巨大毒蟲の館
<INSECTICIDAL>
05年 アメリカ映画 82分

監督:ジェフリー・スコット・ランドー
出演:メイガン・ヘファーン(カミ)
   ランダ・デント(ジョシー)
   サマンサ・マックレオド(ソフィ)
   ビッキー・ハン(フミ)
   ショーン・バチンスキー(マーティン)
   アンナ・アモロソ(ジェニー)
   トラビス・ウォーターズ(ミッチ)
   ネルソン・カーター−リーズ(カイル)

(ストーリー)
虫の研究をしている女子大生のカミは、寮の部屋でも危険な毒虫を飼って観察をしていた。
当然、同じ寮に住む他の面々からは気味悪がられていて、ついに、意地悪なジョシーが殺虫剤で全部殺してしまう。
だが、カミの飼っていた虫はただの虫ではなく、遺伝子操作だかなんだかがされていてる特殊な虫で、殺虫剤を浴びた事で何らかの化学変化が起こり、みんな巨大化してしまうのだった。

虫達は、寮にいるアホ大学生どもを一人づつ抹殺していくが、そんな中、ジョシーが謎の寄生虫が原因でゾンビみたいになっていくのだった。

(感想)
私もこれまで、数々のくだらない映画を見てきましたが、その中でもワースト5に入るぐらいの酷い映画でしたねぇ。
普通の酷い映画の場合、ある一定のレベルを超えると「酷過ぎて、逆に面白い」みたいな領域に入っていく事がありますけど、中には、そのレベルをさらに超えた、「酷い以外の何物でもない」という、最底辺に突入する映画というのがあるんですよね。例えば、『悪霊のいけにえ』とか、この映画なんかがそれに当たるわけです。

学生寮を舞台に、巨大昆虫が若者達を襲うという内容で、エロとグロ関連のサービスショットも時々出てくる、まさに清く正しいジャンル映画のはずなんですよね。例えば、監督が「哲学的な要素を入れてみるぜ!」みたいな無謀な冒険をしない限り、そこまで酷い映画にはなりようがないと思うんですけどねぇ。この映画にはそういう余計な要素というのは特に無いんですけど、何でこんな事になってしまったんでしょう。
多分、演じてる俳優達も「これはとんでもない映画に関わってしまった」と思っているのか、やる気がほとんど感じられないんですよね。時々、明らかに演技に力が抜けてると思われる瞬間が見受けられるんですけど、それを見ても、「プロならちゃんと仕事しろ!」ではなく「気の毒に・・・」と思ってしまいます。

巨大虫は安っぽいCGで描かれて、合成も甘いです。要するに、その程度の予算の映画というわけなんですけど、それならそれで、何かやりようが無かったのかなと思ってしまうんですよね。
この巨大虫の登場シーンは、こういうタイプの映画にとっては一番重要な場面なわけじゃないですか。それが、「ここまで安いCG合成なら、むしろ巨大虫とか出さない方がいいよ」と思うぐらいの脱力映像になってるんです。しかも、映画が始まってから最初の巨大虫登場までほんの数秒ですからね。ちなみに、この冒頭のシーンというのが、実はクライマックスの一場面でして、そういう盛り上がっている場面を冒頭に持って来て観客のテンションを高めようという作戦だと思うんですけど、結果として、「開始数秒で脱力映像を見せられる」という状況になってるんですよね。
まあ、この時点ではまだ「酷過ぎて笑えるタイプの映画かもしれない」と思えて、変な期待感が出てきたりもしますけど、その後も、出てくる登場人物はアホばかりだわ、ストーリーはくだらないわ、俳優陣にやる気が感じられないわで、中盤ぐらいになって、いよいよ「もしかして、今、かなり強力な地雷を踏んでいるのでは」という事に気付くという寸法ですよ。
それにしても、学生が何かに襲われる映画は数ありますけど、それが大学生というのはそんなに多くないと思うんですよね。高校生というパターンがほとんどで。やっぱり、大学生ともなると、高校生の場合よりも、多少は頭の良さそうに見えるキャラが多くてもよさそうなものじゃないですか。それが、「稀に見るアホ」レベルの、小学生より頭の悪そうな連中ばっかり出てくるんですよね。
例えば、ヒロインが「もしかしたら、寮内を巨大虫がウロいてるかもしれない」と気付き始めるんですけど、「そんなわけないでしょ」とたしなめられるという展開が出てきます。その後、虫の仕業によって、寮の出入り口が「謎の物質(虫の体液っぽい)で溶接されてドアが開かなくなる」という状態になるんですけど、そのドアの真ん前で、さっきと同様のやりとりが繰り返されるんです。
まあ、百歩譲って、巨大虫なんていないという説が正しいとしても、その、謎の物質で溶接されて開かなくなったドアに関して誰も反応しないのは何故なのかと。
これは、登場キャラというより、脚本家がアホだというのを示す例だったかもしれないですけど、この後も、現実的・映画的、どちらの面で見てもおかしいとしか思えない登場人物の行動というのが多々見受けられるんです。
最終的には、「武器を見つけて、巨大虫と戦おう!」という展開になってきて、この辺りはちょっと面白かったんですけどね。結局、その肝心な巨大虫が超安いCG合成という姿なんで、盛り上がりようがないみたいな状況なんですけど。

で、何で私はこんな映画を借りてしまったのかと言いますと、パッケージの煽り文句にまんまと釣られたんですよね。「巨大蟲が相手では、女子大生得意のお色気攻撃も効果無い!」みたいな事が書かれていまして、「何て、くだらなそうな映画だろう!」と思って借りたわけですよ。
ですが、私が期待していたのは“くだらない映画”であって、“つまらない映画”ではなかったんですよね。「どう違うんだ」と言われても、感覚的なものなんで答えようがないんですけど、「笑えるぐらい酷い映画」と「酷過ぎて笑えない映画」の違い、みたいな感じですかね(これも意味の分からない例えだな・笑)。