監督:ゲイリー・イエーツ
出演:ゲイリー・ビジー(グレイディ署長)
タイ・ウッド(ロイ少年)
ジョン・D・クラーク(グレアム大佐)
サラ・コンスティブル(シャロン)
クリスティン・ハリス(キャシー)
一方、食物連鎖の頂点に立つ、最強のハンターである虎さんは、州兵をあっさり血祭りにあげる。だが、かつて名うてのハンターとして数々の虎と対決してきたという過去を持つ老人がはるばるイギリスから飛んできて、独自に虎を追っていた。そして、追跡の過程で、森の中で母親とトレーラーハウスで暮らしている少年と出会う。虎はこのトレーラーハウスの近辺を寝床に使っていて、少年は夜な夜な現れる虎を神聖視しているのだった。
果たして、この虎騒動は、どのような決着を迎える事となるのか!?
(感想)
虎が人を襲うパニック映画で、例によって、町にはイベントが近づいている状況です。そして当然のように、虎の専門家が町にやってくるという展開になります(今回は学者ではないですが)。まさに、動物パニック映画の教科書通りのストーリー展開です。
ですが、これまで、色んな生き物がアメリカ郊外で町民を襲ってきましたが、“虎”というのは珍しいのではないだろうか。普通、「森に危険生物が!」という場合、熊とかプレデターなんかが出てきそうなイメージもありますし(プレデターも危険生物扱いか・笑)。で、この虎は、遺伝子操作だかと宇宙線だかの影響で巨大化してるわけでも、凶暴化してるわけでもなければ、CGで描かれてもいません。本当に普通の虎なんですよね。
そんな無添加の虎ですが、森での狩りのスキルは相当なもので、全く気配を感じさせずに背後まで忍び寄り、そして攻撃の前後に何の音も立てる事が無いんです。なので、「今、隣を歩いていた人がいつの間にか消えてる」なんて事態が起こったりするんです。これは凄い。まさにプレデター並みの狩猟能力です。熊ではこうはいかなかったでしょう。
と、敵はかなりのツワモノなのですが、さほど被害が広がってるように感じないのは、やはり、主役である警察署長、ゲイリー・ビジーの手腕が良かったからなんでしょうね。何しろ、行動に移るのが早かったですからねぇ。「虎が発見された」とか「謎の犠牲者が出ている」といった届出があってから動いたのではなく、それ以前の、「3時間前に恋人が森で行方不明になった」という届出が来た段階でもう動いてましたからね。
で、町長の「祭りが近づいてるんだから、云々」という圧力をガン無視して、早期の警戒発令と州兵出動を実現させてしまいました。テレビ局が勝手に虎に懸賞金をかけて、ハンターが大量出動するという事態があったんですが、これも早期に沈静化させたおかげで、スクープ狙いのカメラマンが一人食われただけで終わりましたし。
ですが、このビジーの活躍で解決が早まったわけではないのが辛いところです。何しろ、敵が強すぎました。州兵も何の役にも立ちませんでしたからねぇ。一匹現れただけでこんな騒ぎになってしまうとは、虎、恐るべしです。
で、虎を狩った経験のある老人が頼みの綱みたいな状況になるんですが、結局、こいつも「虎がどうやって人を襲ったのか」を読めるだけで、「今、虎がどこにいるのか」が分からないんで、あまり役に立ってないんですよね。でも、いかにも英国の老紳士な雰囲気の漂うヒゲをはやしていたりと、面白いキャラクターではありました。いや、ヒゲだけでなく、全体的な雰囲気が良かったんですよ。
また、ストーリーに少年が絡んでくる事となるんですが、この少年、虎がウロついてる森を平気で行き来していたり、住んでるトレーラーハウスに虎がよく来てるのに襲われていないという辺り、「虎と精神的に通じ合える能力があって、もしかしたら手なずけてしまう事も出来るのでは」と思えるような、神秘的な雰囲気を持っています。しかも、ずっと森で暮らしていたからなのか、トラッキングの技術も自然に身についているらしいです。
ですが、そもそもの発端がこの少年にあるというのを考えると、ちょっと腹の立つ存在ではありましたね。この少年、夢遊病のケがあるようで、夜中に外をウロつく事があったようなんですが、ある日の夜、道路をウロウロしていた所、虎運搬中のトラックが通りがかって、少年を避けた勢いで横転。檻が壊れて虎逃走。というのが発端だったんです。
で、この少年、州兵がやってきた時に、「虎は悪くないんだ」みたいな発言をして、さも虎が犠牲者で州兵が加害者みたいな態度をとりやがるんですよね。まるで、虎の事をネッシーかガメラか何かだと思ってるかのように。
まったく、これだからガキはムカツクんですよねぇ。じゃあ、お前は虎の被害に遭った人達の遺族にも「虎は悪くない」なんて事が言えるのかと。そもそも、お前が夜中にウロウロしてなければこんな騒動は起こらなかったんじゃねぇかと、テレビに向かって言ってやりたくなりましたね。たまに、討論番組なんかが流れてるテレビと戦いだしてるジジイとかいますけど、私も危うくあんな感じになる所でした。
あと、コイツの母親も、狂信的な聖書絶対論者という厄介な人物で、見てて非常に気持ちが悪かったです。親子揃って腹の立つ奴らでしたね。まあ、母親の方は最後に虎に食われましたけど。聖書も虎の前では無力だったようです。
といったキャラクターが織り成すストーリーを見ていても、一向に事態が解決に向かう気配がありません。誰一人、この騒動を収める決定打を持ってないですからね。見てるこちらも「ラストはどうするんだろう」と心配、ではなくて、ハラハラしてきます。
で、結局どうなるのかと言うと、ゲイリー・ビジーがたまたま虎に襲われて、反撃して倒すという締めでした。なるほど、これが俗に言う“ビジーオチ”というやつか。こんなラストのパニック映画、見た事無いぜ(そりゃそうだ)。
と言うわけで、虎の戦闘力に恐れおののき、ゲイリー・ビジーの健在ぶりに拍手喝采する。そんな愉快な映画でした。