ジュラシック・パーク
<JURASSIC PARK>
93年 アメリカ映画 127分

監督:スティーブン・スピルバーグ
原作・脚本:マイケル・クライトン
脚本:デビッド・コープ
撮影:ディーン・カンディ
音楽:ジョン・ウィリアムズ
出演:サム・ニール(アラン・グラント博士)
   ローラ・ダーン(エリー・サトラー博士)
   ジェフ・ゴールドブラム(イアン・マルコム博士)
   リチャード・アッテンボロー(ジョン・ハモンド)
   アリアナ・リチャーズ(レックス)
   ジョセフ・マゼロ(ティム)
   ボブ・ペック(マルドゥーン)
   ウェイン・ナイト(デニス・ネドリー)
   マーティン・フェレロ(ドナルド・ジェナーロ)
   サミュエル・L・ジャクソン(レイ・アーノルド)

(ストーリー)
一人の裕福な企業家がDNAから恐竜を蘇らせ、孤島に史上最大のリゾート地を建設しようとしていた。その名は“ジュラシック・パーク”。
モニターとして子供を含む6人が招待され園内を巡るが、安全対策は万全だったはずのパーク内で恐竜たちが暴れだし、人間に襲いかかって来た。
それはいまだかつてないサバイバル・アドベンチャーの始まりだった・・・。(DVDパッケージから転写)

(感想)
“CGの凄さ”を全世界に本格的に知らしめる事となった、特撮方面ではまさに映画史に残る一本です。ですが、映画自体も大傑作だったりするんですよね、これがまた。
私が最初にこの映画を見た時、確かにCGでリアルに描かれた恐竜の姿には驚きました。でも、それよりも、その恐竜の見せ方とかサスペンス描写など、演出面の見事さの方により驚いたんですよね。
例えば、最初にT−REXが登場するシーンも、いきなり「ガオー!」と出てくるのではなく、まず音と振動で「凄いのが近づいて来ているらしい」というのを伝えてから出してきてるんですよね。T−REX登場の瞬間と同じぐらい、車の中のコップに波紋が広がるシーンが印象的だったりしたものでした。
あと、パークに着いて一番最初に恐竜の姿が出てくるシーンでも、まず、「何か凄いものを見て驚愕する俳優達の表情のアップ」を先に出してるのがいいですね。そこで驚く登場人物達に感情移入して、一緒になって驚いてしまうみたいな感じがあって、この恐竜との初対面シーンは何度見ても驚きと感動が感じられます。

当時はまだそんなに多くのCGショットが出せない時期という事で、実写のアニマトロニクスもふんだんに使われているんですが、恐竜一体の見せ方がうまいおかげで、「どこまでが実写でどこまでがCGか」が、それこそ意識して見ない限り分からないんですよね。最初に見た時は、恐竜は全てのシーンでCGなのかと思ってました。いや、正確には“見終わってから”ですけどね。見てる最中は、それがCGだなんて意識はほとんど無かったですよ。もう、恐竜がその場にいるという前提で見入ってました。
やっぱり、スピルバーグの映像センスは天才的ですね。ほとんど神懸かり的ですよ。特撮面に関しては、そっち方面の専門スタッフの功績なんでしょうけど、最終的に「こういう映像を映画で使う」というのを決めるのはきっとスピルさんなんでしょうからね。

実は、この映画を見る前は全然期待してなかったんですよね。当時、スピルバーグと言えば『ET』というイメージがあったので、「『ET』のスピルバーグが撮る恐竜映画」という事で、『のび太の恐竜』みたいな、生ぬるい、お涙頂戴的な映画なのかと思ってたんです。
それが、ある機会に見に行く事になって、見てみたらこんな内容だったわけですよ。もう、あまりに面白くてぶっ飛びましたね。
しかも、「人が生きたまま食われる」なんてショッキングなシーンも出てくるじゃないですか。見ててビビりまくってしまいましたよ。当時はまだ怖い映画は苦手でしたからね。で、そんな恐竜の動きを熟知しているグラント博士がやたら頼もしく見えましたねぇ。もはやヒーローみたいな感じでした。
私はてっきり、スピルバーグという人は、大衆向けの感動的な映画を撮ってる人で、私みたいなひねくれた奴が見て楽しめるような映画なんて撮ってないだろうと思ってたんです。昔は『インディ・ジョーンズ』シリーズみたいなのも撮っていたけど、もう巨匠づいて、そんな娯楽一辺倒の映画なんて撮れないんだろうと。このように、思いっきり見くびっていたんですが、もう、映画館から出る頃には「今からアメリカに飛んで、スピルバーグの前で土下座しなきゃ!」と思ってましたね。
ほんと、見る前の期待感が低かったせいか、この映画には大変な衝撃を受けましたよ。まあ、超絶に期待してても大変な衝撃は受けたとは思いますが。
ラストの展開なんて、完全に私の予想を凌駕してましたからね。と言うか、登場人物達がラプトル2体に囲まれる状況では、もう予想どころの話じゃなかったですね。「もう終わりだ、これ。どうやっても助からないじゃん」と、半ば絶望してましたよ。
そこに、絶妙なタイミングでT−REXが登場してラプトルを食らった瞬間はもう、本気て感極まりそうになりましたね。「みんなが助かった事への喜び」はもちろんの事、あの絶対的な危機的状況を、こんなにも鮮やかな手段で抜け出させてしまう演出は、まさに鳥肌ものの感動です。
そして、ラプトルを倒した後、咆哮するT−REXの前を“ジュラシック・パーク”の旗が舞い落ちてくるという決めのショットが出て来た時には、拍手喝采したくてしょうがなかったですね。
ちなみに、このラストの展開のもう少し前にも好きなシーンがあるんです。それは、ラプトルから逃げる為に天井裏に上るシーンにおいて、女の子が天井から落下しかかる場面があるじゃないですか。あの時、起き上がったラプトルがジャンプして再度の攻撃をしかけてくるんですけど、これがこっちの予想以上に飛ぶんですよね。構図的に、画面奥にいたラプトルが一瞬でスクリーン手前まで飛んでくる事になるんで、最初に見た時は凄いビックリしたんですよ。面白い事に、ここは私だけじゃなくて、他の観客もみんな驚いたようで、満席の観客がこの瞬間、みんなで一斉に飛び上がったんですよね。私は一番後ろで立ち見していたんで、その様子が一望に見渡せたんですが、こんな光景、今まで見た事無かったんでかなり印象深かったですね。

映像や演出もいいですが、音楽も最高でしたねぇ。あの印象的なメインテーマはほんと素晴らしいです。
序盤で、ヘリで島に到着した時にこのメインテーマが鳴り響くという場面がありましたが、ここは最初に見た時は感動しましたね。ここまでメインテーマを高らかに鳴らす場面のある映画を久しく見てなかったですし、「いいなぁ、こういう演出」と心底思ったものでした。映画を見終わった後、この場面だけもう一回見たかったなと思いましたからね(結局、後に2回見に行く事になりましたが)。

最初に映画館で見て以来、テレビ放映やレンタルビデオで何度も見まくった映画ですが、見る度に、「最初に見たあの時の感動」を思い出すんですよね。もしかしたら、私にとって、「史上、最も衝撃を受けた映画」なのかもしれないです。まだそれほど映画を見てない、しかも若い時期に出会ったというのも良かったのかもしれませんね。