクロウを演じるのが、『X−ファイル』のスモーキング・マンでお馴染みのウィリアム・B・デイビスです。うわっ!怪しい!!(笑)。
アダム(これも多分偽名なんですが)が菌を盗んだ目的は、ある人物に渡して金を得ることでした。そのある人物とは、当然、スモーキングマン、もとい、クロウです。やっぱりコイツが黒幕なんですね(でも、今回はタバコを吸ってない)。
アダムは、事件が大きくなったのを理由に(アーサーのせいで・笑)、金額のアップを要求します。それを断ったうえに、殺し屋を差し向けたクロウへの仕返しに、4本盗んだうちの一本を使ってバイオ・テロを起こそうとします。
そしてその場所には、スティービーのバイオリンの発表会でロビン達が来ていたんです。
クロウからアダムのテロの話を聞いたクレイグも現場に駆けつけるんですが、ここでロビンから、スティービーがアダムにさらわれたという事を聞かされます。これは、スティービーがアダムの存在に気付いて話し掛けた為に発生した事故でした。
ここから始まるクライマックスの展開はなかなか緊迫感があって、見ていて結構ドキドキさせられました。最後はクレイグの活躍で、犠牲者が一人も出る事無く片が付く事となります(アダムはクロウに撃たれて死亡しますが)。
もしクレイグの活躍がなければ、住民にかなりの被害が出たところだったんですが、事件に関わった人達以外は、テロ行為があったという事も知らないまま映画は終わります。「知る人ぞ知る、名も無きヒーローの活躍」みたいな感じで、カッコいいラストですね。
クレイグは結局、クロウは何か怪しい奴だとは思いながらも、あくまでもただの巡査という事で、特にクロウに対して何の行動も起こしません。そしてクロウは『バイオ・テロ2』でまた事件の黒幕として、どこかの地で悪事を働く、という事になるんでしょうね。メデタシメデタシ。(注・『バイオ・テロ2』の製作予定はありません)