バイオ・クライシス
<QUARANTINE>
99年 アメリカ映画(テレビ用) 93分

監督:チャック・ボウマン
出演:ナスターシャ・キンスキー(ガレン・ブロンティ)
   ハリー・ハムリン(大統領)
   ジョエル・カーター
   スーザン・ホーガン
   テリル・ロセリー
   ケビン・マクナルティ
   マルコム・スチュワート

(あらすじ)
テロリストが開発した細菌兵器を軍の特殊部隊が奪回した。だが、帰りの飛行機に異常が発生し、空港に着陸したところで爆発してしまった。この衝撃で細菌の入ったケースが破損。事故機の後処理に来た人間から、その時空港にいた人たちまでもが感染してしまうのだった。そして、感染した人々を乗せた飛行機が世界各国に飛び立つ。まさに、世界規模のバイオハザードが発生してしまったのだ!

この事態をいち早く察知したアメリカの大統領は、生物兵器戦に備えて発案された隔離作戦を実行に移す。その作戦とは、大統領たちを島に避難させ、そこで政府を存続させるというものだった。

(感想)
おそらく、全細菌パニック映画の中でも、ウイルスの被害の規模は最大級でしょう。ただし残念な事に、この映画は「細菌パニック映画」というよりも、「細菌パニック茶番」に近い作りになっています。

たしかに、規模はデカいんですが、それは劇中の登場人物の会話から知らされるもので、世界規模のパニックが描写されるわけじゃないんですよね。せめて、田舎町一つがパニックになってる様でも映してくれれば少しは雰囲気が出たと思うんですが、それすら無しです。「感染患者で満杯となった病院」なんて気の利いた映像も当然出ません。
むしろ、細菌による「パニック」の描写は敢えて避けてるような印象すらあります。その代わりに、この未曾有の事態に直面した登場人物のドラマをメインとして描写する、という内容になってるようです。問題は、その肝心のドラマがつまらないというところでしょうか(笑)。
何がつまらないって、登場人物の大半がアホなんですよね。アホのドラマなんて見てて楽しいはずがありません。身勝手な我がままを言うクソガキが約2名ほど出てくるんですが、こいつがほんとアホでアホで、見てて腹が立つぐらいの馬鹿なわがままを最初から最後まで言い通してくれます。
特に酷いのは、そのうちの一人、メインキャラである大統領の娘で、大学生ぐらいの年齢という、もう分別のついてもいい年頃ですよ。大統領の娘という事で、外界から隔離された場所に避難していたんですが、自分のわがままでそこを抜け出してしまい、後を追ってきた母親(大統領夫人)がウイルスに感染してしまうという事態を引き起こしてしまいます。こいつはここで「私が勝手なことをしたせいだわ」と反省をするんですが、これの起こるちょっと前に、別件で「私が軽率だったわ」と反省をしたばっかりだというのに。
しかも、そこで2度目の反省をしたと思ったら、次の瞬間には父親である大統領に電話で「母親が感染したから会いに来てくれ」ととんでもない事を言い出すんです。まったく、反省の色無し!(笑)と言うか、大統領をウイルスが蔓延してるところに呼び出してどうするつもりなんでしょう、こいつは。アメリカがどうなってもいいんでしょうか。
ちなみに、大統領の方は、この映画の登場人物の中にあって、数少ないまともな人物なので、当然「職務より家族の方が大事だぜ!」とかいって駆けつけるようなマネはしませんでした。

この映画のウイルスは、世界規模で拡大することからも分かるように、空気感染をします。ですが、この映画の中で、防護服を着てる医者はただの一人も出て来ません。せめて、マスクぐらいしたらどうなんだと思うんですが・・・。当然、感染患者の中を普通の白衣のみでウロウロしてる医者も、いっこうに感染する気配をみせません。医者達が怪しげなお茶を飲んでるシーンとかがあるんなら分かりますが(『沈黙の陰謀』の世界ならこれで対策万全)、それも無しですよ。もう、さっぱり意味がわからないです。
そもそも、最初に事が起こった時点で「空港を閉鎖する」という処置をとればここまでの被害にはならなかったと思うんですけどね・・・。まあ、こんな茶番劇のストーリーにいちゃもんをつけてもしょうがないですけどね・・・。