キングスパイダー
<CREEPIES>
03年 アメリカ映画(ビデオ用) 88分

監督:ジェフ・リロイ
出演:リサ・ジェイ(ミッシェル)
   キャリー・エドモンズ(ラネア)
   フィービー・ダラー(ブリンク)
   ジェフ・ライアン(デイブ)
   エリック・フランナー(ジェイク)
   ジョー・デアンジェリス(スティーブ)
   コービン・ティンブルック(パーカー)
   シャウント・ベンジャミン(ビックス)
   ロバート・アンボース(ウィルキンス)
   ジョン・ファヴァ(コディスポット)
   ジョー・ハガティ(ベンソン軍曹)
   ヴィンセント・ビランシオ(ウィルソン二等兵)
   ジェド・ローウェン(フィリップス)
   ジョン・クリスティアン(アーキンス)

(あらすじ)
軍が極秘に開発していた生物兵器の殺人グモが、うっかり二等兵のミスで容器から逃げ出してしまった。そして、クモを保管していた兵器実験センターが、そのクモのせいで壊滅してしまうのだった。
クモの開発責任者であるグレーブス少佐が事態の収拾に乗り出したが、クモは巨大化してロスで大暴れを始めるという、手のつけられない状態となる。

一方、とあるレコーディングスタジオでもクモが発生する事件が起こっていた。実は数ヶ月前、生物兵器のクモが入った容器が、郵送先を間違えてこのスタジオに送られてきていたのだ。で、なんだかんだでスタッフが誤って容器を倒してしまい、中からクモが出て来てしまったのだ。
レコーディングにやってきた女性バンド“ネイキッド・バービーズ”の面々もこの事態に巻き込まれる事となり、レコーディングスタッフ共々スタジオに閉じ込められる事となってしまう。スタッフの一人が容器に書いてあった電話番号に電話し、軍に助けを求めてみるが、到着まで1日かかると言われるのだった。
そうこうする間に、クモは次々と増殖。ロスが壊滅する大惨事になるのだった。

(感想)
ロサンゼルスで大クモパニックが起こり、町が壊滅するというスケールのデカい話を、『スパイダーズ』が超大作に思えるぐらいの呆れるほど少ない予算で描いたのがこの映画です。何かもう、画質が『ゾンビ・オブ・ザ・デッド』みたいな自主映画クラスでしたからね(笑)。
そんな超ローバジェットな映画なので、特撮シーンも、全てミニチュアで処理されています。それも、昔の『ウルトラマン』と同レベルぐらいのチャチい特撮です。21世紀に作られた新作映画でこんな特撮を見せられると、どうしていいのか分からなくなりますね。素直に笑っていいのか、それとも、この手作り感覚に感心すべきなのか。
ミニチュア特撮だけでなく、ロスに大災害が降りかかるシーンにおいても、この「手作り精神」はいかんなく発揮されています。B級未公開映画で、爆破シーンとかの映像を他のA級映画から戴いてくる事がありますが、それと似たような感じで、「実際にロスで起こった火事か何かの映像」を流用してパニックシーンを演出しているんです(建物から煙があがってる映像とか、消防車が走ってくる映像とか、そんな程度のものですが)。
そして、上空を飛んでるヘリ(取材ヘリか何かなんだろうか)をアップで映したと思ったら、次のシーンではヘリのコクピットを模したチャチいセットに座っている人の場面が出て来ます。要するに、先ほど飛んでいたヘリはコイツが操縦していたのだ、という事なのでしょう。まあ、よく考えたものですな。

肝心のクモ自体は主に安いCGで描かれています(シーンによってはおもちゃのクモが使われている時もあります)。ですが、合成技術もアレなものだから、「人がクモにたかられる」という本来おぞましいはずのシーンが、また困った事になってるわけですよ。そもそも、クモの形も何か変でしたし。
ストーリーも酷いもので、ふざけて考え出したとしか思えない展開を見せまくります。出てくる登場人物もアホばっかりです。この、見てしまった人を脱力させる為だけに作られた映画なのかと思ってしまうぐらいの内容には、「少ない予算で作ったんだからしょうがない」という弁護をする気にもなりません。

ですが、不思議とこの手の映画は酷ければ酷いほど輝きを増してくるもので(笑)。例えば、突然クモが喋り出して「人間達を根絶やしにしてしまおう!」的な事を言ってきたりするシーンには、あまりの輝きに目が眩むほどでした。もう、クライマックス近辺では、眩しすぎて見てられないぐらいに輝きまくってましたねぇ、ええ。
でも、一ヶ所本当に優れてる点もあったりします。それは“グロメイク”で、クモに噛まれた人がなぜか『サンゲリア2』のゾンビみたいなグチャグチャな顔になったりするんです。いきなりゾンビ映画みたいなグロシーンが出てくるとは、侮れない映画です。
クライマックスでは「生き残りそうかな」と思っていた登場人物が次々『サンゲリア2』みたいな顔で死にまくったりしつつ、最終的には爆破オチで締められる事となります。その爆破の規模がまた相当なもので、よくこの低予算映画で、ここまで規模のデカいストーリーに挑んだものだなと、むしろ感心してしまうほどです(ちなみに、どうも『ザ・デイ・アフター』の映像が流用されてるっぽい爆破シーンです)。

このように、「くだらないZ級映画を見てみたい」という人にとっては、100%期待に応えてくれる映画です。
でも、同じ“つまらない映画”でも、「完成度は確かに高いが、監督と感性が合わないせいか、面白く感じられない」というような映画よりも、こういう、「“酷過ぎて笑える”という域まで達してる映画」の方が、見終わった後の満足感ははるかに上ですね。私にとっては、巨匠による芸術映画なんかよりも、こういう金の為なのか趣味でやってるのか分からないような、いい加減なZ級映画の方が価値があると思ってしまいますねぇ。