デイ・アフター 首都水没
<FLOOD>
07年 イギリス映画 180分

監督:トニー・ミッチェル
出演:ロバート・カーライル(ロブ・モリソン)
   ジェサリン・ギルシグ(サマンサ・モリソン)
   トム・コートネイ(レナード・モリソン)
   ジョアンヌ・ウォーリー(パトリシア・ナッシュ)
   デビッド・スーシェ(キャンベル副首相)
   マーティン・ボール(ワイアット)
   ナイジェル・プランナー(ケイス・ホプキンス)
   ポピー・ミラー(ニキ・フューラー)
   ピップ・トレンス(リチャードソン連絡将校)
   ピーター・ワイト(ジョンソン)
   デビッド・ヘイマン(アシュクロフト少将)
   スーザン・ウールドリッジ(ナッシュのアシスタント)
   ラルフ・ブラウン(メルのパパ)
   ジョン・ベンフィールド(フランク)

(ストーリー)
イギリスを異常気象が襲い、暴風雨による高波によってロンドンが水没するというとんでもない事態が発生。
この危機を救えるのは、モリソン親子だけだ!頑張れ、モリソン!イギリスの明日は君達にかかっているッ!

(感想)
レンタルリリースの前に日曜洋画劇場でテレビ放映されたのを見たんで、所々カットされてるバージョンでの感想なります。と言うか、完全版って180分もあるのか。所々なんてものじゃなくって、半分近くカットされてるバージョンだったんですね。
そんな、半分しか見てない映画の感想という事になるんですが、非常に丁寧に作られた、好感の持てるディザスター物映画という印象でした。思えば、イギリスのパニック映画ってのも珍しいですね。元々、アチラでもTV用として作られたらしいですが(ミニシリーズだったのかも)、この手の映画を乱作してるアメリカ未公開映画界にも負けないクオリティのものを作ってくる辺り、さすがビートルズとMI6の国だと思わずにはいられません。いや、映画とは何の関係も無いですけど。
ただ、これでレンタルの始まった完全版も見てみたいか、と言うと、別にいいかな、とも思えるんですが。やっぱり、3時間は長すぎますからね。テレビで3回とか4回に分けて放映してくれるんなら見たいと思いますけど。

基本的にはこれまで何本も見てきた同種の映画と、やってる事は変わってない内容です。でも、先にも書いたように、全ての展開が丁寧なんですよね。要するに、この手の映画を見る際に、こちらが期待している箇所がしっかり描写されてくるんです(もちろん、劇場公開の大作映画でしか出来ないような面はハナっから期待していません)。
メインとなる主人公のストーリー(主に災害の渦中にいて、事件の最初から最後まで関わることになる)の他、事態の解決に責任を持って当たらなくてはならない政府内のストーリーに、そして、パニックの渦中におかれる様々な市民達のストーリー等が語られていき、この「ロンドン大洪水事件」という未曾有の事態を、あらゆる角度から見られるというのは面白いです。こういうのはまさに「パニック大作映画」の手法ですからね。そして、洪水に町が飲み込まれるスペクタクルな場面も、CGの粗が目立たない程度に見せてくれ、事態の深刻さが映像でもしっかり語られてきます。
そして、多分『ポセイドン』の影響のような気がするんですが、屋内での「水がどんどん迫ってくる!」という緊迫シーンが出てきました。これは「町が水没する」とはまたちょっと違うタイプの恐怖シーンで、『デイ・アフター・トゥモロー』でも『ディープ・インパクト』でも出てこなかった場面でしたからね。ひょっとしたら、私が知らないだけで、B級洪水映画界ではよく使われていた手法なのかもしれません(B級洪水映画界なんてのがあればの話ですけど)。
あと、この手の映画で出てきがちな「犬が助かる」「アホな行動をするガキが出てくる」といった、お約束場面を入れてこなかった辺り、「さすが21世紀のディザスター映画だ」と思ったものでした。
他の定番の要素はしっかり出てきていたんですが、この「ガキ」関連は見ててイラつかされる事があるんで、出なくてよかったです(完全版だと出てきてたりして・笑)。

ところで、この手の映画では、津波が過ぎ去ったら大抵それで終わりになるんですが、この映画では、その後があるというのが面白いです。さすがタイトルが『デイ・アフター』だけのことはあります。
津波と言うより「水位の上昇」という感じで、建物の倒壊といった惨事は起こらなかったんですが、それでも、都市は水没したままなんです。
そこで、水を逆流させるみたいな奥義を使う事になるんですが、「水門の開け閉めで本当にこんなふうになるんだろうか」は私にとっては想像もつかないんで、「きっと可能なんだろう(少なくとも、この映画の世界では)」と思いながら見ていたんですが、でも、都市を水没させてる水をどうにかする、というスケールのデカい発想は面白いです。テレビ映画ながら、大作感が感じられるというのもいいですしね。ただ、水が引くシーンが出なかったのは、さすがに予算的に映像化が無理だったか。

主人公を演じるのがロバート・カーライルという大物なんですが、事件の解決等にほとんど役に立ってませんでしたね(笑)。何か、ここまで役立たずな主人公も珍しいと思うぐらい、ただ右往左往してるだけみたいなキャラでしたねぇ。
ちなみに、政府内で指揮をとる副首相を演じているのが『エグゼクティブ・デシジョン』でテロリストを演じてた人だったんで、この人が国を守るような言動をしているというのが何か新鮮で面白かったですね。