監督:ウーヴェ・フリースナー
出演:ユルゲン・レーマン(クリス・ブレーナー)
イザベラ・パーキンソン(コニー)
アンドレ・ヘンニッケ(ミューラー)
アダム・バウスドコス(ボギンスキー)
クリストファー・クリーサ(ハンス)
(感想)
一見、航空パニック物の亜流といった趣の映画ですが、実は『飛べ!フェニックス』の影響の見て取れるストーリーだった事が、リメイクの『フライト・オブ・フェニックス』の登場で判明。ドイツ人スタッフがこの映画を作ってる時、まさか本家がリメイクされるとは夢にも思ってなかったでしょうね(笑)。
ですが、ひょっとしたらリメイク版の製作に火をつけたのはこの映画が原因だったんじゃないのか?と思ってしまうほど、よく出来た映画です(アメリカ人がこの映画を見てる可能性がどれだけあるのか不明ですが)。
アクション映画として料理されていたリメイク版と違って、この映画はあくまでも「パニック映画」として演出されています。砂漠のど真ん中でのサバイバルを描いたストーリーなんですが、登場人物がサバイバルらしい行動をしてるシーンがほとんど無いんですよね。まるで、トンネルかどこかに閉じ込められて、救助を待ってる人達の姿を見てるみたいです。
そんな中で、登場人物達の間に生じる諸々のドラマが描かれていくわけですが、これがなかなか見応えがあっていいです。結構、個性的な人々が揃っていて、性格はもちろん、年齢、人種、性別も色々です。人によっては、職業や趣味などで得た特技を披露する場面もあったりします。
そして、この方々のとる行動や言動がとってもパニック映画的な雰囲気なんですよね。頭の悪い行動をとる子供とか、事故の原因を作ったイヤな奴、勝手に単独行動をとろうとする奴、我がままを言い出し始める奴等が出て来ますが、どれもパニック映画でよく見るようなタイプの人達ですよね。
生存者達は、かなりまとまりが悪い感じで、副操縦士の女性がリーダーシップをとろうとするんですが(本来、その立場にいなきゃならないはずの機長は重体で意識不明)、みんな、ほとんど言うことを聞いてくれません。そもそも、この副操縦士も、今日が初フライトという新人で、人を引っ張って行く能力があるとはとても思えないような人です。
物語の主人公的立場にいるのは、この副操縦士の恋人で、穏やかそうな雰囲気だけど意外に頭の切れる男です。ついでに、数年前の事故が原因で飛行機(と言うか、高所全般)恐怖症という設定が与えられています。
当初は、人よりも細かいところに気が付くだけで、特に役に立っているという印象の無かった彼ですが、次第に行動力を発揮して、脱出の手段を編み出したりするようになっていきます。そして、まとまりの無かった生存者達も、この人の考えた脱出案を実行する為に協力して事に当たるようになっていきます。
そこに行き着くまでの過程がなかなか丁寧で、途中に殺人事件が起こったりという、ちょっとしたサスペンスも挟んだりと見せ場もしっかり盛り込んで来ます。
肝心の脱出案については、ここでは詳しくは触れません。『フライト・オブ・フェニックス』は、この点が最初から分かって無ければ、もっと面白く見れたであろう映画だったので、せめてこの映画の脱出方法は謎のままにしておいた方がいいでしょう。私も知らなかったおかげで「どうなるんだろう」とドキドキしながら見てましたからね。
そして、『フライト〜』のラストも感動的でしたが、この映画も決して負けてはいない、感動的なラストを見せてくれます。感動と相性のいいジャンルであるパニック映画風な内容が効いてるのか、むしろラストはこっちの方が感動的だったかもしれません。
ちなみに、『フライト〜』は墜落シーンが凄い迫力でしたが、実はこの映画も墜落シーンの迫力が凄いんです。『エアフォース・ワン』の墜落シーンみたいに、CGで表現されるんですが、そのCGのレベルがかなり高いです。これは驚きましたね。下手したら『エアフォース・ワン』より凄かったかもしれません。
このように、ストーリーも見せ場のシーンもよく出来た、かなり上質な映画なんですが、実はこれ、テレビ用の映画らしいんですよね。明らかに、日本の劇場用映画のレベルを余裕で超えちゃってるんですけど。向こうのテレビ映画事情はどうなってるんでしょうね。かと言って、「じゃあ向こうの劇場用映画はもっと凄いのか」と言うと、そういうわけでもないみたいですけどね。