監督:ジョン・カール・ビュークラー
出演:ゲッツ・オットー(ネルソン・シュナイダー)
アレン・リー・ハッフ(カーティス)
カレン・ニエッチ(アリアナ)
デビッド・ミルバーン(テッド・ジェイコブソン教授)
アレクサンドラ・ケンプ(モニカ・ケルシー博士)
デビッド・レーンマン(アップデート)
ハワード・ホルコム(トム・ギャレット)
レベッカ・レイン(ケイト)
ロバート・アクセルロッド(レニー)
ノーマン・コール(マンソン)
ビリー・マドックス(クライド)
(感想)
“南極の基地”という『物体X』な舞台で動物パニック物を作ったという意欲作(?)です。
この映画で暴れまわるのは巨大昆虫で、種類は“三葉虫”という、また意表をついた選択です。ですが、基本的には一匹しかいなく、登場人物達も、なぜか一人になったところを次々襲われていくので、まるで殺人鬼物の映画みたいな感じです。
そもそも、舞台が南極の基地なのに、学生が来ているというのも何だかいかにもな展開ですけどね。しかも、ちゃんとエロってるカップルが襲われたりしますし(笑)。つまり、ジェイソンの魂が降臨した昆虫が人殺しをする映画というわけですよ。
しかも、このエロカップルが殺される所が映画中で最も気持ち悪いシーンで、行為の後の睡眠から目覚めた男が、隣で背を向けて寝ている女に話しかけながらこっちを向かせると、女が昆虫と同化したようなグチャグチャな姿になっていたという、イカしたショックシーンになってました。
これまでも死体はちょくちょく画面に出てくるんですが、普段はそんなに損壊してません。さすがジェイソン虫だけあって、エロカップルには普段よりも酷い死を与えるんですね。
ちなみに、“なぜ、学生がこんな所に連れてこられたのか”については、後にちゃんとした説明が出て来ます。悪い奴の陰謀なんですが、何となく筋が通ってるような気のする話になってました。
さてこの映画、“閉ざされた施設内で、中にいる人達が次々殺される”というおおまかなストーリーだけでもそこそこ面白そうな予感を与えてくれますが、それに“殺人鬼物っぽい展開”“でも犯人は巨大昆虫という動物パニック系の展開”という要素が加わるという、何とも贅沢な映画です。
しかも、これらの要素がかなりいい具合にミックスされてて、登場人物達が「建物内で何かが起こっている」事に気付き始める中盤以降の展開は、見てて本当に面白いです。
ただ、かなり大きな問題点があります。何と、襲ってくる巨大三葉虫の造形が、見るも無残なハリボテなんです。しかも、まともに動かす事も出来ない程度の代物なのに、地面を走ってくるシーンをしっかり映してしまうんです。これがもう、見てて乾いた笑いがかろうじて出るぐらい酷い(笑)。
なので、コイツが本格的に襲って来てしまう、本来盛り上がるはずの終盤がもう画的にしょぼいのなんのって・・・。
でも、こんなしょぼいハリボテを使わざるを得ないぐらいの製作費の映画にしては相当面白いと言っていいと思います。多分、全体的に見れば、CGの巨大ヘビが襲ってくる映画群より面白いかもしれないです。この映画の監督、意外にいい腕をしてるんじゃないだろうか。
それに、ところどころで「おおっ!」と唸らせる演出も出て来ます。正確には“おおっ”の後に“(笑)”が付くんですが。
例えば、劇中、殺されるシーンが描写される人物は、死ぬ瞬間に「これまでにソイツが出てたシーン」がカットバックでババっと映されるんです。何と、驚きの「走馬灯システム」ですよ。
これを出す分、実際に殺される瞬間の描写というのは出てこないんですが、むしろ、低予算の殺人シーンを映すよりもこっちの方が面白いからOKでしょう。ただ、カットバックが早すぎてどんなシーンが出てるのかはコマ送りにしないとよく分からないんですが(笑)。
もう一点面白いシーンとして、この手の映画で「シャワーを浴びている女性が襲われる」というシチュエーションがよく出て来ますが、何とこの映画では意表をついて、「オヤジがシャワー中に襲われる」という前代未聞のシーンが登場するんです。
しかも、このオヤジが異常に毛深い。狼男の特殊メイクをしてるみたいに全身(と言っても上半身しか写りませんが)毛だらけです。外見もアレですが、その浴び方もまた品が無くて、確実に“笑うシーン”として入れてる事が伺えます。
こんな、他では見られないようなシーンを出しながらも、ラストでは怪獣大の大きさの昆虫の腕を出して、「もっと巨大なのが登場するぞ!」というところでエンディングという、お約束もしっかり守ってきます。
ビデオパッケージには巨大な昆虫型モンスターが描かれていて、多くの人が「きっとこんなのは出て来ないんだろうな」と思いながら本編を見る事になると思うんですが、意表をついて最後に一瞬出るんですよ。腕だけですけど。いやぁ、なんてサービス精神旺盛な映画なんでしょうねぇ。